シャルロッ党のお姉さま   作:小雲八泉

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遅くなりましたm(_ _)m

納得いく落とし所を考えようかなと雑なプロットを書いたはいいものの、明らかに完結させるには長くて頭抱えてます。
いやでもこれなら書いてて楽しそうなんだよなぁ……。



あ、プロットとテロップって似てません?



11.葛藤と愛憎の話

 ご機嫌よう、皆さま。

 父の姿を初めて見たヴィオレットです。

 

 私が父について知ることは多くないとは明言したかと思います。シャルをIS学園に送り込んだ張本人。表向きは利用のために、裏ではどこぞとも知れぬ輩のシャルの暗殺を阻止するために。

 

 私達と対峙した父に対する気持ちは、悪いとは言いませんが良くもありません。

 母が語る愛の割にシャルロットに対する姿勢は淡白かつ消極的で、どっち付かずのような対応をする人物。

 私はこの男をどう評価するべきか、答えを見つけられてはいませんでした。

 

 しかし仮にも血の繋がった家族に対して、実際にあのような淡白な対応を取られると、どうにも好意というものなどとは正反対な感情ばかりが浮かんでしまいます。

 

 

「あのワーカーホリックめ……」

 

「お姉ちゃん、いい加減機嫌直して?」

 

「だって……」

 

 

 目尻を下げて困ったように苦笑するシャルの言葉に得も言えぬ不満を抱えながら声にならない唸り声を噛み締めました。

 父アルベールは自身の名を名乗るだけ名乗った後、

 

 

『お前達にもデュノア社の仕事に携わってもらう。詳しい話は部下に任せるが、そのつもりでいろ』

 

『はい?』

 

『ダヴィドフ、下がらせてくれ』

 

 

 とだけ言って有無を言わせず社長室から追い出してくれやがりました。私達は新人社員か何かなんですか?

 感動の再会?そんなものありませんよ。

 家族?何それ美味しいの?と言わんばかりの事務的対応でした。

 

 あの自称父親め……今度会ったら机上にあったコーヒーの中身を能力で全部マーマイト味に変えてやろうか。

 

 無駄に長い玄関までの通りを車椅子で押されながら、時折宥めるように頭上から降りてくるシャルの手の感触で気を紛らわせました。

 

 

「予想はしてたけどやっぱり大きいねー……」

 

 

 シャルの声に沈んでいた顔を上げて眼前の光景を見やります。豪邸と言って差し支えない規模の住まいが良く手入れされた芝生と共に広がっていました。

 私達は父との"対談(面接)"を終えて、ディアナさんとはまた別の部下らしい人に送られてデュノア本宅へ来ていました。

 

 ラデファンスから17区を経由した、ブローニュの森と呼ばれる大きな森林公園を挟んだ先にあるパリ16区。先ほどのビルシティとは打って変わって清涼な空気が流れてるここは、フランスでも大変有名な高級住宅街です。

 

 一度は住んでみたいと思っていたこの地区が私達の住まいになるのですから、人生分からないものですね。

 

 

「玄関にスロープは……流石にないか。お姉ちゃん大丈夫?」

 

「肩だけ借りていいかしら?」

 

「もちろん」

 

 

 シャルに身を預けさせてもらいながら立ち上がってゆっくり歩きます。

 扉を抜けて玄関ホールを進み、広々としたリビングに出ました。

 

 

「凄い……! こんなとこに住むんだ……」

 

 

 感嘆の声を上げるシャルに同調するように、ほうとため息を吐きました。

 現代のモノにしては古典的な、『豪邸』のイメージ通りの作り。作りの良いアンティーク調の家具と近代的な家具や電化製品が見事に調和しています。

 

 余裕のある設計と土地の広さを考えれば、一つの家族の空間を収めて余りあるほどに広い家なのでしょう。

 椅子一つとっても高価な品に見えて、つい使うのを躊躇ってしまいそうですね。

 

 ダイニングには雇われと思しき女の人が何やら料理をしていました。コトコトと煮込まれた鍋からはとても良い匂いが漂ってきます。

 

