FGOキッズが型月世界に転生した末路 作:夜未
「うち今日も町ぶらぶらしとくから、自分の身は自分で守ってな?」
ツナ丼をかき入れようとして、むせる。
あれ?俺いま朝食食べてたっけ?
咳が収まってから机の上を見ると、そこにはカップ味噌汁にツナ丼。
お茶はないのに、酒は置かれている。
ちぐはぐな印象を受けるが、朝食を食べているのと酒を飲んでいるのは違う人物なのだから当たり前だ。
意識がはっきりしてくると、ついさっき自分で朝食を準備して、いま正に食べていたところだったと思い出した。
白昼夢、いや時間的には寝ぼけていただけか?
酒を飲んでいる少女を見る。
申し訳ない程度に紫の着物を巻きつけた半裸。
額から伸びる鋭い角。
大江山に語られる大鬼、酒呑童子だ。
酒呑童子に少し待つように告げて、席を立つ。
向かったのは自分の部屋に置いてある勉強机。
鍵が掛かっている引き出しを開き、中に安置されていた封筒をとる。
封筒の中には一万円。
俺が再来月に発売する最新ゲーム機を買う為に貯めていたへそくりだ。
次はタンスを開けて酒呑が着れそうな服を探す。
しかし、どうにもサイズが合いそうにない。
仕方ないと押入れをひっくり返し、中学生時代の服を取り出す。
その中から適当に見繕ってリビングへ戻った。
「どしたんそれ?」
持ってきた服と一万円を見て酒呑が驚く。
「その格好じゃなにかと目立つだろ。あとこの金は小遣いだ。これ一回きりだから大切に使えよ」
「ええ……、うちにそれ着ろゆぅん?」
指差したのは俺が持って着た服。
ぶっちゃけ
「半裸でうろつくよりはマシだろ?」
「いやぁ、流石にそらぁ……」
「嫌なら小遣いで服を買えばいいから」
「うぅん……そないゆぅなら」
まだ躊躇いが見える気もするが、酒呑はおとなしくジャージを受け取る。
これで服は解決だろう。
「その角ってなんとか縮めれないのか?」
「むりに決まっとるやん。旦那はんは手ぇ縮められるんか?」
「そりゃ無理だ。簡単な幻術でも使えばなんとか誤魔化せるかな」
とはいえ俺の本領は錬金術。
幻術なんて本当に基礎の基礎くらいしかできない。
角を透明にするなんて不可能だ。
出来るのはせいぜいあんまり意識しなくなる程度だろうか。
まあ、余程注目を受けない限りそれでも十分だろう。
「あ、ねぇツトムおにいちゃん。あれはなに屋さん?」
「ああ、あれはゲームセンターだな」
「げーむせんたー?」
「遊ぶ場所っていうかなんていうか……」
今朝の白昼夢と全く同じシチュエーション。
全く同じセリフ。
全く同じキャスターの表情。
遊びたくて仕方がない様子のキャスターに激しい既視感を覚えながら会話をする。
わかっていたはずなのあれよあれよとこの場面に辿り着いていた。
「まあせっかくだし、遊んで行こうか」
「ほんと!?早く行きましょ!」
キャスターにぐいぐいと手を引かれながらゲームセンターへ向かう。
パスを通じて探っても、近くにアサシンの気配はなかった。
「わぁ!このお人形さんすごく可愛い!」
キャスターがゲームセンターで一目散に興味を持ったのはクレーンゲームだった。
キャスターが張り付いて覗き込んでいる透明な壁の向こうには、デフォルメされた羊の人形が鎮座している。
確か最近やっているニチアサ魔法少女のオトモだっただろうか?
