FGOキッズが型月世界に転生した末路 作:夜未
死に戻り
「あの、旦那はん、聞いてはる?」
はっ、と目が覚めた。
目が覚めたというよりは意識が冴えたという方が正しいだろうか。
ぼやーとしていた意識が一瞬で覚醒するあの感覚。
授業中ぼんやりしてると急に当てられた時になるアレに近い。
「あ、ああ」
「うちはアサシン、酒呑童子。よろしゅうな?」
普段なら断然その手を取りたいところだが、今さっき見た妙な白昼夢を思い出す。
痛み。苦しみ。混乱。恐怖。
ただの白昼夢としてはリアルすぎた。
それによって思わずアサシンの手をとるのを躊躇ってしまう。
「……俺は、谷栞 勉」
「もう、いけずやなぁ。そないに怖がらんでも、骨なんか抜かへんで? 」
アサシンの手を見る。
小さな手だ。こんな小さな手では戦うどころか剣すら持てるのか怪しいだろう。
だが、FGO内では彼女はこの腕で大剣を振り回し、腹わたを引きずり出す。
きっと───俺の腕や首を引っこ抜くことなんて容易いだろう。
だがまあ、うん、アサシンがそんなことする理由はないから大丈夫だろう。
がっしりとアサシンの手を掴む。
「よろしく、酒呑!」
すると彼女は何故か少し驚いたような顔をする。
どうしたんだろうか?
「あんたはん、おもろいなぁ」
そう語る彼女の顔は、新しいおもちゃを見つけた猫のようだった。
聖杯戦争が始まったからといって、学校を休むことはできない。
あゝ哀しい哉、学生の宿命。
まだ薄暗い通学路を歩きながら学生という身分に嘆く。
酒呑が居てくれればまだマシなのだか、こちらの時代を散策してみたいとか言って一人でどこか言ってしまった。
二度目の人生となると、高校なんて面倒臭さの集合体でしかない。
小さい頃は外見同い年精神年下のガキにマウントとったり出来て楽しかったが、高2とまでなるとガキ共もそれなりに賢くなってきて全然面白くない。
前世で受験勉強頑張ったおかげで高校の内容程度少し勉強すれば思い出せる為、勉強に忌避感はないが単純にめんどくさいのだ。
だがしかし、そんな灰色の日常にも潤いというものはある。
そう、彼女はいつも、早朝の教会にいる。
若干建て付けが悪くなっている教会のドアを派手な音を立てながら開く。
ギギギギギィィ!という如何にも不快な音が教会内に鳴り響き、彼女は俺のことに気づいたようだった。
「あ、谷栞くん。おはようございます」
礼拝堂で祈っていた少女が振り向き、挨拶をしてくる。
彼女こそが俺の日常の癒しこと、
俺の一つ年上の18歳。つまり高校三年生だ。
ハーフゆえの美しい金髪碧眼と整った顔立ち。
すらりとした長身はそこらのモデルなんかよりも美しい。
というか以前実際にモデル活動をやっていると話していた気がする。
なにより胸がでかい。それだけで素晴らしくて涙が出るね。
俺は二次元だとロリ派だが、三次元なら断然お姉さん派なのだ。
「おはようございますアリス先輩。今日もご一緒いいですか?」
「ええ、もちろんです」
了承を取ってアリス先輩の隣で
俺は別に神なんて全く信じていないのだが、敬虔な教徒たるアリス先輩との繋がり作りの為にそういう風に演じているのだ。
別に祈る内容もないので適当に雑念で時間を潰し、アリス先輩が祈り終わったのを横目で見計らって自分も祈るフリをやめる。
俺からしたら全く理解不能なのだけれど、アリス先輩にとって毎朝の祈りはとても大切なことらしい。
そこから二人で雑談でもしながら学校に向かうのが俺たちの日課なのだ。
いつも通りアリス先輩に通学のお誘いをしようとして、そこではたと気づいた。
いつのまにかアリス先輩の横で見覚えのある少女が祈っていることに。
年齢はたぶん10歳ほど。
白い肌と、色素の薄い金髪。
服は詳しくないため名状できないが、ゴスロリめいた黒くてフリフリした服を着ていて、頭にはハットのような黒い帽子をかぶっていた。
髪にはこれまた黒いリボンと赤いリボンをつけている。
うん。なんというか、言ってしまえばアビゲイルだよね。
FGOより若干幼いし、髪色や格好が若干違うが、アビゲイルに瓜二つである。
リリィ?いやオルタか?
