FGOキッズが型月世界に転生した末路   作:夜未

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プリズマコースの周回やってたら更新に日が空いてしまいました。すみません。


愚行権

「せやから、他の陣営どおしの潰し合いなんてほっとけば───」

「それでも俺は、二人を助ける」

「……だんなはん、はなし聞いとった?」

 

アサシンを睨みつける。

彼女は面白そうに笑みを深めた。

 

そうだ。

これは愚かな選択かもしれない。

いいや、きっと間違いなくバカな選択だ。

でも、そうだとしても!

 

「その上で、俺はこちらを選ぶ」

 

「……全くだんなはんはおもろいなぁ」

 

アサシンから目を離し、作業を再開する。

なるべく使いやすいように精一杯工夫を凝らしておく。

正念場であたふたしたら目を当てられないからな。

携帯を取り出して時間を確認する。

まだ間に合う時間だ。

今から行けば、俺がみた白昼夢(ミライ)を変えられる。

アリス先輩とキャスターを救えるのだ。

 

鞄を持って立ち上がると、鞄からカチャカチャと音がした。

 

一つ大きく呼吸して、アサシンを見て告げる。

 

「よし、行くぞアサシン」

「ふふ、しゃぁないから付きおうたるわ」

 

 

 

 

 

 

厳かな雰囲気に満ちた教会の中、二体の英霊(サーヴァント)が対峙していた。

一人は、刀を携えて時代錯誤な装備を身に纏う妙齢の女性(セイバー)

一人は、ゴスロリのような愛らしい衣装に身を包んだ幼い少女(キャスター)

その側にはそれぞれ狐目の神父と、美しい少女を連れていた。

 

「ああ、恐ろしいわ。神に仕える神父が、こんな女と繋がっていたなんて」

 

キャスターが口を開く。

演技がかってすら見える大袈裟な口調を、セイバーは構えることもなく眺めていた。

余裕にすら見える態度。

当たり前だ。セイバーにとって、キャスターはすぐに殺せる小娘に過ぎない。

警戒する必要すら、ない。

 

キャスターがまっすぐにセイバーに指を向ける。

 

「あなた、」

 

けれどそこから先の宣告は紡がれなかった。

教会中に衝撃音が響き、建て付きの悪かった扉が派手に宙を舞う。

予想外な自体にキャスターが動きを止め、警戒からか必然と四人の視線はその音を出した犯人へと向く。

入り口に佇む人影は、自分に存分に視線が集中しているのを実感し、

 

「壊してもうたわ。ふふ、かんにんな?」

 

乱入者(アサシン)は、はんなりと笑った。

 

 

 

 

 

 

 

セイバーを見る。刀すら抜いていない。

キャスターを見る。死んでいない。

アリス先輩を見る。怪我一つしていない。

間に合ったのだと実感した。

セイバーが二人を殺す前に、間に合ったのだ。

思わずへたり込みそうになるのを抑え、状況を把握する。

セイバーが刀すら抜いていないあたりを顧みるに、どうやら戦闘が始まる前に割り込めたようだ。

 

「あれ?セイバーって牛女やったんか」

「え?知らなかったっけ?」

「聞いてへんけど?ただえらい強いセイバーとは聞いてたけど」

 

アサシンとの情報のズレに暫し考えこむ。

なんでだろう?だって何度も会ってるはずなのに……。

あ!いや違うぞ。そもそも俺自身もセイバーには会ったこれが初対面じゃないか。

あくまで俺は白昼夢の中でセイバーに会ったに過ぎない。

現実では今回が初めましてだ。

というか改めて見たらセイバーの胸すごいな。人体の神秘を感じる。いや、鬼体か?

