FGOキッズが型月世界に転生した末路 作:夜未
倒れ臥した、少女だったモノ。
斬り伏せたのは、巨大な
一拍おいて理解する。
アサシンがキャスターを殺したのだ。
「なっ」
理解はできる。
理解はできるが、頭が追いつかない。
「どしたん、旦那はん。そない驚いてもうて」
大剣を引っさげたままアサシンが尋ねてくる。
その顔は心底不思議そうだ。
「だって、なんで、そんな…」
胃の腑から酸っぱいものがせり上がってくる。
これ以上言葉を重ねたら吐いてしまいそうだった。
「なんでもなにも、ねぇ?この子が攻撃しようとしたかい、ざしゅっとな?」
大剣でキャスターをつつきながら答える。
その死体は早くも消え始めていた。
わかっている。
あのままだと俺は確実に死んでいた。
けれど、けれど。
人を殺すというのがこんなにも───
耐えきれなくなり、うずくまって吐き出す。
今朝食べた朝食だけでなく、恐怖も、罪悪感も、悲しみも。
全て、全て口から流れ出ていく。
「なんやだらしないなぁ。そないな有様やと生き残れへんよ?」
アサシンの声が頭上から降ってくる。
彼女はうずくまった俺を
その表現は見ることも出来ない。
その時、親の背中なにかが飛んできた。
コツン、と軽い音を立てて俺にぶつかり、地面に落ちる。
拾って見るとそれは小石だった。
拳大もない本当に小さな小石が飛んできたのだ。
「ぁ?」
奇妙な現象だ。
小石が一人でに飛ぶはずがないのだから。
飛んで方角を視線で辿る。
そこにいたのは───小さな男の子だった。
母親に片手を握られ、微笑ましく歩いていたであろう幼い少年だ。
冷や汗が頬を流れる。
今は昼時。ここは商店街。
平日といえど、人通りは多い。
そんな場所の中で俺たちは何をした?
アサシンはキャスターに何をした?
気づけば俺たちの周りには大きな人だかりが出来ていた。
空気は凍りついており、全ての人が俺たちを凝視する。
道のど真ん中でこんなことが起きたのだ。
当たり前である。
だがしかし、群衆の様子は異常でもあった。
その表情には恐怖というものが一欠片もない。
たったいま目の前で人が殺されたというのに、その顔に映るのは一様に憤怒の表情だった。
義憤からくる怒りで染まっていた。
「ひとごろし!!」
男の子が叫んだ。
その声をキッカケとしてザワザワと声が上がり始まる。
「こいつら人を殺したぞ!」
「神の戒めに逆らった!」
「捕まえろ!犯罪者だ!捕まえろ!」
「悪魔だ!あの角を見てみろ!悪魔に違いない!」
「捕まえろ!殺せ!悪魔を殺せ!首を晒せ!」
「あの目を見ろ!こいつら俺たちも殺すつもりか!?」
「あの剣を見ろ!俺たちも殺らなきゃ殺られるぞ!」
「魔女だ!こいつらは魔女に違いない!」
「魔女せいで人が死んだ!魔女が人を殺した!」
「捕まえろ!捕まえろ!捕まえろ!」
「お前のせいで!魔女のせいで俺の息子は死んだんだ!」
「魔女がばら撒いた病のせいで沢山の人が死んだんだ!」
「あいつのせいだ!魔女のせいだ!ぜんぶ全部
「「「魔女を殺せ!魔女を殺せ!魔女を殺せ!」」」
義憤は憤怒に。
憤怒は害意に。
害意は殺意に。
目まぐるしく感情を変え、群衆は叫ぶ。
金切り声ように喚き、声を揃えて「殺せ」と騒ぐ。
異常だった。異様だった。
異色だった。異例だった。
「な、なんだこいつら」
「生きとった頃を思い出すわぁ」
俺と同じく群衆から殺意を受けているはずのアサシンは、カラカラと笑っていた。
楽しんでいるようにすら見える。
「「「魔女を殺せ!魔女を殺せ!魔女を殺せ!」」」
殺意は膨れ上がるように高まり、そして、臨界点を超えた。
輪を作るように俺たちを囲っていた群衆か崩れるように襲いかかる。
男、女。子供、大人、老人。
そんな垣根は関係なく、ありとあらゆる人々が津波ように押し寄せる。
「ほいっと」
それを、アサシンがまとめて切り裂いた。
大剣による斬撃は一般人など容易く刻み、吹き出た血によって全てが赤く染まる。
俺も、アサシンも、地面も、まだ生きている群衆も。
しかし、それでも群衆を止まらなかった。
津波のように、とりとめもなく襲いかかる。
はじめに俺たちを囲っていた人数よりも明らかに増えていた。
「あー。こらぁ、マズイわ」
アサシンが冷や汗を垂らす。
群衆が止まらない。
叩き斬られた同胞の死体を踏み潰しながらもなおも止まることはない。
アサシンは踊るように群衆を切り刻んで行くが、その波が止まることはなかった。
襲いかかり、切り刻まれ、地に伏し、踏み潰され、ミキサーにかけたようにぐちゃぐちゃになる。
目の前で凄まじい早さで命が散っていった。
道が、町が、赤く紅く染まってゆく。
俺はその光景を無様にへたり込んで見ていた。
「なんだこれ……なんだよこれぇ!」
キャスターは死んだはずだ。
俺は生き残ったはずだ。
死んだのはキャスターのはずだ。
だというのに、俺は窮地に立たされていた。
湧き続ける無辜の群衆。
