FGOキッズが型月世界に転生した末路 作:夜未
二話同日投稿です。
キャスターによる宣告の効果はすぐに現れた。
ザワザワと騒がしかった廊下が、別のベクトルへ騒がしくなる。
そう、キャスターの
彼らにとっては、突然目の前に怪しげな女武士が現れたこととなる。
実を言うと、キャスターが虚空から現れた時点でそれを目撃してしまった生徒たちが騒いでいたのだが、セイバーに向けられる喧騒はそれの何倍も上を行っていた。
「誰?あんな先生いたっけ?」
「いや、こんな先生いねぇよ。こんなバインバイン美女がいたら男子ネットワークで流れて来るはずだ」
「なんか変な格好してね?」
「ここ学校だよな?」
「コスプレイヤー?なにかイベントでもあったっけ?」
「バカ、そもそもコスプレイヤーが学校にいること自体がおかしいだろ」
「不審者?タカハシさんってやつ?やばくない?」
「フホーシンニュウじゃん!先生呼んで来る?」
キャスターの宣告の効果は出ているのだろう。
現に、俺はセイバーに激しい猜疑心を抱いているのだから。
けれど、それは猜疑心止まりだ。
怪しい人物、その程度にしか感じない。
周りの生徒たちも同様だと、会話から読み取れた。
「認識されている?キャスターのスキルの効果か……厄介だな」
一文字神父が忌々しそうに表情を歪めた。
魔術を使って透明人間になっていたはずなのに、突然注目の的になる。一文字神父からしたら予想外のことだろう。
これだけの数の人間に視認された状態で戦闘などした日には、神秘の秘匿なんて不可能だ。
だが、これは俺が望んだ効果ではない。
白昼夢では、まるでゾンビのような群衆に襲われたのだ。
仲間が死のうと御構いなし、その屍を踏み砕いて襲いくる狂気の群衆。
俺はアレを想定していたのだ。
確かに、周りの生徒達から監視されているというのは抑止力にはなるかもしれない。
もし俺があちら側の立場なら、ここは戦闘を諦めて撤退する。
しかし、相手はあの一文字神父だ。
毒殺不意打ち騙し討ち、どんな手でも使ってくるあの一文字神父だ。
この程度の抑止力では、彼が少し覚悟を決められただけで無意味になる。
だからこそ、俺は焦っていた。
どうして群衆にならない?
セイバーに感じるのは、何とも言えない不審さだけ。
白昼夢とこの状況では一体何が違う?
思い出せ、思い出せヤシオリツトム。
あの時、群衆はどうして襲いかかってきた?
あの時───
人殺し。指名手配犯。ひったくり。暴行犯。
そういえば、白昼夢の中では俺は犯罪者として扱われていた。
そこから彼は叫ぶのだ。
「神の名の下に、
その罪に真贋は必要ない。
疑わしきは罰せよと言わんばかりに、群衆は襲いかかる。
つまり、罪が必要なのだろう。
叫べばいい。
冤罪でもいい。真実でもいい。
「人殺し」としでも叫べば、それだけで生徒達は群衆と化すだろう。
そうと分かればあとは簡単だ。
大きな声を出すために息を目一杯吸い込もうとして、硬直する。
───本当にそこまでする必要はあるか?
一文字神父が抑止力に負けて撤退する可能性だってあるじゃないか。
やめた方がよくないか?
だって、群衆となれば、
そこまでする必要は、ないんじゃないのか?