黒いし赤いしオルタだな。
「あの、先輩。そちらの子は?」
「え?あぁ、この子ですか。この子はウチでしばらく面倒をみることになったキャスターちゃんです」
キャスター……?
クラスも違うしやっぱりオルタだな。間違いない。
じゃなくて!キャスターだと!?
ウチのアサシンと相性最悪じゃないか!!
しかもアリス先輩がマスターだなんて……。
内心穏やかなじゃない状態で混乱していると、
その瞳は
「よろしくお願いします、おにいちゃん。ホントはちがうんだけど、今はキャスターって呼んでね」
可愛らしい声。
けれどその雰囲気はどこか妖しさを纏っていた。
なんとなく、イヤな感じだ。
「あ、ああ。よろしく。俺は谷栞 勉」
「そう、ならツトムおにいちゃんね」
年相応の無垢な笑顔を浮かべる。
けれどその笑顔すらどこか不気味だった。
「あら?ツトムおにいちゃん、ちょっと手を見せてくださらない?」
「え? うんどうぞ」
キャスターが小さな両手で俺の右手を掴みマジマジと見る。
どうしたんだろうか?
「ここ、どうしたの?」
示された場所を見ると、そこにはカットバンが貼ってある。
昨日料理するときに間違って切った傷だ。
「ああ、それは昨日ちょっと包丁で切っちゃって」
「そう……痛そうね」
キャスターは心底同情した表情を浮かべ、いたわしそうにカットバンの上から傷を撫でる。
なんとも可愛らしい様子だ。
「けれど、変ね?」
「ん?何が?」
「ツトムおにいちゃんはあんなにも勤勉に神に祈っていたのに、怪我をするだなんて」
よくわからないが、キャスターの様子が変だ。
なにか、なにかがヤバイ気がする。
「だって、我らが神のご加護があれば、怪我なんてするはずがないでしょう?
だって、あんなに勤勉に祈っているのに、神のご加護がないはずなんてないでしょう?」
背筋が急速に冷たくなっていく。
本能が警笛を鳴らす。
死にたくなければ、ここから逃げろと。
こんな小娘突き放して逃げだせと。
「ああ、わかったわ。わかってしまったわ」
逃げようとするが、いつのまにか教会の出口と俺との間にアリス先輩が陣取っていた。
逃げ道を塞がれていた。
キャスターが俺の右手を両手で掴んだまま、上目遣いで俺を見る。
その瞳には光が一欠片すらなかった。
まるで事実を追求する裁判官のように。
まるで悪を憎むセイギのミカタのように。
まるで遊びに熱中する子供のように。
「貴方───魔女ね?」
───宣告を述べた。
「そう、谷栞くんは魔女だったのですか。
ああ、非常に、非常に残念に思います。
しかし、魔女をのさばらせておく事は出来ません」
アリス先輩が語る。歌うように。
俺を見る碧色の瞳はまるで無機質なガラスのようだった。
「キャスター。その魔女を殺しなさい」
おもちゃのような
「判決を下す。汝の罪状は魔女であること。死をもってその罪を償え」
少女の判決とともに突如現れた絞首台。
魔女を殺す道具。死の具体化。死刑の担い手。
そして、その縄は俺の首へひとりでに絡みつき───
「──死刑、執行」
少女の声が朝の清廉な教会に響いた。
本編では触れる予定はないのでこの場で補足しておくと、主人公の死に戻りには特に設定がありません。
SNでも士郎がタイガー道場通してループしてるとも言えるし、だいたいそんな感じです。