FGOキッズが型月世界に転生した末路 作:夜未
教会
つい昨日までは自身の寝室だった部屋の前で、一つ深呼吸をする。
よし、覚悟は決まった。
ドアノブを掴んで勢いよく開く。
こういうのは勢いが重要なのだ!
「はーい!おはようございまーす!忘れ物とりに来ましたー!」
部屋に入ってまず目に付いたのはくまのぬいぐるみ。
本来は動くぬいぐるみのはずなのだが、何か本に見入っているらしく、俺の挨拶に反応すらしていない。
猛烈に嫌な予感がしてクマが読んでいる本を覗き込む。
それは、俺が丁重に隠していたはずのお宝品だった。
「ん?おおツトム。どうしたんだこんな朝っぱらから」
「忘れ物を……じゃなくて!一体どうやってそれを……」
「そりゃあ、ベットの下なんて古典的な場所に隠してたら見つかるだろ」
そ、そんな……,
見つけにくいようにとベットに隠し引き出しまで作っておいたのに……。
愛の狩人と呼ばれるだけあって、このクマ只者ではない。
その嗅覚に衝撃を受けつつカッターシャツを回収。
ここでようやく違和感に気づく。
違和感というか、どこをどう見てもこの部屋には本体がいない。
「あれ?
「あいつならアンタのとこのアサシンと酒盛りしてるぞ」
「アサシンと?」
「ああ、女子会だとよ」
俺がリビングで凍えているうちにサーヴァント達は随分と仲良くなっていたらしい。
というか鬼と神って相性悪そうだけど大丈夫なのだろうか?
女子会ならぬ女死会になってないといいが……。
「なあツトム。もっとこういう本ないのか?」
「そこになければないですね」
制服に着替え、朝食を準備するためにキッチンに向かう。
昨日はカップ味噌汁とツナ缶丼だったので、今日はメニューを変えよう。
でもなんかあったかな……ああ、そういえばセールで買ったカップラーメンがあった。
朝から食べるものとしてはちょっと濃いが、アレでいいだろう。
そうと決まれば、レッツ調理。
キッチンの扉をガラッとあけると、そこには二人の少女。
「ん?だんなはんおはようさん」
「うぇへへ〜ダーリンそこはダメよ……」
「お、おはよう。アサシン」
一人はシラフのような顔つきで、一人は酷い寝顔を晒している。
二人の周りには空になったボトルが散乱していた。
どうやら相当飲んだらしく、キッチン中に酒臭さが漂っている。
空のボトルを抱きしめてだらしない笑顔を晒す女神を踏まないように気をつけながら、流しに移動。
ポットに水道水を流し込み、沸騰させる。
「今日はなに食べるん?」
「カップラーメン」
「らぁめん?」
なんだそれ、とでも言いたげな表情を浮かべるアサシン。
彼女が生きていた時代はまだラーメンがなかったんだっけ?
コテン、と首をかしげる様子はとても可愛らしい。
的確にオタクを萌え殺すムーブだ。
うちの推しはこんなに可愛い。
「食べてみるか?」
「ええの?」
「沢山あるし大丈夫」
冷蔵庫の横に置いてあるダンボールからカップラーメンを二つ取り出す。
味は両方シーフード。
というかシーフードのカップラーメンを箱買いしてるので、シーフードという選択肢しかない。
ポットが音を鳴らして沸騰を教えていたので、二つのカップラーメンに順番に注ぐ。
3分待機。
興味深げにカップラーメンを見ているアサシンが可愛らしい。
「よし、もういいだろう」
「へぇ、あんなカピカピの麺がこうなるなんてすごいもんやなぁ」
昨日と同じくリビングへ移動し、テレビをつける。
テレビでは、ホテルで見つかった首なし焼死体云々のニュースが流れていた。
アサシンと二人して小さなテーブルにつき、ラーメンをすする。
テレビの音とラーメンの啜る音だけがリビングに響く。
「お?なんかうまそうなもん食べてんじゃん。なにそれ?」
「ぁあ!ダーリンだぁ、アレ?すごーい!なんでダーリン分身してるのぉ?」
「うわ、酒臭!ちょっとオマエ酔いすぎだろ!」
「だってぇ、こんなの初めてなんだもん」
そこへ、寝室から出てきたオリオンとその声を聞いてキッチンから這い出てきたアルテミスが加わると、一気に騒がしくなった。
「なぁなぁ、それ俺にもくれよ」
「ダーリンが食べるならわたしもー!」
ふてぶてしく言ってくるクマと、元気よく手を上げてアピールする酒臭い女神。
ああ、今日はお祈りに遅刻するかもしれない。
教会の扉に立つ。
アーチャーやアサシンと一緒に朝食をとっていると、いつもより遅くなってしまった。
教会に入ろうと扉がに手をかけ、動けなくなる。
つい昨日まではなんの躊躇いもなく開けられたはずの扉が、今は開けるのが怖かった。
やはり酒呑についてきて貰うべきだっただろうか?
