僕達、学生にとって本当の夏の始まりは、この長期休暇だ。
たったの37日間、けれど、とても大切な40日間だ。
中学2年の夏休み、僕達はある計画をたてていた。大人が聞けば、馬鹿にされるだろう。だけど、同級生からは、英雄視されるに違いない。
中学2年生は生涯で一度しかないし、そのたった一度の夏休み初日、僕の家に集まったメンバーは、名前のわりには根暗な光君と、ひょろひょろとした体付きの剛君の二人、そして、僕だ。この語り口で分かると思うけれど、僕ら三人は地元の中学校で、それはそれは酷い目にあっている。
学校というのは、閉鎖的だからこそ、僕らのような人間を作ることは容易く、ましてや、中学校となれば尚更だ。この一年で僕が学んだことは、中学生は、人に残酷なアダ名をつける天才だということ。
あまり言いたくはないけれど、三人の内、一人のアダ名は「ヨゴレ」だ。
六畳の部屋に顔を揃えた僕らは、軽く挨拶を交わした後で、それぞれの場所に落ち着いた。僕はベッドに、光君は机に、剛君は本棚に背中を預けていた。光君に視線を移せば、途端に顔を逸らしてしまう。その気持ちは僕にも分かる。誰が口火を切るのかと警戒しているんだ。こんなとき、光君は特に口を開こうとしない。それは、僕も同じなのだけど、視線を泳がせたりはしないから、まだマシなほうだと思う。
やがて、剛君が細い顎をあげた。
「誰が最初にやる?」
短い声に、僕と光君は身体を強張らせた。剛君は、自分の役目は果たしたとばかりに、腕を組んで膝を抱えている。彼は卑怯なんだ。発言さえすれば、あとは時間がどうにかしてくれると信じている。
光君にも似たような一面があるけれど、僕ら仲間内においても、そんな機会は少ない。けれど、この場では、僕よりも早く剛君に続けば、最悪の事態は免れると考えたのだろう。一息吸い込んで光君が言った。
「豊君は......どうかな?僕なんて、きっと失敗しちゃうし......」
突然の発言と見えるだろうけど、僕にとっては、想像通りの展開だった。卑屈な態度の裏には、きっとなんらかの算段がある。それが、彼にとっての処世術なのだけど、こんなことを平然とやってのける辺りが、ズルいところだ。
僕は、小さく吐息をつくと、剛君を見た。
「僕は、言い出した剛君が一番にやるべきだと思うよ」
「俺なんか、もっと無理だろ。学校でも、どんなアダ名で呼ばれてるか知ってるだろ?」
「それでも、僕よりはまともじゃないか......」
「ヨゴレもケガレも大差ないだろ」
唐突に新作始めます