FGOキッズが型月世界に転生した末路   作:夜未

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名前

「───アス、テリオス」

 

それは小さな呟きだった。

夢心地の俺が無意識に発した本当に小さな声。

特に、サーヴァント同士がぶつかっているこの場においては、戦闘による衝撃音にかき消されて決して誰にも聞こえるはずがない音だった。

 

しかし、偶然にもある怪物の耳へとその声は届いた。

 

途端に戦闘音が止む。

今の今まで嵐の如く猛威を奮っていた巨体がピタリと静止していた。

アサシンが此処ぞばかりに攻める。

たが、彼はいくら斬られようと抵抗すらしない。

アサシンの猛攻によって白い巨体に次々と傷が増えていくが、その頑丈さから決め手にはなり得なかった。

 

「オイ!バーサーカー!どうした!?」

 

刺青の男は己のサーヴァントの尋常ならざる様子を感じ取り、声をかけるがバーサーカーはその声にも反応を返さない。

どれだけ攻撃を加えようとビクともしない巨体に嫌気がさし、アサシンは一度マスターの元まで引き下がった。

 

「あかん。あちらさん固すぎてラチがあかへんわ。どないする旦那はん……旦那はん?」

 

声をかけられて急速に覚醒する。

またも白昼夢を見ていたようだ。

 

「あ、ああ、なんだっけ?」

「もう!せやから固すぎてどうしようもないって、ゆうてんの。隙だけはあるんやけどなぁ」

 

アサシンに指さされてバーサーカーを見る。

白い巨体は両手に持っていた斧を投げ出し、頭を抱えて苦しんでいるようだった。

 

「ぼくの、なまえ、は……チガウ!オレハ!ぼくは…っ!」

 

何かブツブツと呟いているのが聞こえてくる。

どうしたんだ?

白昼夢ではこんな事は起こっていなかったはずだ。

白昼夢と現実が一致しないという初めての経験に俺も微かに焦る。

 

「おい!バーサーカー!チッ、仕方ねぇ。オイ坊主(ボーズ)!今日はここまでだが、次は容赦しねぇからな!」

「はぁ?逃すと思ってんのか?」

「逃亡はオレのただ一つの特技だからな、逃げさせてもらうぜ」

 

刺青の男が懐から取り出した機械をいじる。

 

その瞬間、廃工場に響く爆発音。

サーヴァントによる戦闘音とは違う、爆薬によって生み出される破壊の音。

廃工場に前もって爆弾を仕掛けておいたのだろう。

激しい砂埃とともに廃工場が崩壊を始める。

クソッ!こんな狙われやすい場所で呑気にいられたのはこんな仕掛けがあったからか!

 

「はぁ!?ふざけんなてめぇ!」

「ハハッ、悔しかったら次からはステージは自分で用意することだぜ、ガキ!」

 

偉そうに語る男の声が遠のいて行く。

しかし、崩れ去る廃工場の中それを追うのは自殺行為に相違ない。

 

「くぅぅ……撤退するぞアサシン!」

「はいな」

 

こうして俺の初陣は引き分けに終わった。

 

 

 

 

 

遣る瀬無い感情を抱えて深夜の街をアサシンと二人、歩いて帰る。

 

「元気だしなはれ旦那はん。(イクサ)ゆぅのはこないなこともあるもんや」

 

そういうアサシンは戦闘直後だというのに、盃で酒を転がすように飲んでいた。

やけに甘ったるい酒の匂いがこちらまで流れてくる。

 

「ん?なんや旦那はん。コレが飲みたいんか?」

 

自身の青い瓢箪を振ってチャプチャプと鳴らす。

酒呑童子を倒すために源頼光が用いたと言われる伝説の酒。

曰く、神から与えられたとも言われている。

そして、俺が酒呑童子を召喚する上で用いた触媒もこの酒の入れ物たる瓢箪だった。

あれ?よく考えたらあの瓢箪って酒呑童子よりも源頼光の方が縁があるな。

いや、別に、頼光さんもそれなりには好きだし強いからそっちが来ても別に問題はなかったのだが。

 

とにかく、あの酒は伝説にも登場するものすごい酒なのだ。

それはもうすごいものなのだろう。

 

正直、かなり興味がある。

俺の魔術は錬金術だと言ったが、より詳しく言うならば酒精を媒体とした錬金術である。

そんな魔術を使う魔術師なのだから、当然伝説の酒とやらには興味がある。

 

少しだけ飲んでみようかな?

