秘書艦さまが出撃しました。   作:読多裏闇

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見切り発車で書くから遅くなるの典型を2話目からやらかす奴が居るらしいな?
・・・はい私のことです。

主のストーリーが無い初の作品ですので大目に見ていただければ・・・と思います。


2話:とても優秀な秘書艦さま。

 

 

 

 

 艦隊司令室と言う名の提督の執務室には先客が居た。

 

「お疲れ様なのです。

 こちらに向かってる深海棲艦の情報、受け取っておいたのです。」

 

 そう言ってメモ書きを渡している少女は夕立より一回り小柄の少女。

 このままランドセルを背負っても違和感は皆無な見た目だが、立派な艦娘であり、実際には俺と同い年だったりする。だが、実際にそれを本人に告げれば不機嫌になるのは必至なので触れてはいけない。

 

「ごめんね電ちゃん。代わりに報告受けてもらっちゃって。」

 

「ほっとくとお昼ご飯忘れかねないどこかの司令官を呼びに行ってたので仕方ないのです。

 普段の秘書艦業務大変なのでこれくらい任しても罰は当たらないと思うのですよ?」

 

 秘書艦の仕事は忙しい。

 そもそも秘書艦とは言わば艦隊司令官のお目付役であり、この鎮守府において艦娘と人間の関係を円滑に進める為の言わば艦隊側の代表者。

 任命こそ司令官の手によって行われる物の、司令官が指揮が出来ない状態と判断された場合実質的な運営を行う権限を持つ名実ともに鎮守府におけるナンバー2。

 提督の能力が高ければ良いが、低さに比例して過労死させられるそう言うポジションでもあったりする。

 

「いや、これでも仕事してたんだぞ?」

 

「あんな仕事、適当に"やっておきました”って報告書だけ書いておけば良かったのです。

 そして問題は、仕事を律儀にやりすぎるところなのですよ。」

 

「報告を見る限りただのはぐれっぽいけど、一応攻め込まれてるので緊張感出した方が良いっぽいよ?」

 

 事実もっともな指摘をしてるが、彼女本人も余計な力が入ってない辺り"いつも通りすれば問題ない”と見なしているようだ。

 ここの鎮守府の艦娘のは経験豊富であり、戦力的に見ても連携をとらず無軌道に点在している深海棲艦(通称”はぐれ)程度に後れをとるような戦力ではないし、敵を侮る愚か者は居ない。夕立も既に出撃を完了した先遣隊にいつでも指令を出せる状況を完全に整えた上で索敵報告待ちをしてる段階。

 故に出来ることもさしてないので雑談をしてると言っても過言ではない。

 

『報告だけで終わる茶番につき合わされたこっちの身にもなってほしいんだけどな?

 それより報告だよ。

 敵艦視認。

 軽巡2、駆逐3だよ。今のところ潜水艦は探知にかかってないから多分居ないかな?』

 

 基本的に部隊が展開している場合通信は繋げっぱなしになっている。理由は深海棲艦の電波妨害でいつでも通信が可能と言うわけではないからだ。本来ならばこの通信すらままならない状況下に居るのだが、艦娘が存在してる地域ではそれが弱まる性質がある事が分かっており、孤立を防ぐためにも各国の艦娘確保が急務とされたのは言うまでもない。

 それでも海上に近ければ艦娘が居ても通信はほぼ通らないし、海を越えてとなればほぼ無理なのだが、何事にも例外は存在する。と言うのも、艦娘はかつての船舶の魂を受け継いだ少女達であり、艤装と言う固有武装をつければその性能はほぼ船そのもの。当然の如く通信も出来るので、彼女達自身に通信を送ることが可能なのだ。

 結論から言えば、彼女達自身に通信を送る場合は海上でも比較的通信が出来る事が分かった。

 そもそも電波を妨害されているのに何故艦娘にのみ通信が通るのかはまだ解明されていないが、事実として出来る物は活用せざるを得ない、それ程までに世界は追い詰められているのだから。

 閑話休題(それはさておき)。

 敵を目視した以上、射程圏内までそれ程かからない。指揮をする側も仕事の時間である。

 

「今回も任せるぞ、夕立。」

 

「了解しました。

 領域侵犯を行う船舶を視認により深海棲艦と断定。

 要殲滅対象として認定し、敵艦隊への攻撃を行います。

 交戦許可。並びに本戦闘における現場指揮権を旗艦"響”に移譲します。」

 

『了解。

 さて、やりますか。』

 

 重ねて言うが現代では通信が根本的に通らない。

 先の例外も音声通信が限界のため、指揮をする側は大局的な調整や戦術ではなく戦略に重きを置く物にならざる得ない。映像通信なども勿論無く、音声による状況把握と方針を指示するのが限界。

 基本的に提督は、この環境下でどうやって指揮するかが提督の腕の見せ所となってくる。

 