躊躇う。そんな思考が浮かんでしまって、躊躇う。
ここで何もしなくても、もしかしたら助かるかもしれないという誘惑。
人殺しになる必要は、ないかもしれないという甘い誘惑に襲われる。
その結果もたらされたのは静止だ。
一文字神父も静観を決めており、俺もまた動かない。
よく言うなら睨み合い、悪く言うなら膠着状態。
だが、その中でもっとも早く動いたのは、アリス先輩だった。
「そう、魔女なのですね?」
一歩、俺の後ろから歩み出る。
「キャスターちゃんが言うのならそうなのでしょう」
一歩、歌うように言葉を紡ぎながら。
「…さなければ」
一歩、その顔は見えなかった。
「魔女は、殺さなければ」
一歩、そうして
真っ直ぐにセイバーを睨み、演説のように声を上げた。
「この女は、魔女です!人
ざわりと、生徒たちの雰囲気が変わる。
生徒たちのセイバーを見る目が、変わる。
それを受けて、ずっと黙っていたセイバーが口を開いた。
「
「おい!誰か先生呼んでこい!」「はあ?先生呼んでどうするんだよ。
「───え?だ、だから
「いやァ!こっち見た!」「怖いよぉ……」「みんな!男子が前に出て女の子を守るんだ!」「生徒会長!?俺死にたく無いんですけど!?」「クッソォ!くるから来やがれ!」「動いたぞ!剣を抜くかもしれないから気をつけろ!」「そんなこと言ったって!」「数て押せば!」「囲め囲め!」
セイバーの言葉は喧騒の濁流によって押し流される。
誰一人その言葉を聞き入れることもなく、セイバーへ敵意を向ける。
生徒たちの視線は、セイバーを畏れていた。
まるで、凶悪な殺人鬼に遭遇したように。
まるで、獰猛な肉食獣に遭遇したように。
まるで、
「君たちもこちらに!」
「え?俺たちは……」
「いいから!」
俺とアリス先輩は人混みに飲み込まれ、輪の中にはセイバーと一文字神父のみが残る。
責め立てるような生徒たちの喧騒が二人を覆う。
たった一人の
ああ、その構図はまさに
「
セイバーが声を荒げる。
その姿には少し前まであった超然とした態度は、影も形も残っていなかった。
例えるならば、泣き喚く幼い少女のような雰囲気。
或いは、ソレそのものだった。
地団駄を踏むように怒りを込めて振り下ろされた腕によって、風が周囲を吹き荒らす。
「セイバー。落ち着くんだ 」
「違う!違う!
「警戒しとけよ!何をしてくるかわからないからな!」「武器!バット持って来たぞ!」「ナイス!これであの頭おかしい女を叩きのめせる!」「あんなバケモン女に、そんな武器で勝てるか?」「な、無いよりはマシだろ」「剣防げるかもしれないだろ!」「誰か早くあの女を殺してよぉ!」
一文字神父が声をかけようと、セイバーが正気に戻ることはない。
ざまぁみろ。と、脳内で誰かが呟いた。
罪人は苦しむべきだ。と、脳内で
……俺は今何を考えていた?
周りを見渡す。
たった数分で気づけば人だかりは膨れ上がり、皆が一様にセイバーに敵意を向けている。
害意を、向けている。
正気じゃない。
今さっきのセイバーの動きを見ればわかるはずだ。
ただ手を振っただけで風を吹き荒らす相手に、勝てるはずなんてない。
なのに、人だかりは戦意を見せていた。
俺もまた、一瞬前はセイバーに憎悪に近いナニカを抱いていた。
異常だ。異様だ。異色だ。異例だ。
───俺は、この状態を識っている。
「
諳んじるように、アリス先輩が述べる。
その声は喧騒の中でも妙に響き、人だかりの中へと浸透して行った。
「そうだ!」と誰かが叫んだ。
「
「
「殺せ!」と
脳に直接言葉がねじ込まれる。
思考回路が悲鳴をあげて変形する。
セイバーを殺せ。悪を殺せ。魔女を殺せ。セイバーを殺せ。悪を殺せ。魔女を殺せ。セイバーを殺せ。悪を殺せ。魔女を殺せ。セイバーを殺せ。悪を殺せ。魔女を殺せ。セイバーを殺せ。悪を殺せ。魔女を殺せ。セイバーを殺せ。悪を殺せ。魔女を殺せ。悪を殺せ。魔女を殺せ。悪を殺せ。魔女を殺せ。悪を殺せ。魔女を殺せ。悪を殺せ。魔女を殺せ。悪を殺せ。魔女を殺せ。悪を殺せ。魔女を殺せ。悪を殺せ。魔女を殺せ。悪を殺せ。魔女を殺せ。魔女を殺せ。魔女を殺せ。殺せ。殺せ。殺せ!殺せ!
「
幼子のように這い蹲り、同情を誘うかのように涙を流す。汚らわしい。魔女の言葉に意味などない。耳を傾けてはならない。悪魔に命を持っていかれたくなければ、魔女はすぐに殺さなければならない。
コツン、と足音が聞こえる。
何事かと思うと、そこには
ああ、そうだ。彼女こそが裁判官。邪悪なる魔女に誅罰を与える審問官。魔女にとっての処刑人。
彼女によって
殺せ、誅せ、
「くっ、セイバー!令呪をもって───」
視線を向けると、そこには神父服の男。
ああ、彼は一体誰だったか。そんなことはどうでもいい。
魔女を助けようとする?