すぐに視線が吸付けられるから気をつけないと。

 

ウチ(教会)の扉を吹き飛ばすなんてひどいな。買い換えなきゃいけないじゃないか」

「建てつけも悪くなってたし、買い換え時だったから丁度いいだろ?」

 

狐の様に細い目からは、心情が全く読み取れない。

けれどその声音には動揺の色が少しも伺えず、身構えもしていない佇まいからは随分と余裕があるように見える。

白昼夢でも彼は同様に俺の登場に驚いていなかった。

むしろ自ら招き入れたと言った旨の言葉を言っていた気もする。

 

「や、谷栞くん!?」

「おはようございます。アリス先輩」

 

反面、アリス先輩は実にわかりやすく驚いてくれた。

元々大きな碧眼がこれでもかと見開かれている。

その側にいるキャスターも同様。

この二人は一文字神父とは違って驚きで構えを取れていない。

 

その三人とは違い、明確に俺たちに敵意を向けるのが一人。

 

「こんなところにまで湧いてくるとは、害虫とは本当に目障りですね」

 

腰に下げた鞘から、見せつけるようにゆっくりと童子切安綱(カタナ)を引き抜く。

臨戦態勢というやつだ。

その瞳はまっすぐとアサシン(酒呑童子)を射抜いており、その側にいる俺としては非常に怖いのだが、当のアサシンはニヤニヤと笑っている。

なんだか俺が召喚してからで一番愉快そうな笑顔だ。

 

「よし、じゃあアサシン。作戦通りに」

「作戦ゆぅてもウチはセイバー(牛女)を抑えとけばええんやろ?相手があの牛女なら俄然やる気もでてきたわ」

 

本当に心底楽しそうだ。

これだけご機嫌ならきっといい仕事をしてくれるだろう。

 

魔術回路を解放、全力でアサシンへ魔力を供給する。

あらかじめ呑んでおいた魔術酒によって、ドーピングされた魔術回路が悲鳴をあげた。激しい痛みが走るが、これくらい覚悟の上だ。

だが、まだ足りない。

この程度では、セイバーに負けてしまう、そう経験(FGO知識)からわかっていた。

故に、見せつけるように右手の袖をめくりあげる。

前腕に刻まれた赤い紋章(令呪)は、煌々と輝いていた。

 

「令呪をもって命じる!『セイバーを3()()()抑えつけろ!』」

 

高密度の魔力で編まれた令呪が紐解かれ、命令を完遂させる為にアサシンを強化する。

アサシンの話によると、令呪は具体的な命令ほど効果が上がるらしい。

教会に来るまでの間で二人で話し合った結果、俺たちはそこからさらに時間制限をつけることにした。

星5サーヴァントであるアサシンに令呪を3分限定で作用させる。

結局のところ力押しでしかないが、これだけやればアサシンが負けることはないはずだ。

 

令呪の発動を感じると共に、腕時計のタイマーを起動させる。時間は当然3分。これが鳴り出したらアサシンが殺される可能性が生じてくる。

まあ、つまり───

 

「3分間でカタをつけてやる!」

 

突進めいたアサシンの攻撃によってセイバーが吹き飛ばされたのと同じくして俺も走り出す。

アリス先輩とキャスターのすぐ側までたどり着くと、鞄から取り出しておいた比較的小さな酒瓶を一文字神父の足元へ投げつけた。

 

「くらえ詐欺神父!」

 

床にぶちまけられた酒から弾けるように煙が発生する。

すぐさま視界が真っ白に染まり、辺りをほんの少し先も見えない白い暗闇が覆い尽くした。

見た目はただの煙にしか見えないが、魔術によって付与された効果により、この煙に包まれた者は上も下も右も左も、なんなら時間だってわからなくなっているはずだ。

もっとも術者の俺を除いて、だが。

煙のなか右往左往していたアリス先輩を見つけ出し、その腕を掴む。

アリス先輩(マスター)さえ連れて行けば、サーヴァントであるキャスターなら容易に抜け出せるだろう。

 

「アリス先輩!こっちに!」

「えっ?」

 

