FGOキッズが型月世界に転生した末路   作:夜未

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監督役

気づけば夢心地で目の前の木製の扉を眺めていた。

意識がはっきりしてくると、どうやらここは教会の前らしい。

なにをしようとしていたんだっけと少し考え、アリス先輩に会いにきたのだと思い出す。

迷いもなく扉を開けようとして、右手のカットバンが目に入った。

ついさっき見た白昼夢だとこれが理由でとんでもない目にあっていたな。

しばし悩んでカットバンを剥がし、魔術で治療を施すことにした。

我が家に伝わる魔術は錬金術である為に、治療にはとてもじゃないが向いているとは言えない。

臓器移植のような手段をとるため、体への負担が大きいのだ。

だがまあ、薄皮一枚程度ならなんとかなる。

いつもならそんな面倒くさい事なんてしようとも思わないのだが、さっき見た白昼夢もあり、多少手間を掛けてでも治しておくほうが良い気がしたのだ。

 

そして、俺は教会のドアを開いた。

 

 

 

 

「じゃあ、アリス先輩。また今度にでも」

「ええ、谷栞くん。またね」

 

校舎についた為にアリス先輩と別れる。

アリス先輩は手を振って名残惜しそうに別れてくれるので、なんだか恋人の逢引みたいで楽しい。

これがもし人が多い時間帯なら野郎どもの嫉妬の視線に優越感を覚えられるのだが、残念ながら今の時間は朝練に来るなら遅く、普通に来るなら早すぎるという微妙な時間帯だ。

校舎前に俺たち以外の人影はない。

アリス先輩と一緒に登校しているなんて自慢しても、目撃者がいない為に嘘つき扱いされるのが非常に遺憾である。

 

そういえば、教会内で起きた出来事は白昼夢とほとんど違いがなかった。

右手の怪我から始まる云々こそなかったが、アリス先輩と一緒にサーヴァントがおり、それがアビゲイル・オルタであることも完全に同じだった。

昨日も似たような白昼夢を見たが、あれは一体なんなのだろう。

まさか未来予知だったり?

そんなはずないか。

 

考え事をしながら歩いていると、気づけば教室に着いていた。

ああ、今日も憂鬱な1日が始まる。

 

 

 

 

「きりーつ!きおつけー!れー!」

 

やる気のない学級委員長のあいさつと共にホームルームが終わり、放課後が始まった。

ガヤガヤと騒がしくなる教室を早めに去る。

あの若い喧騒の中にいるのも悪くないのだが、今日の俺には予定があるのだ。

 

今日の予定とは、即ち!

聖杯戦争の……えっとなんだっけ、まとめ役?監督役? なんかそんな感じのやつに報告に行かなければならないのだ。

よくわからないけど、聖杯戦争の運営側らしいし、たぶんFGOでのロマンみたいなもんだろう。

 

 

そんなこんなで今朝訪れたばかりの教会に戻って来ました。

腕時計で時間を確認する。

3時35分。

先方が指定した時間ぴったりだ。

相変わらず立て付けの悪い扉を派手な音を立てて開くと、そこには今朝は見かけなかった人影が一つ。

 

細身を包む神父服に、瓶底のような丸いメガネ。

そして瞳の見えない狐のごとく細い目。

 

「やぁ、約束の時間にココに来たということは、どうやら無事マスターになれたみたいだね」

 

俺を聖杯戦争に誘った張本人。

一文字(イチモンジ) 秋詠(アキヨミ)がヘラヘラと笑ってそこにいた。

 

「ということは、君で5体目。そして最後のサーヴァントだ」

「五体目で最後?聖杯戦争って7体でするんじゃないの?」

「へぇ、詳しいね。本来の聖杯戦争ではそうなんだけどね、どうやら今回は5体で限界みたい」

「ふうん、そういうもんなの?」

「そういうもんだよ」

 