 まぁ、それが発揮される状況がほぼ発生しないのだが。

 

『こちら響、敵艦の殲滅を確認したよ。

 敵影は確認出来ない。帰投しても良いかな?』

 

 一切なんの問題も無く戦闘終了。

 細かな指揮系統を移譲してるとはいえ、ここまで速やかに対処されては判断する以前の問題としか言えない。

 

「お疲れ様。

 帰投して報告をお願いします。」

 

『了解。』

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 戦闘はなんの問題もなく集結し、入渠と昼食を取った午後。

 俺が見なければならない書類をさっさと片づけ、今は皆に伝えるお知らせ的な物をまとめている。

 夕立はいつも通りそれ以外の雑務を確認しつつゆったりモード、あとは電がお茶の準備をしている。

 

「夕立、例の勲章の授賞式が今週末にあるから、準備しとけって催促来てるぞ。」

 

「夕立ちゃんの天然によってとってしまった”日本一の秘書艦”ですか。

 いやー優秀なのも大変なのです。」

 

 日本一の秘書艦。

 これは深海棲艦が現れて混乱の最中、少しでも士気を高めようとして始めたキャンペーンのようなもので、その名の通り全国の鎮守府で活動中の秘書艦を対象として実績や貢献度を鑑みランキングを行うというお祭りである。

 艦娘と言う未知の存在に親しみを持って貰う意味も含めてこの催しは全国のテレビで中継されており、それを取った艦娘は勲章を授与される。

 夕立は今年の優勝者。

 因みに今年で3連覇中で、全国民の中ではスーパーエリート秘書艦と言っても過言ではない知名度を持つ。

 

「あれは天然って言うか、嵌められた感じがするっぽいんだけど・・・。」

 

「それは流石に人聞きが悪いのです。

 そもそも"私と同レベルの秘書艦技能を身に付けるのを目標に頑張る”って秘書艦業務を教えてほしいって言ってきたの夕立ちゃんなのです。」

 

 元々、この鎮守府の初期艦、もとい最初の秘書艦は電である。電は元々ここに来る前から親しかった事も含めて非常にマメで努力家なので恐ろしいスピードで業務を効率化。提督が居ようが居まいが関係なく運営できるほどの処理能力と対応能力を手に入れた段階で、新米提督には惜しい人材として引き抜かれかけるほどの手腕を見せつけ、その実績が評価され一時期は日本一に輝いていたのだ。

 本人は結構不本意らしいのだが。

 

「あの時は電ちゃんが凄いのを忘れてたっぽい。

 て言うか、秘書艦業務だけで考えたら電ちゃんの方が凄いから、電ちゃんが受賞するべきじゃないかしら?」

 

「うちの鎮守府の秘書艦は夕立ちゃんなんだから、私が行くのはお門違いなのです。

 それに、あんなほぼアイドルかのような扱い、私みたいなちんちくりんが行っても映えないのです。その点夕立ちゃんは、駆逐艦とは思えないスタイルかつ美人なのでテレビ的にも美味しいのです。」

 

 全国中継は伊達ではなく、この日本一の秘書艦を決める番組の視聴率は非常に高い。

 出てくるのがどの子も現実離れした美少女が多い艦娘である事から一種のアイドル総選挙的な様相になっており、その筋のオタクは少なくない。

 結果として艦娘のイメージキャラクターの様な扱いを受ける事も多く、軍としても艦娘という存在のイメージアップに起用する事に躊躇いがない。

 その点からも比較的モデル体型な夕立が行くべきだと電が言う主張も分からなくはない。電も間違いなく美少女であるが、見た目年齢が固定化されてしまう艦娘は、見かけの成長が実質止まっており、電の見た目は駆逐艦の中でも比較的幼い。

 それが悪い訳ではないが、役割としての需要で見ると夕立が向いていると言いたいのだろう。

 

「電ちゃんの前は10年くらい空母系の大型艦の人達が多かったみたいで、電ちゃんが受賞したとき結構話題になってファンがいっぱい居るって乾大将が言ってたよ?」

 

「・・・ロリコンさんはお断りなのです。」

 

 などと文句を付けている物の、この”日本一の秘書艦”という地位は艦娘の中では憧れの地位らしい。

 提督の観点から見ても、受賞すれば、その秘書艦を育てた提督として貢献報奨金が支給されたりと特典も入る。何より艦娘は基本的に皆、年頃の女の子。アイドルの様にちやほやされるのも満更ではないらしい。

 

「一応、名誉ある勲章なんだからそう悪く言わんでも・・・。

 まぁ、テレビ関係は全部終わってるし、軍としての諸々だけだからすぐ終わる。

 行くのが横須賀だから向こうで一泊挟むと思う。その間は電に指揮権渡すと思うからよろしく。」

 

「了解なのです。」

 

 

 

 

 

 




止まらないように頑張ります。

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