FGOキッズが型月世界に転生した末路   作:夜未

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今回は完全なる平和回です。


居候

教会の扉を前にして、思わずしゃがみこむ。

白昼夢によって立っていられなくなったからだ。

まだ視界がぐるぐると回っている気がした。

目を閉じて、少し意識を集中する。

 

上はどちらだ?

空だ。

下はどちらだ?

地面だ。

俺は死んでいるか?生きているか?

生きている。

 

よし、もう大丈夫。

 

立ち上がり扉を睨む。

この向こうには一文字神父がいるのだろう。

そして彼は俺を殺そうと企んでいるはずだ。

自分が聖杯戦争の勝者になるために。

最もそれは白昼夢があっていたらの話なのだが、今はそうであると仮定する。

 

馬鹿正直に突っ込んだとして、俺は一文字神父に勝てるか?

無理だ。

直接的な攻撃魔術の一つも使えず、装備もまともに持ってきていない俺では、例え相手が平均的な魔術師だとしても手も足も出ない。

今は撤退する他ないだろう。

 

俺は再び扉の向こうを強く睨みつけ、教会から離れた。

 

 

 

 

 

夕日によって赤く染まった中、ガチャガチャと乱暴な音を立てて自宅の鍵を開ける。

近頃調子が悪いのか、どうにも開けにくい。

今度業者に見てもらうべきだろうか。

 

家に張られた結界に変わりがないことを確認する。

地下室を魔術工房として使っているので、念のため結界を張ってあるのだ。

よし、変わりないな。そう

確認した瞬間、激しく反応し始める結界。

今まさに侵入者現れたのだ。

一体どこから?

決まっている。俺が今背を向けている玄関からだ。

防衛本能からか、恐怖からか。

ろくに撃退できる戦闘力もないはずなのに、咄嗟に振り向いて侵入者を確認しようとした。

そこにいたのは……。

 

「へぇ〜、現代の家ってこんな感じなのね。ちょっと狭いけどダーリンとの愛の巣にはむしろこれくらいが丁度いいわね!」

「あ、どうもどうもお邪魔します。俺たちのことは気にせず寛いでください」

 

女神とクマのバカップルだった。

 

 

 

いつまでも玄関にいては話が進まないので、一旦家に上がってもらう。

というかアルテミスが勝手に上がってきた。

突然その頭に乗ったオリオンも一緒にだ。

仕方なしにお茶を出してやり、話を聞く。

 

「あー、俺はやめろって言ったんだけどさ。こいつがいつまでも墓地(あそこ)にいるのは嫌だって言い出してよ」

「なにこのお茶。全然美味しくない……紅茶だして こ・う・ちゃー!」

「オマエは遠慮ってもんをしらねぇのか!?」

 

紅茶なんて我が家には常備されていない。

あるのはせいぜいやっすい麦茶である。

バカップルの戯れを見ながら混乱した頭を働かせるが、全然状況が見えてこなかった。

 

「で、なんで我が家(うち)?」

「だってこっちの世界で知り合いなのアナタくらいなんだもん」

 

アルテミスが麦茶をオリオンに押し付けながら答える。

激安麦茶がそんなに嫌か。

 

「すまん。コイツ言い出したら聞かなくてな。適当な余ってる部屋貸して貰えたらそれだけでいいから」

 

申し訳なさそうな顔をしているが、このクマ言ってることは中々図々しい。

というかアルテミスはワガママで言ってるだけだが、オリオンの方は見込みを持って話を持ちかけているように見える。

アーチャーを仲間にしたいと考えている俺たち側からしたらアーチャーの心象を悪くすることは言いづらいし、共に暮らすことで口説き落とせる可能性も出てくる。

そもそもよく考えたらアサシンがそばにいない今、俺ひとりではサーヴァントの頼みなんて断れる筈がない。

下手に断ったら撃ち殺されて家強奪エンドだ。

クマの癖に頭の回るやつである。

 

「わかった。余ってる部屋でもいいんだな?」

「ああ、それでコイツも文句言わなくなるはずだ」

 

仕方がない。

確か物置にしていた部屋があった筈だから、そこを使ってもらおう。

 

「そういや自己紹介してなかったな。俺の名前は谷栞 勉。これからよろしく」

「はーい!私の名前はアルテミ……じゃなくてオリオンでぇす!よろしくね!」

「ペットとかぬいぐるみとかのオリべぇでーす!よーろーしーくー!あ、そういやアンタ一人暮らし?実は美人なお姉さんと一緒に住んでたりない?」

「ダ・ア・リ・ン?」

 

ギリギリと首を絞められているクマのぬいぐるみは無視して話を進める。

 

「じゃあ、部屋に案内するからついてきてくれ」

「はーい!」

「え、ちょ、俺の無視?あ、やべキマってるキマってる!」

 

 

 

 

「それで、そんなことになっとん?」

 

芋ジャージを見事に着こなしたアサシンがそう確認する。

俺の状況をみてその表情は呆れ返っていた。

 

寝袋に入ったままモゴモゴと反論する。

 

「仕方ないだろ。空き部屋で良いとか言っときながらまさか寝室を取られるなんて考えもしねぇよ」

 

そう、俺が今寝袋に包まってリビングに転がっているのは全てあのバカップルのせいである。

話がついたから空き部屋へ案内しようとすると、目ざとく道中にあった俺の寝室を発見。

一番大きい部屋であることと、空調完備だったのが悪かったのか、アルテミスが寝室を気に入ってしまい、なし崩し的に俺は追い出されてしまった。

許すまじリア充。

 

「しっかし、アーチャーが居候にくるなんて、うちがいない間にえらいおもろいことになってるなぁ」

 

そう言ってカラカラと笑うアサシン。

何が楽しいかさっぱりなのだが、本人は楽しそうだ。

 

「そいや今晩はどないすんの?また使い魔さん飛ばして他のマスター探すん?」

「知らん!俺はもう今日は寝る!おやすみ!」

「もう、不貞腐れてもうて……。なんならうちと夜通し明かす?」

「遠慮しときます!」

 

あ、そういや寝室に明日の分のカッターシャツ置いたままだわ。

明朝にでも取りに行かなきゃ。




オリオンが主人公をストーキングし始めたタイミングは、墓地で別れた直後ではなくしばらく経ってからです。
主人公達が帰ってゆく姿を完全に見送ってから、アルテミスがこんな寂しいところ飽きた!もっと素敵な愛の巣を探し行きましょう!とか言い出し墓地を飛び出して愛の巣を捜索開始。
その後、教会から離れてゆく主人公をたまたま見つけ、そこからずっと霊体化でストーキングしてました。
それと、アルテミスは主人公の家を狭いと表していましたが、彼の家はむしろ結構大きい一軒家です。
そりゃどれだけデカくても神殿には敵いませんて。

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