FGOキッズが型月世界に転生した末路 作:夜未
「ねえダーリン。これそろそろ開けていいのかしら?」
「まだお湯を入れてから1分だぞ」
話し声を聞いて、ふと目が覚める。
隣を見ればアサシンが、正面を見ればアーチャーの二人が座っていた。
手元を見る。
熱々のカップラーメンが湯気を立てている。
良い香りがしていて、実に美味しそうである。
ああそうだ、確か今はオリオンとアルテミスの分のカップラーメンをダンボールから出してやって、お湯を入れてやったところだ。
俺はなんでこんな事をわざわざ確認したんだっけ?
それは白昼夢を見たせいで意識が朦朧としていたからで……。
今度こそ完全に目が醒める。
俺がさっき見たのはどんな白昼夢だった?
俺が死んだ。いやそれはいつも通りだ。
キャスターが死んだ。
アリス先輩も死んでいた。
ガタリと大きな音を立てて椅子から立ち上がる。
素早く時計を確認。
今から家を出たらいつもより少し教会に着くだろう。
急がなければ、手遅れになる。
「どないしたん?急に立ち上がって」
ズルズルとラーメンを啜りながらアサシンが話しかけてくる。
俺のサーヴァント。アサシン、酒呑童子。
彼女を連れて急げばアリス先輩たちを救えるか?
敵はセイバー、源頼光だ。
セイバーとアサシンという等倍同士ながら、相手はこちらに刺さる特攻を持っている。
しかも二重。とてもじゃないが相性がいいとは言えない。
ならばどうする?
いいや、悩むまでもない。
こういう時の戦法は───令呪と
俺の使う魔術系統は
とは言っても、パラケルススのように賢者の石をポンポン作ったりなんか当然できない。
というか賢者の石をポンポン作るとかパラケルススって実は凄いキャスターなのでは?
話を戻そう、俺が出来るのは精々が酒精を媒体とした錬金術だ。
錬金物は主に魔法薬。
飲んだら体を強化する酒や爆発する酒、かけることで体にバリアを張る酒、その他いろいろを作っている。
ぶっちゃけ前者の二つはドーピング薬と火炎瓶と結果は変わらないのだが、逆にそれ相応の効果はあるとも言える。
俺はその
「ほんまなんかあったん?そないなぶっそぉなもん持ち出して」
魔術工房の出入り口に寄りかかっていたアサシンが話しかけてくるのを聞きながら、大小様々な入れ物に入った酒を割れないように気をつけながら学生鞄に詰める。
漫画やアニメとは違ったボストンバック型の高校指定鞄を、ずっとダサくて邪魔くさいと蔑視していたが、今だけは許容量が多い鞄がありがたかった。
「これから教会でキャスターとセイバーの戦闘が起こる」
「それで?」
この二つに関しては鞄に詰めてバックなら持って行っても意味がないだろう。
流石にリアルでバフを盛ってるのを目の前で待ってくれるとは思えない。
意を決して、
人生初の飲酒のはずが、どうにも薬臭く美味しくない。
とてもじゃないが、いい思い出とは言えないな。
「だから、急がなきゃキャスターが殺されちまうんだよ!」
語尾が荒だっているのを自覚しながら、
「せやから、それで?」
「は?だから、」
「別にええやんそんなこと」
凄まじい速さで気化していく酒。
その匂いに皮をしかめた。
アサシンを見る。
いつも通りケラケラ笑っていた。
「キャスターとセイバーが潰し合うんやろ?両方敵同士、別に割り込む必要なんてあらへんわ
敵と敵が潰し合う。そのまま行けばひとり消えて、運が良ければふたり消える。ええこと尽くしや」
何を言ってるんだと反論しようとしたが、口から言葉は出なかった。
だってアサシンは何も間違ったことを言っていないから。
声を出さないまま、口をパクパクとする俺のにアサシンが続ける。
「だんなはん聖杯戦争ってどないなもんかわかってはる?
言われなくてもわかっている。
わかっているつもりだった。
聖杯戦争は
信じられるのは自分のサーヴァントただ独りだけ。
それ以外は皆が敵。殺すべき相手。
共闘なんて出来ない。共生なんて出来ない。
あの愛らしいキャスターだって、そして
持っていた鞄を手放したことで、鞄に詰まった酒瓶たちがカチャカチャを音を鳴らした。
今まで見てきた白昼夢を思い出す。
キャスターに
みんな、みんな俺を殺そうとしていた。
みんな、みんな俺の敵だった。
「せやから、他の陣営どおしの潰し合いなんてほっとけばええんやん?」
FGOのようにみんなで仲良くするなんて出来ない。
皆が誰かを殺すタイミングを見計らってて、皆が誰かに殺されないように警戒している。
たとえ
「ああ、そうだな」
俺が、助ける必要なんてない。
俺が、頑張る必要なんてない。
全身から力が抜けるようだった。
全身から気が抜けるようだった。
「……リビングに戻ろうか。アーチャーたちも待ってるだろうし」
鞄を床に放り投げたまま立ち上がる。
今の俺には必要のないものだ。
だって、キャスターとセイバーの戦いに割り込む必要なんてないんだから。
俺はただ、敵のサーヴァントを倒すことだけ考えておけばいいのだ。
敵のサーヴァントを救うのは俺がやるべきことじゃない。
「うん、顔が変わった。やっと
アサシンは笑っていた。
その笑顔はいつものケラケラとした愉快そうなものではなく、苦笑にも近いものだった。
一方俺は、アサシンによって
アサシンの言葉を聞いて、やっぱりそうだと安心する。
こっちの方が賢い選択だ。
こっちの方が正しい選択だ。
魔術工房から出ようと、アサシンの横を通ろうとする。
───本当に?
小さな疑問が湧き出て、思考が急速に回り出す。
本当にこれが正しい選択か?
狂っていた歯車が急に噛み合ったように、思考が軽快に回る。
思い出せ。思い出せ谷栞 勉。
もしもこんなとき、物語の主人公ならば───
「ああ、賢うなってくれて本当に」
高速思考の中でアサシンの甘い声が聞こえる。
見捨てるはずがない。
彼ならば、彼女ならば見捨てるはずがない。
思い出せ!俺は誰に憧れた?
思い出せ!俺は何に憧れた?
こんな選択、正しくない!
覚悟を決めろ。
俺は───
「おもろないわ」
アサシンの甘い声。
血肉が貫かれる音。
そして、俺の意識は途絶えた。
アサシンは主人公のことをバカだと知ってます。
そして、バカだからこそ気に入っていました。
またバカなことをしようとしてたから、すこしちょっかいを出してやったら主人公が『賢い選択』をしようとしたので、壊れたおもちゃを処分するが如く殺しました。
アサシンとしてはこの後はapoジャックのように主人公の心臓を食って、次の
そして変な方向に覚醒しようとしてる主人公。
次回にご期待ください。
ご感想お待ちしてます。