5体かぁ。

俺のアサシン(酒呑童子)とアリス先輩のキャスター(アビゲイル・オルタ)以外にはあと三体。

いろんなサーヴァントにリアルで会えるって楽しみにしてたのにあと三体かぁ。

ネロとか邪ンヌとかエドモンとか以蔵さんとかあってみたいサーヴァントは沢山いるのに。

 

「ところでヤシオリくんはどのクラスのサーヴァントを召喚したんだ?」

「あー、俺はアサシンだな」

「そうなんだ。君ならてっきり三騎士を狙うと思ってたのに意外だよ」

 

一文字神父と雑談に興じていると、教会中に響く不快音。

毎朝聞きなれた、扉を開ける音だ。

振り返って入り口を見ると、そこには顔に大きく刺青を入れたガラの悪そうな男が立っていた。

教会という場所に最も似合わないと言っては過言ではないほど浮いている。

何者だろうか?

 

「あれ?君との約束は一時間後の筈なんだけどな」

「まァまァまァ、そう(カテ)ぇこというなよ。時間なんざそう気にするべきことじゃあねえだろ?世界には大切なモンが他にもあるって」

 

刺青の男は一文字神父に歩み寄り、背中をバンバンと叩きながら(ノタマ)う。

刺青の男の馴れ馴れしい態度にも一文字神父は嫌悪感を覚えていない。

どうやら二人は既知の仲であるようだ。

 

「はぁ……それで、何の用だい?ご覧の通り取り込み中なんだが」

「大丈夫大丈夫すぐ終わるって」

 

刺青の男が俺を一瞥してそう言った。

 

「そこの坊主(ボーズ)も悪いな、邪魔しちまって」

「急ぎじゃないんで、気にしなくてもいいですよ」

「そうか、じゃあ遠慮なく」

 

男の手元でナニカが煌めく。

蛇のように動く男の手。

 

そして、俺の首はナイフによって切り裂かれた。

 

「───ッ!?」

 

気道を切り裂かれ、悲鳴すら出せない。

どれだけ叫ぼうとしても出るのは、首元から鳴るヒューヒューという空気の漏れる音。

膝をついて首を抑える。

どくどくと流れる血。

指の間から抜けてゆく空気。

命が、溢れてゆく。

 

「聖杯戦争が始まる前に、ライバルを()っちまっておく方がおトクだと思ってよォ

この時間帯に詐欺神父のとこ来たら他のマスターがいるかと思って見に来たんだわ

いやァ、まさか本当にいるとはなァ。

(オラ)ァつくづくついてる男だぜ」

「詐欺師とは人聞きの悪いな、ぼくは敬虔な神の信徒だというのに。それに、今ここで他マスターを殺すのはルール違反の上に、神の家で人を殺すとは何事だい?」

 

神父と男の会話が聞こえる。

この二人は何を言ってるんだ?

いま正に目の前で人が死のうとしているのに。

いま正に目の前で人を殺したというのに。

 

「そう怒るなって、いや別に怒ってないなその顔。まァお前だって儀式は早く完成した方が嬉しいんだろ?俺が殺せば殺すほど早く終わるんだからむしろ感謝してほしいね」

 

日常会話でもするように、何気なく会話する。

助けてくれと、神父に手を伸ばそうとしてもその手は届かない。

 

「まったく。今回は見逃すけど、次はないからな」

「リョーカイ リョーカイ、次は気をつけるとするわ」

 

次第に二人の声すらわからなくなった。

次第に血の感覚すらわからなくなった。

次第に息の仕方すらわからなくなった。

次第に自分の事すらわからなくなった。

意識が溶けて、なにもかもが、もう、わからない。

 

そして、俺は──────。

 




ネットで色々調べてたらapo時空の亜種聖杯戦争は最高五騎しかサーヴァントが召喚されてないみたいな事が書いてあったんで、サーヴァントが5騎しかいない亜種聖杯戦争にすることにしました。

あと今回雑さが目立ちますけど、どうか繋ぎ回だと思って許してください。
次こそはサーヴァント出します。
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