もこもことした毛がとても可愛らしい。
「やってみるか?」
「え……いいの?」
「ここはそういう場所だからな」
「ありがとう!ツトムおにいちゃん!」
財布から100円玉を5枚取り出し、キャスターに手渡す。
心底嬉しそうに受け取ったキャスターは、意気揚々とクレーンゲームに百円玉を投入した。
「なんでぇ……」
しかし、ゲーセン初体験の少女に商品をくれるほどクレーンゲームは易しくない。
案の定キャスターは撃沈していた。
彼女は恨めしそうにクレーンゲームを見るが、無機物たるクレーンゲームにはなんの効果もない。
キャスターの不機嫌オーラで俺が少し冷や汗かいたが、それだけだ。
「うう……ツトムおにいちゃぁん…」
涙目になったキャスターが俺を見る。
うむ、愛らしい。
「しょうがないな。こういうのにはコツがあるんだよ。よく見てろよ」
さて、前世でゲーセン通いしてた実力を見せてやろうじゃないか。
「ありがとうおにいちゃん!」
そう言ったキャスターはギュと人形を抱きしめる。
とても幸せそうな顔だ。
一方俺は、人形の原価と取るのに掛かった金の差を考えて苦しんでいた。
まさかあそこまで苦戦すると思っていなかったとはいえ、予定の倍以上金をかけてしまった。
正直今月の食費が若干怪しい。
あとでアサシンから金少し返してもらおうかなぁ…。
「わたし、このお人形さん大切にするわ!」
だけどまあ、ここまで爽快に喜んでくれるならそれ相応の価値もあったのかもしれない。
人形を抱きしめて離さないキャスターと共に教会を目指す。
アリス先輩のモデルの仕事は昼頃には終わるそうだから、昼過ぎに教会で合流、その後3人で昼食を食べに行く約束だったのだ。
商店街から教会をまっすぐ目指すとなると途中で墓地を通ることになる。
あの墓地は昼であろうと時が凍ったように静かで、その不気味な雰囲気からこの町の子供たちは絶対に近づこうとしない事で有名だ。
幼い少女であるキャスターも例にもれず怖がるかもしれないと心配していたが、どうやら人形に夢中で気にしていないらしい。
「おやお嬢ちゃん。こんなところでお散歩かい?」
だがしかし、その歩みは別の要因によって止められることとなった。
墓地の半ば程にて出会ったのは激しく既視感を覚えるとある人物。
既視感も当たり前だ。俺はこの人物を知っているのだから。
FGOでもお世話になった事がある星5のサーヴァント。
その名は───
「やぁん!ダーリンしっぶーい!かっこいー!惚れ直しちゃう!でも絶対浮気はしないでね?」
「しねぇーよ!?流石に
───オリオン。
露出度の高い白いドレスを纏った
FGOで見たまんまの奇妙なコンビだった。
「なっ!あなた、アーチャー!?」
「ウンウン。いいリアクションをありがとう、可愛らしいお嬢ちゃん。そちらはマスターかな?」
「ううん。違うわダーリン。だってあの子とパスが繋がってないもの」
俺一人を置いてきぼりにして3人は会話を進める。
どうやらキャスターと
その状況を利用して必死に考える。
目の前にはキャスターとアーチャーという敵サーヴァント二体。
側にアサシンはいない。
俺自身の戦闘力は皆無。ガンドでも撃てたら話は変わるが、そんなモノ俺には使えない。
端的に言って、詰んでいる。
ただ一つ生きる道があるとしたらマスターとバレずに一般人としてこの場を乗り切ること。
運がいい事にちょうど目の前で、キャスターのマスターであることをアルテミスが否定してくれた。
そしてキャスターは俺がマスターであることを知らない。
光明がみえた。
このままシラを切ろう。
そう決めようとして……
「でも、あの人も倒しておいた方がいいわね」
アーチャーが矢をつがえる。
メカチックな大弓と、白く輝くエネルギーの矢。
「おにいちゃん!逃げて───」
「気の毒ながら」
絶叫めいたキャスターの声。
俺を指差し、呑気に語る
それらが耳に届くよりも早く俺は逃げ出そうと構え、
「
まともに狙いもつけず、めちゃくちゃな構えで射られた筈の矢によって正確に眉間を貫かれた。
少し前に芋ジャージ着た酒呑のイラスト見たことあるなーってことで本作でも酒呑は芋ジャージ。
これには流石の酒呑も涙目。
死に戻りパワーによってキャスターが復活しました。
これによって聖杯戦争の終わりがまた遠ざかりましたが、実は彼女には役割が準備してあるのでそれまでは死にません。
あと自分を二度も殺しているのに主人公がキャスターと仲良く出来るのは、主人公がバカだからです。
未だに死に戻りを白昼夢と思い込んでるとかどうしようもねぇなって思いながら見守ってあげてください。
今回の話によってサーヴァント全員が揃いましたので、ここで一覧しときます。
セイバー 源頼光
アーチャー オリオン
アサシン 酒呑童子
キャスター アビゲイル・オルタ(仮)
バーサーカー ミノタウロス
あとオリオン&アルテミスはFGOの設定通り神性を失っており、通常のサーヴァント程度しか馬力が出てません。