FGOキッズが型月世界に転生した末路 作:夜未
デート
あたりに響く爆発音。
崩れゆく廃工場。
俺はその様子を、廃工場の外から眺めていた。
「ギリギリやったね。さすがのうちも冷や汗かいたわ」
隣にいるアサシンがそう話しかけてくる。
「ああ、そうだな」
まだ意識が朦朧としていた。
神が如し雷光が、脳裏に焼き付いて離れない。
だめだ、アレは。
理性で考えるまでもなく、本能に尋ねるまでもなく、直感でそうわかった。
「どしたん旦那はん?また夢心地?」
「……大丈夫」
大丈夫なはずがない。
とにかく逃げなければ。
考えろ。考えろヤシオリツトム。
どうやったらあの英雄から逃げられる?
どうやったら死なずに済む?
人混みに紛れる?まさか、東京じゃあるまいしこんな田舎町はもう眠ってしまっている。
正面から対峙する?
考えろ。考えろヤシオリツトム。
アレは一体何に反応していた?
酒呑童子の気配に反応して現れたはずだ。
なら、もし酒呑童子を隠せば?
「なぁ、アサシン」
「んぅ?なんや?」
「極限まで敵にバレないようになる方法ってあるか?」
「そやなぁ、気配遮断と霊体化の合わせ技ならそうそうバレへんのちゃうやろか」
「それをやってくれ」
「なんでぇ?それやとおもろないやん。霊体化してると酒も飲めんしぃ」
「それでもだ。頼むアサシン」
アサシンと見つめ合う。
彼女は口を尖らせて不満げだった。
「あー、じゃあ後でうちにある名酒軒並みくれてやるから。飲みたかったんだろ?」
「あれ?なんで旦那はんうちが今の酒に興味あるってしってはるの?」
「え?お前が言ったんじゃなかったか?」
「そぉやっけ?」
アサシンが首を傾げる。
あれ?もしかしてこれって白昼夢でした会話だっけ?
「まあ、そこまでゆぅんならやったるわ。とびきり美味しい酒、期待しとるよ」
声だけ残してアサシンがスッと姿を消す。
マスターたる俺は魔力パスによってアサシンが側にいることを確信できるが、第三者なら見破ることは不可能に近いだろう。
それでもなお心配だった為、白昼夢で通った道を避け、大きく遠回りして帰る。
家に着くまで警戒し続けていたが、襲撃者は現れなかった。
朝日に目が覚め、制服に着替えてから気づく。
「そういや今日は休みか…」
確か、創立記念日かなんかで週半ばにして今日は休みなのだ。
姿見で自分の制服姿を確認し、少し悩む。
わざわざ着替えたのにまた脱ぐと言うのは些かめんどくさい気がしたのだ。
「1日くらいはいいか」
こうして今日は制服で過ごす休日となった。
キッチンへ入り、まずはポットへ水入れ沸かしす。
数分待ち、湧いたお湯でインスタントのカップ味噌汁をつくり、昨晩のうちに予約しておいた炊きたての米をお椀によそう。
そしてごはんの上に冷蔵庫から取り出したツナ缶を雑に乗せ、醤油とマヨネーズを一回し。
これで今日の朝食の完成である。
朝っぱらから自分でメシを準備しなければいけないのが
一人暮らしの特に滅入るところだが、変に凝ろうとしなければなんとでもなる。
無音だと寂しくなるので、朝食をリビングまで持っていき、テレビをつけた。
テレビでは話題の俳優が浮気を〜とか、原因不明の意識不明者が〜とか、大して興味もわかないニュースが流れている。
「いただきます」
気に入っているビームセイバー箸を使って一人で黙々と食べる。
これがオレの日常だった。
けれど昨日からそれは少し変わっていた。
「あらぁ、今日も随分と貧相なもん食っとるなぁ」
いつのまにか隣に座っていたのは酒臭い少女。
暗殺者のサーヴァント、酒呑童子だ。
彼女が飲んでいるのは昨日とは違い、我が家秘蔵の名酒だった。
「そんなん酒の肴にもならんと思うけど」
「現代人の朝は“そんなん”で十分だからな」
「そぉなん?あ、そうや旦那はん。うち今日も町ぶらぶらしとくから、自分の身は自分で守ってな?」
人目の多い昼に仕掛けてくるやつもいないだろう。
そう考えて俺はツナ丼をかきこみながら頷いた。
木製の扉が軋む音の気づき、アリス先輩が俺をみる。
休日とはいえ平日なのだから居るかもしれないと教会へ来てみれば、アリス先輩は本当にいつも通り祈っていた。
信仰には休みという概念がないのだろうか。
「あら、おはようございます谷栞くん」
「おはよう。ツトムおにいちゃん」
当然、アリス先輩の側にはキャスターの影。
幼い少女らしい無垢な笑顔のはずなのに、なんとも悍ましいものを見た気分になる。
「おはようございます。アリス先輩、キャスターちゃん」
「谷栞くんは今日もお祈りに?」
アリス先輩が微笑みかけてくる。
うむ、実に顔がいい。
「ええ、まぁ」
「ツトムおにいちゃんは勤勉なのね。とってもいいことだわ」