驚いたままのアリス先輩を半ば無理やり引っ張りながら、戦線離脱を図る。

俺の目的は別にセイバーを倒すことではない。

アリス先輩とキャスターの救出、それが目的なのだからセイバーを抑えてこの場から逃げ出せばいい。

一文字神父は煙に包まれる直前に相当警戒していたようだから、攻撃が来るかもしれない可能性を考えて動けないはずだ。

 

セイバーはアサシンによってこの場から引き剥がされ、抑えられている。

一文字神父は煙の中で俺からの攻撃を警戒して動けない。

となると後はアリス先輩を連れて逃げるだけ!

三分もあれば余裕だ。

 

けれど、そんな俺の甘い計画はすぐに覆された。

アサシンとセイバーの戦闘音とは違う、破壊音が教会に響く。

硬いモノを砕く音と、同時にやってくる衝撃波。

それによって煙が掻き消される。

 

「なっ!?そんなのありかよ!?」

 

衝撃波の中心にいたのは一文字神父。

けれど、その足にはバチバチと帯電する灰色の鎧甲を身に纏っていた。

足元をみると、蜘蛛の巣状に罅が走った砕かれたコンクリートの床。

震脚という言葉が脳裏に浮かぶ。

前世でみたアニメでキャラクターが似たようなことをしていた。

けど現実でやるか普通!?サーヴァントじゃねぇんだぞ!?

 

「こまったな。荒事はあんまり得意じゃないんだ」

「そんなバカみたいなことしでかしてといてよく言うぜ」

 

余裕たっぷりの一文字神父に適当な言葉を返して時間を稼ぐ。

幸いながら逃げの一手を選んでいた為に一文字神父と俺たちの距離は稼げている。

カツカツと音を立てて地面を蹴っている一文字神父を改めて見る。

一文字神父の装備は見た感じ足鎧だけだ。

そして多分だか、あの漫画みたいな震脚はあの足鎧の効果だと思われる。

自身の身体能力であんなことをするには、彼の身体は些か軟弱過ぎる。

アサシン(酒呑童子)セイバー(源頼光)のように種族からして違うならまだしも、そうポンポン鬼が現代に生きてたらたまったもんじゃない。

そもそも昨日毒を用いて俺を殺そうとした辺りを考えるに、彼自身の戦闘力はそう高くないとはずだ。

もし素の戦闘力があれだけあるのならば毒なんて使わずに殴り殺す方が早い。

それに足鎧一つであの威力を出しているのだとしたら、攻撃力以外に取り柄はないはず。

つまり、この距離を一瞬で詰めてくるなんてことはないはずだ。

ならば遠距離攻撃でチマチマ牽制しながら退却すれば……。

よし、光明が見えてきた。

ならば鞄からあの酒とあの酒を取り出して───

 

「だから、僕はこれに頼らせて貰うよ」

「は?」

 

神父の袖口から突然現れた黒い銃口(ナニカ)

彼はその引き金を、俺に真っ直ぐに向けて躊躇(タメラ)いもなく引いた。

 




同盟も結んでない相手を助ける為に令呪使うとか、率直にいってバカの権化なんですけど、主人公は実はもっとバカなんですよ。
「迷宮」で描写しましたが、なんと彼はFGOのように令呪が一日経ったら復活するって思い込んでいるのです。
そんな勘違いをしていたからこそ出来た作戦ですね。

一文字神父が装備している鎧甲というのは執行者の装備である灰錠のことです。
設定的には黒鍵よりもこっちの方がメジャーらしいんで灰錠を使わせました。けれど手足じゃなくて足にのみ装備って感じです。
そして一文字神父の身体能力は主人公の見立て通り言峰みたいに超人ではありません。むしろ弱い方です。

あと主人公がすごい必死に考えたり銃で撃ち殺されたりしてる時アリス先輩はいつも通り恐怖を神様に祈って(押し付けて)ました。
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