いやだがしかし、一文字神父のサーヴァントはきっとセイバー。
アサシンとは致命的に相性が悪い上に、見つかったらきっと必ず殺しに来るだろう。
なら連れてこない方がまだマシ……か?
しかし、いつまでもこうしてはいられない。
ついに覚悟を決め、扉を開けようとして微かな違和感を覚える。
早朝にしても辺りが静かすぎるような……?
そんな思考が走ったのも束の間、扉の向こうを見た俺はそんなこと思考する暇すらなくなった。
「ぇ……?」
瞬時にはその光景を理解するなんて出来ない。
礼拝堂に差し込む清廉なる朝日の中、生々しく光る
それは一人の女性によって掲げられており、その美しい姿勢は彫刻のようにも思える。
掲げられた刀が貫くのは小さな体。
セイバーによって、キャスターが殺されていた。
「キャス、ター……ちゃん?」
キャスターがセイバーによって殺されていた。セイバーによってキャスターが殺されて殺されてセイバーによって殺人が行われてあの女によって刀がキャスターを貫いて死んだキャスターは殺人されて殺人の罪がセイバーは狂ったように笑っていないように殺人鬼はセイバーであの体勢で人を殺せるなんてセイバーは殺戮者たる不思議な力を何かから授かった悪魔たる女の魔法の罪の契約した悪魔のセイバーと神は許さない敵の神罰は罪を犯した女はそれはつまり、
「殺したな……」
ああ、なんたることか!少女が
無垢なる少女が、
視界をずらすと、もうひとり誰かが倒れているのが見える。
どこか見覚えがある美しい金髪。
いいや!それが誰だあるかは重要ではない!
この魔女はもうすでに二人も人を殺しているのだ!
「人を……殺したな……」
俺の声に反応して
ああ、許せようかこの
赦せるだろうか、この
「マスター。人払いの結界は張ってあるはずでは?」
「うん。でもこれでいいんだよ。彼は僕がわざと招き入れたんだ」
魔女は悠長にも側にあた神父服の男に話しかける。
本物の神父が魔女と会話するなどあり得ない。
あれ神父を装った悪魔に違いない!
人を殺した魔女と、神父を装う悪魔。
許せるはずがない!赦せるはずがない!
神は十戒を我らに与えてくださった!
十戒を破るものは許されない!
殺人を許せるはずがない!
あの魔女を見よ!あの悪魔の使いを見よ!
血を反射して輝く刀はまた新しい犠牲者を作るだろう!
あの魔女はまた人を殺すだろう!
神の信徒たる俺たちを殺すだろう!
神の敵たる魔女を!一体!誰が!許せようか!
「殺してやるぅぅぅうううう!!!!!」
殺せ!殺せ!魔女を殺せ!
神の敵を殺せ!悪魔を殺せ!
殺さなくて如何する!魔女を殺さなくて如何する!
殺せころせコロセ!!
魔女をころせ!
「彼も敵だ。殺せ、セイバー」
「承知しました」
魔女が動く、いや、魔女が動いていた。
気づけば魔女は全てを終わらせていた。
空を飛ぶ視界で、自分の体を見る。
空を飛ぶ視界で、自分の死体を見る。
ああ、魔女を殺さなければ。
だれか、だれかあの魔女を───
わかりずらかったかもしれないから細くしておくと今回の死因は、首をスパーンと切られたことによる失血死(?)です。
キャスターが殺される直前にセイバーに魔女宣告を使っており、主人公はそれに巻き込まれました。
ちなみに主人公は魔女宣告によって思考がまとも出来なくなっているために気にしてませんが、ちょっとだけ描写した金髪の死体ってのはアリス先輩のことです。
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