キャスターが微笑みかけてくる。
うむ、顔
「そういえばアリス先輩。今日は休みじゃないですか。それで良かったらですけど、一緒に遊びに行きませんか?」
「えっと、そのごめんない。今日はモデルの仕事が入ってて」
「そ、そうですが……」
祈りのあと、いつもなら一緒に学校へ登校するタイミングで、思い切ってお誘いをしてみた。
だが、無情にも答えは否。
美人のアリス先輩とお出かけするいいチャンスだったのに……。
とても悲しい……。
「あ!じゃあ私の代わりにキャスターちゃんにこの町を案内してあげてくれませんか?この子まだこっちに来たばかりで色々見てみたいそうなんです」
悲しむ俺をみかねた先輩が代替案を出してくる。
視線を下げるとニコニコと笑って居るキャスターが目に入った。
笑顔のはずなのに、少女は不気味な雰囲気を醸し出して居る。
「え、それは……」
「お願い、できませんか?」
「もちろんオーケーですとも!キャスターちゃんの面倒は俺が見ときます!」
結論、男は美人の上目遣いに弱い。
教会から始まり、高校、本屋、雑貨店。
コンビニ、スーパー、喫茶店にごはん処。
そして最後に商店街を二人でぶらつく。
時間はもう昼前に迫っていた。
「へぇ、この
町の見どころを一通り案内し終わると、キャスターはそんなことを感心した風に言った。
案内している途中も、なにかを見つけると「アレはなに?」「コレはなに!?」と大はしゃぎだったキャスターは、俺の中で大きく印象が変わっていた。
今もなんとなく不穏な雰囲気を放っているが、慣れてしまえば気にならない。
もはやただの愛らしい女の子である。
「あ、ねぇツトムおにいちゃん。あれはなに屋さん?」
キャスターが指差したのは、騒がしい音が外まで聞こえてくる娯楽の宝庫。
「ああ、あれはゲームセンターだな」
「げーむせんたー?」
「遊ぶ場所っていうかなんていうか……まあ、遊んでみればわかるよ。ほらコレあげるから遊んできなさい」
財布からなけなしの500円をキャスターに与えてやる。
遊ぶ場所と聞いてからすごいウズウズしてたから思わず甘やかしてしまった。
「ありがとうツトムおにいちゃん!」
笑顔でお礼を言ってゲームセンターに走っていく。
うむ、可愛らしい。
キャスターがゲームセンターに入店したのを見届けたタイミングで、背中がちょんちょんとつつかれる感覚。
誰だ?と振り返ると、そこにはこの数日で見慣れた小さな鬼。
酒呑童子が立っていた。
好きに別行動しておくと言っていたのに、一体どうしたんだろうか?
「なぁ、旦那はん。うちもアレで遊びたいんやけど」
そう言って右手でゲームセンターを示し、左手を差し出して金を催促してくる。
サーヴァントってみんなゲームセンターに興味を示すのか?
というかこいつそのためだけに出てきたのか?
「はぁ、お前もかよ。わかったわかった。キャスターと同じく500円な」
「おおきに」
チャリンチャリンと100円玉を5枚。
キャスターと合計で1000円と地味に出費がでかい。
今月はあまり贅沢できそうにないな。
「ねぇ、ツトムおにいちゃん。とっても可愛いお人形さんがあったからもう一回…………そちらはどなた?」
幼い声に振り向くと、キャスターが帰ってきていた。
500円使い切るの早すぎたろ。
「その人、なんだか変だわ……。
けれどその様子がおかしかった。
いや、アサシンを見ておかしくなり始めたといった方が正確か。
無垢な少女らしい笑顔が剥がれ、冷たい瞳が現れる。
「そう、そういうことね。そうなのね。わたし、ツトムおにいちゃんのこと大好きだったのに。ああ、悲しい。かなしいわ」
「お、おい?キャスター?どうした?」
「なんやこの子、サーヴァントやったん?うちというものがありながら浮気するなんて旦那はん冷たいわぁ」
「悪魔との契約は魔女の証。つまり───」
いつかの白昼夢が脳裏に蘇る。
背筋が凍り、冷や汗が全身から吹き出る。
止めなければ。
そうわかっているのに動けない。
「───あなた、魔女だったのね」
そしてキャスターは、宣告を述べた。
直後、大剣がキャスターを真っ二つへと両断する。
キャスターだった二つの肉塊がバランスを崩してグチャリと倒れた。
「ふふ、かんにんなぁ?マスター殺されちゃあかんさかい」
長めの上に一話一死のノルマ未達成と今回は少々アレな回になってしまいました。
いや、よく考えたらキャスターが死んでるから一話一死のノルマは達成してるのかな?
キャスターの様子について不穏だとか不気味だとか悍ましいだとかボロクソ言ってますが、これは彼女のスキルの効果です。イメージはめだかボックスの過負荷みたいな感じ。
ご感想お待ちしてます