 

「ん? あっ! おおお嬢様ご機嫌麗しゅうっ!」

 

 

 私達を見た女の人は相当驚いたのか物凄く焦りながら対応してきました。

 

 

「……えっと、初めまして」

 

「そそうですよね初めましてですよね初めてですもんね! わ、私グニーっていいます調理師です宜しくお願いしますっっ!!」

 

「お、落ち着いて?」

 

 

 異様に焦ってる人と相対するとこっちも何となく焦りが出てしまうことってありますよね。

 かといって隣が焦ると却って冷静になることもある、心というものは本当に不思議です。

 

 

「グニーさん、深呼吸してー」

 

「は、はひ!──すぅー、はぁー」

 

「……ひっひっh「言わせないよ」

 

 

 さりげなくラマーズ呼吸に変えさせようとしたら止められました。悲しい。

 それにしても、家の中にも雇い人がいるんですね。

 

 

「私はシャルロット・デュノアです。こっちは姉のヴィオレットです」

 

「お邪魔をしてしまい申し訳ありません」

 

 

 自己紹介とお詫びをして、そそくさと退散します。この家にはこの家のルールのようなものがあるかもしれませんね。後で確認してみましょう。

 他の部屋にも僅かに人の気配がしますし、雇われている人は一人ではなさそうです。

 

 

「メイドかぁ」

 

 

 それにしても、今時召使いなんて時代遅れも甚だしいと思っていたのですが、実は日本だけの話だったのでしょうか?

 

 たしかにセレブの住まうドバイなどでは月に日本円12万程度で給仕が雇われていると聞きます。

 あそこは実質異世界なのでカウントしませんが、ヨーロッパの主要な都市でも未だに隷属的な職業が残っているとは驚きです。

 

 と思いましたがそういえばここ異世界でした。

 現代によく似ているだけなので別に驚くことでもないのかも。

 

 2階はいくつもの部屋に分かれていました。書斎や寝室、談話室。どれも前の家とは比べものになりません。

 寝室は壁掛けに『Charlotte Dunois』と『Violette Dunois』がそれぞれ書かれた部屋がありました。

 

 シャルは私を私の方の寝室のベッドに連れていき、そっと寝かせました。私もそれに逆らわず枕に頭を乗せます。

 

 そんなに気を遣わなくてもいいんですが。シャルの気持ちも分かるのでここは甘んじて休みましょう。

 

 

「じゃあお姉ちゃん。後は休んでいてね」

 

「はーい」

 

 

 扉を開けたシャルにひらひらと手を振りました。やがて閉まり、一人になるとその手を降ろして、なんとなく自分の目の前に掲げてまじまじと見つめました。

 

 

「……」スッ

 

 

 指をずらすと空間が破れてスキマが現れました。

 相変わらず不気味な闇と何かの目が覗いています。

 

 念じると広がり、またチャックを締めるように消えました。

 

 

「……はぁー」

 

 

 便利な力です。ただこうやって空間を開き、どこかの……例えば日本の裏路地にでも繋ぐだけで簡単に移動してしまえます。

 

 しかし私は小物の移動のみに留めて、全く研鑽を積まなかった。その結果がアレです。

 故にこれからはこの能力の力を引き出すことを目標にしていきましょう。

 ゆくゆくはISなど生身で十分あしらえるほどに。

 

 同時に、『境界』の概念について今一度考えていかなければなりませんね。

 

 というか、この能力があればやりたいことが沢山できるのでは?