いやでもまだ未成年だし……。

前世でも結局成人出来ずに死んでしまったので、酒を飲んだ経験というのがまだ一度もない。

前世今世含めた人生で初めて飲む酒が伝説の酒というのはいかにも凄そうじゃないか?

 

「なんや、そんなに悩まんでもええのに」

「……今はいいよ」

「そう?」

「あ、でも家に着いてから少しだけ分けてくれると……」

「ふふ、ええよええよ。なんなら一晩中酒盛りでもする?」

「いやそれは遠慮しとく」

 

なにせ酒呑って無限に酒飲みそうだし。

というか召喚してから暇さえあれば彼女は酒を飲んでいる。

推しと一晩中語り合うのは非常に魅了的だが、それが相手が酒呑で、酒を飲みながらとなると流石に怖気づいてしまうのも仕方がない。

 

「いけずやなぁ」

 

そういうアサシンは大して残念そうでもなく、カラカラと笑っていた。

なんともつかみ所のない性格である。

 

「そいや現代の酒ってのも興味あるんやけど、旦那はんなんかもってへん?」

「ああ、魔術用のやつがいくつかあるから後でわけてやるよ。名酒って言われてるのもそれなりにあったはず」

「ほんとぉ?うれしいわぁ」

 

アサシンとダラダラと話しながら二人で歩く。

刺青の男には逃げられたし、一日かけて何度もエゲツない白昼夢を見た。

けれど、この思い出だけで今日は悪くない一日と思えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あら?(クサ)(クサ)いと思って来てみれば、こんなところに虫がいるじゃありませんか」

 

目の前で酒呑の首が飛んだ。

笑っていたそのままに、そこだけが時空がズレたかのように。

雷鳴と共に現れた襲撃者は、音すらなくアサシンの首を切り落とした。

 

「うし…おんなぁ……!」

 

空を浮くアサシンの顔が憤怒に染まり、忌々しげにその襲撃者を睨みつける。

 

だが、襲撃者は首を断ち切るだけでは飽き足らず、死に体のアサシンに追撃を食らわす。

腕が飛び、足がちぎれ、胴が別ち、胸を突き刺す。

1分も経たずアサシンをバラバラ死体にした襲撃者は最後に雷によってその全てのパーツを焼き切った。

異様とも言える所業だった。

異常とも言える所業だった。

 

目の前で巻き起こる嘘みたいな光景に、なんの行動も取れずに唖然とする。

そして、アサシンとのパスがぶちりと切れ、ようやく自体に頭が追いつく。

だが、俺が逃げ出そうとするよりも襲撃者が動く方が遥かに早かった。

 

「ああ、虫の主人ですか。あのような虫を行使するとは貴方も鬼畜の類でしょう」

 

トッ。

胸を突く軽い衝撃。

視線を向けると、そこには刀が生えていた。

痛みすら感じない業前で、心臓を貫いていた。

 

「名乗り遅れました。(ワタクシ)はセイバー、源頼光(ライコウ)。悪を誅すものです」

 

襲撃者(源頼光)は、凍った瞳でそう告げた。

 




今回の補足、バーサーカーはアステリオスではなくミノタウロスとして呼び出されています。ですが、彼の性質的に反応してしまい、あんなことになってました。
そして酒呑があんなに簡単に倒されたのは、頼光との相性もありますが、神便鬼毒を飲んでいる+首を狙った攻撃という伝説を再現した状態であった為です。

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