切っても切っても終わらない無限の殺戮。
それは永遠に続くかと、思われた。
だが、何事にも終わりはある。
終わりは、空から降ってきた。
空を破る衝撃音。
輝く雷光。轟く雷鳴。
絵の具をぶちまけたように赤く染まったアスファルトに、その人物は突き刺さるように降り立った。
「なんや、オマエも来とったんか。牛女」
「サーヴァントになってまで民草を虐げるなんて……。その悪、誅します」
鬼と英雄の戦闘は凄まじいものだった。
大地を砕き、空を割り、稲妻が走れば毒によって相殺される。
互角の力を振るう二体のサーヴァント。
それは正に伝説と言われるにふさわしい破壊の嵐だった。
その余波は暴風と化して町を荒らす。
無力な人間は、その暴風に抗うすべを持たない。
群衆の一部が吹き飛ばされ、包囲網に開いていた。
それに気づいた俺は、自らの幸運に感謝し、その穴を走り抜ける。
「アサシン!あとは任せたぞ!」
声をかけると、アサシンは俺を一瞥し頷く。
この場に残ったとしても俺にできることはない。
むしろ残ることによってアサシンの弱点となりうる。
そう考えた上の判断だろう。
俺はなおも残る吐き気を抑え、必死に逃げ出した。
商店街から十分離れてからへたり込み、肩で呼吸する。
商店街の方向を確認すると、激しく雷か猛っているのが見える。
まだ決着はついていないようだ。
ガンドも打てない雑魚魔術師の自分に出来ることはない。
せいぜいがパスを通じてアサシン目一杯魔力を送り込み、神に祈ることくらいだ。
「なぁ、あんた大丈夫か?」
道の端っこに座り込んでいた俺を不審に思った老人が話しかけてきた。
その表情はあの群衆たちとは違い、ホッとする。
「ああ、ちょっと疲れてて」
「誰かから逃げてるのか?」
「え?まあ、そんな感じかな」
たしかに俺はあの群衆から逃げてきた。
なんでわかるんだ?
俺の答えを聞いた老人は我が意を得たりと言わんばかりに頷く。
「やっぱりなぁ。あんた警察から逃げてんだろ?」
「は?」
「いやぁ、あんたの顔どっかで見たことがある気がしたんだよ。アレだ。交番に貼られてる指名手配犯だ」
「え?ええ?」
「こんなところで息を上げて座り込んでるなんて、誰がどう見たってやましいことがあるって言ってるようなもんだからな」
「いや、俺は」
「悪いことは言わねぇから自首しなよ、兄ちゃん」
「だから!俺は指名手配犯なんかじゃねえって!」
なんなのだこの状況は。
何かがおかしい。
俺が指名手配犯だと決めつける老人の瞳。
その瞳にあの群衆の影を見て、思わず逃げ出す。
「まてぇ!誰か!指名手配犯が逃げたぞ!」
「だから俺は!」
そこから言葉は続かなかった。
老人の声を聞き届けた正義感に燃えた人々が俺を全力を追ってきたのだ。
ついさっき逃げてきたばかりで、体力もロクに回復していなかった俺は容易に捕まってしまう。
強引に組み伏せられ、押さえつけられる。
気づけば周りには多くの人が集まっていた。
ガヤガヤと人々の話し声が聞こえてくる。
「こいつ何をやったんだっけ?」
「指名手配犯じゃなかったか?」
「いやいや、ひったくりだよ」
「殺人と聞いたが?」
「痴漢じゃないの?」
「いや違う!こいつはお爺さんに暴力を振るったんだ!」
「その孫も殺したんじゃなかったか?」
「なんて悪いやつなんだ!神様もきっとお怒りだろう!」
「神の代わりに我らが裁かなければ!」
「「「
人だかりの誰かが俺を蹴る。
それを皮切りに人だかりが、いいや、新たな群衆が俺を嬲り始めた。
腕を殴られ、腹を蹴られ、足をへし折られる。
罵詈雑言を叫びながら、怒りの表情で群衆は俺に私刑を加える。
全身が痛かった。
全身が熱かった。
いつ終わるのかわからない地獄。
やめてくれと、冤罪だと懇願しても、その声はヒートアップした群衆には届かない。
そして、俺が最期に見たのは、群衆の一人が鉄バットを振り上げる場面だった。
やっと能力の一端が出たのでアビゲイル・オルタのステータス乗っけときます。
【真名】不明 (主人公はアビゲイル・オルタと仮称)
【クラス】キャスター
【属性】秩序・善
【ステータス】
筋力E 耐久E 敏捷E
魔力D 幸運C 宝具A+
【クラススキル】
陣地作成E-
狂気B〜EX
【スキル】
信仰の祈りC
魔女裁判EX
魔女宣告EX
無辜の怪物B
【宝具】
不明
オリジナルスキル 魔女宣告EX
指名した一人を魔女と宣告する。宣告されたものは周りの人間から無条件に猜疑心を抱かれ、その勢いは時間と共に加速してゆく。最終的には憎悪を向けられるようになり、無辜の群衆に襲われる。
何か罪を犯すことで時間経過関係なく、群衆に襲われるようになる。
また、宣告された者は魔女特性を得る。
このスキルの効果はキャスターの生死に関わらず1時間持続する。
このスキルが今回の死因です。
商店街では目の前で人を殺すという罪を犯したから、逃げた後はただ座り込んでいただけで疑われてリンチに会いました。