 例えば日本に無料で旅行に行けたり、美味しいレストランに五歩で行けたり。

 周りの目さえ何とかして仕舞えば、結構やりたい放題できます。

 

 

「……それ、いいかも」

 

 

 人に(あらざ)る力なら、それに相応しい使い方があるというもの。そう割り切ってしまうのもいいかもしれませんね。

 

 今はまだ遠距離へワープするのも一苦労ですが、仮にも大妖怪の力です。強くなければ能力にも失礼でしょう。

 少しワクワクしてきました。自由に動けるようになったら、色々と練習してみましょう。

 

 頬が緩むのを自覚しながら、力を抜いて目を閉じました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一人の室内に男のため息が小さく漏れた。

 

 産まれた時以来一度も(まみ)えなかった娘の再会に男は組んだ手を額に当てて歯切りする。

 

 彼女を思い起こさせる金色の髪とアメジストの瞳を受け継いだ二人の娘との再会。

 今まで出会おうともしなかった娘達の、浮かべる表情の一つ一つに彼女の影がチラついた。

 

 

「……どうしたものか」

 

 

 男は誰にともなく呟いた。手を揉み込んで虚空を鋭く見つめ、まるで仇でもあるかのように硬い表情を浮かべた。

 

 何にせよ、遠ざける手段はもう使えない。

 あれだけ繋がりを絶ってなお二人は襲われたのだ。下手に目を離すほうが危険だ。

 

 車椅子に座る娘の様子が男の肩に重くのしかかる。

 

 失敗は元より許されない。己の会社を利用してでも守るべきものの為に、男は一度ネクタイの結び目を締めた。

 

 

────コンコンコン。

 

「入れ」

 

 

 三度のノックの後、ディアナが入室した。彼女は子供二人に見せていた人の良さそうな笑顔はまるで無く、鉄面のような硬い表情を浮かべていた。

 

 

「社長宅の方に連れさせました」

 

「ご苦労」

 

「……あれは不味いでしょう、社長」

 

 

 ディアナはため息を吐いた。アルベールは特に相槌を打たず、少しばかり目を伏せた。

 

 

「言うべき言葉が見つからないんだ」

 

「だから突き放すと?」

 

「そのつもりは無かったのだが」

 

「思いっきり冷たくしてたじゃないですか」

 

「…………」

 

 

 この男は、と内心で愚痴るディアナは、しかしと付けて話を続けた。

 

 

「結局、どうなさるおつもりで?」

 

「……ISを持たせる。身を守る術をなるべく早く身につけさせろ」

 

「テストパイロットにでもさせるつもりですか?」

 

「そうだ」

 

 

 ディアナは、この男は自分の子供に武器を持たせるのか、と思ったが、その言葉は内心に留める。

 伊達にこの社長と長く付き合っていない。この男がある程度の倫理を弁えているのは分かっていた。

 

 つまり、持たせたいのではなく、持たせなければならないのだろう。

 それほど深刻になってきているのだと、ディアナはまたため息を吐いた。

 

 

「……ちょっとはあの子達のことも考えてくださいよ」

 

「……善処しよう」

 

「はあ……トレーニングルームに行ってきます」

 

 

 己の雇い主の様子を見るに、親子の溝はまだまだ埋まらなさそうだ。

 ディアナは退出しながら、デュノアの娘達を不憫に思った。

 

 

 

 

 

 

 

「………………っ」

 

 

 じとっと張り付く不快感で目が覚めました。

 

 眠っている間に汗をかいてしまい、二度寝も出来なさそうなので起き上がります。

 今は9月始め。夏の終わり間際といったところですが、日本ほどではないとはいえ此方も気温が高い日は涼しさが欲しくなりますね。

 

 しかし、夢、を見たのでしょうか?

 何か朧げなイメージだけが残り、とてももどかしい。

 

 夢を見ていたのはわかるのにそれが何だったか分からない。よくあることとはいえ、余り良い気分はしませんね。

 

 ベットから抜け出して立ち上がります。

 別に足を怪我したから車椅子を使っている訳でもないので、少しくらい良いでしょう。

 

 クローゼットを開けると、何着もの服がズラリと並んでいました。

 一式に纏められたのもあり、それぞれはっきりとテーマが目に見えて分かります。うむ、良いセンスです。

 その中から僅かに透ける薄い外套を取り出して羽織りました。

 

 カーテンを開けると日が真上にありました。

 お昼のご飯を食べなければ。病院食から解放されたことですし、シャルと美味しいものを食べに行きましょう。

 

 一応体の調子に気をつけながらゆっくりと外へ向かいました。

 

 

 

 

 

 バシッ────

 

 

 

 

 

「……今のは?」

 

 

 何かを叩くような甲高い音が響いて、ついでどっと重いものが落ちる音が耳に届きました。

 

 今の音は一体?