なんたる悪行か。なんたる悪業か。
魔女に助力する人間などいない。
いるとすれば仲間の魔女か、契約した悪魔だ。
止めなければならぬと理解した。
どういうわけか、
俺が、行かねばならぬと理解した。
「アアアアアアァァァア!!!」
悪魔へと真っ直ぐに飛びかかる。
狙うは腕。彼は袖の中に小型銃を隠し持っている。
それを奪えば───まて、なぜ俺はそんなことを識って、いや違うどうでもいい。
今はそんなこと、どうでもいい。
魔女は殺さなければならない。悪魔は殺さなければならない。
「なっ!?」
瞠目する悪魔の隙を盗み、その袖から小型銃を引きずり出す。
小型銃を手の中に収まると、触れたこともないはずなのに妙に手に馴染んだ。
そのまま両手で構えて悪魔へ向けた。
悪魔の表情が苦々しく歪み、俺たちは時が止まったように睨み合う。
もし彼がその鎧甲から蹴りを繰り出すと、俺は死ぬだろう。いいや、俺だけではなく周りの
もし俺が引き金を引けば、悪魔を殺せるだろうか?いいや、悪魔たるものそのくらいは防げるかもしれない。ただし、こんな人が密集した場所では、跳弾によって死傷者の一人や二人出るかもしれない。
どちらが動いても、周りの人間を巻き込む可能性があった。
───だからどうした?
魔女は狩らねばならない。悪魔は殺さなければならない。
そして、引き金に手を掛け───
「判決を下す」
歓声。
「汝の罪状は魔女であること」
怒号。
一気に
『『『殺せ。殺せ。その女を殺せ。でなければ、おちおち寝ることもできない!!』』』
魔女が意地汚くも泣き叫ぶ。
『ああ、違うのです。私はアナタたちの為に!許してください……私をどうか───』
全てが遠くのことのように声が聞こえる。
最高潮にまで白熱した
目の前にいる悪魔の心情も、俺にはわからない。
酷く歪んだその表情の意味が、どうしてもわからない。
「死をもって、その罪を償いなさい」
告げられる最終判決。
ならば次は決まっている。
魔女の背後に、絞首台が現れた。
付き添うように。突き落とすように。
フラフラと縄は不気味に揺れ、蛇のようにひとりでに魔女へと食いつく。
今日一番の歓声をあげる
「死刑、執行」
キャスターが
虚空へと振り下ろしたはずなのに、何かを打ち抜いたような小気味の良い音が鳴り響いた。
「───
そうして
話の解説は次話のあとがきでする予定なので、ここにはセイバー版源頼光のステータスとキャスターの宝具詳細を載せておきます。
頼光は知名度補正で強化されたステータスです。
【真名】源頼光
【クラス】セイバー
【属性】秩序・善
【ステータス】
筋力A 耐久B 敏捷A
魔力A 幸運D 宝具C
【クラススキル】
対魔力B
騎乗A+
神性C
狂化C
【スキル】
無窮の武練A+
魔力放出(雷)A
神秘殺しA
【宝具】
ランク:C
種別:対人宝具
レンジ:1〜2
最大補足:1人
天下五剣の一口として知られる太刀であり、頼光が生前愛用した一振り。
この刀自体が怪異に対する特攻を持っており、
ビームを撃ったり出来るわけではないが、頼光が使う武器として最適化されており、頼光の魔力放出の効果を何倍にも跳ね上げさせる。
この宝具を真名解放した頼光は、雷そのものと化し雷鳴と共に敵を蹂躙する。発動中は筋力、俊敏のパラメータに++補正。
キャスター
【宝具】
ランク:A+
種別:対魔女宝具
レンジ:3〜50
最大補足:1人
玩具のような小さな
しかしその正体はこの世全ての魔女狩りという概念そのもの。
判決を降すことで発動し、魔女狩りに用いられた凡ゆる処刑道具を具現化し、対象を処刑する。
その処刑は攻撃ではなく呪いの一種であり、
どんな処刑道具も具現化することができるのだが、キャスターは好んで絞首台を使用している。
セイバーの宝具は自バフ宝具です。
あと「雷そのものと化し〜」とか書いてますけど、別に雷天大壮するわけじゃないです。速さの比喩表現です。でもその速さは本物なので、下手なサーヴァントだと雷鳴が聞こえたと思ったら三枚に降ろされていた、なんてありえます。
因みに、セイバーなので刀以外の武器は縛ってます。
キャスターの宝具は明らかに不相応な感じですが、これもちゃんと理由を考えてあります。いずれまた説明します。
ご感想お待ちしてます。