 その後に聞こえてくる悲鳴の羅列が、その正体を仄めかしました。

 

 

「──の……泥棒猫の娘が!!」

 

「っ」

 

 

 背中を刺すような冷たい声。くぐもった悲鳴は分かりにくいですが、あれはシャルの声です。

 私は居ても立っても居られずに歩く足を早めました。

 何事かは分かりませんが、兎に角シャルが危ないのは分かります。

 

 

「シャル!?」

 

 

 一階に降りると、カーペットに座り込んで顔を覆うシャルと見知らぬ女性が鬼のような形相でシャルを睨んでいました。

 私はシャルを庇いながら、乱入してきた私を訝しげに見据える女を見返しました。

 

 

「貴女、誰ですか?」

 

「家主の夫人にむかって誰とは随分な挨拶ね」

 

 

 女の人はそう宣うと一層憎々しげに私達を見下げて、吐き捨てるように言いました。

 流行り物じゃないほうの正当な?悪役のような、鋭い眼光が特徴的な女の人です。

 

 

「なら、貴女が私達のお義母様ですか?」

 

「義母? 虫酸が走るわ。あの女の面影がある娘なんて嫌よ」

 

 

 ……随分な言いようですね。仮にもこっちは子供なんですよ?

 人並み程度の前世と今世を合わせ持つ私は兎も角、シャルはまだ13の子供だというのにこの仕打ちですか。

 

 

「……そう言われても、困ります」

 

「ええそうよね? あの女の娘なんて引き取りたくもないけど……あの人の願いだから仕方なく置いていてあげる。──目障りだから姿を見せないで頂戴」

 

「えっ」

 

 

 それだけ言うと背を向けて、玄関のドアを開いて歩き去っていきます。

 私はといえば怒涛の展開とあんまりな言い様に目を見張って固まることしか出来ませんでした。

 

 

「…………」

 

「あの、お姉ちゃん……」

 

 

 

 

 

「……こ──…………」

 

 

「……こ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「この毒親共はああああ!!!」

 

 

 

 

 

 大の大人が言うことがそれ!?

 どいつもこいつも巫山戯んじゃないわよ!!

 

 何ですか?なんなんですか?ここの成人はネグレクトでも流行ってるんですか?

 

 流石に頭に来ましたよ。あの外見だけでかくなったバカ共を今一度躾けてやりますとも。

 まだまだ未熟ですが人並み程度の動きしかできない女など能力でどうにでも料理してやれます。

 

 さあその首晒してあげますからちょっとこっち来なさい。

 

 

「お、お姉ちゃん落ち着いて……」

 

「どきなさいシャル! あのよく回るだけの舌、私自ら裁ち切ってやるわ!!」

 

「ちょ、能力はダメだから!! ストップ! ストップお姉ちゃん!」

 

 

 顕現させたスキマを振り回しながら怒気を発する私とそれを必死に止めるシャル。

 後で知ったのですが、一部始終を隠れて見ていたらしいメイドさん達を大層恐がらせてしまったようで、後の私達二人の第一印象を決定付けたそうです。

 

 その後暫くの間、私を見てやたらビクビクするメイドさんに苦笑いを浮かべる日々が続くのでした。

 

 

 




アルベール・デュノア……原作で親心あってあれなら割と困ったちゃんだと思う。

デュノア夫人……IS世界の大人(特に女性陣)は大体ヤベーのが多い気がせんでもない。仙狐さんを見習ってください。

パリ16区……高級住宅街もだけど、各国の大使館やワインの博物館あるオシャレな観光地でもあるので是非一度行ってみてくださいな。
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