英雄達の夏休み   作:宇宙人と呼んで

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第6話

中学生と高校生には大人になりたいか、なれるっていう決定的な差がある。初めての夜遊びで、どうして、こんなに胸が踊るのだろうか、その理由がわかった。お父さんやお母さんは、駄目だ、と言うけれど、夜の独特な空気は、僕らに少しだけ背伸びをさせてくれているんだ。

押さえ付けられない自由な空間、大人の目がある抑圧された空間、人生の節目となる受験を乗り越えた高校生とは違って、大人になれない僕ら中学生は、そんな曖昧な場所で暮らしてる。

大人への一歩を、英雄への二歩目を踏み出せるかもしれない。大人と子供にある曖昧な境界線を越えられるかもしれない。

僕は、箱から顔を出していた一本を抜きとってから、剛君に箱を返した。光君は、そんな僕を驚愕の顔つきで見ている。

 

「豊君、それ、どうするの?」

 

ほんの少しだけ残った罪悪感を拭うために僕は、光君を見ないで言った。

 

「一本だけだよ。興味もあるし……」

 

「でも、その一本を吸ったら、止められなくなるんだよ?」

 

剛君が被せて言う。

 

「そんなの迷信だろ。それに、俺達の小遣いじゃ、毎日、五百円なんか払えない、吸えなきゃ吸わなくなる」

 

気付けば、剛君の口元には、煙草が咥えられていた。あとは、ライターを着けて先を燃やすだけだ。

 

「剛君、本当に吸うの?」

 

「当たり前だろ。ここで吸わなかったら俺の覚悟が無駄になる。吸わないなら黙ってろよ」

 

語尾を強めた剛君に睨まれれば、光君はもう何も言わなくなった。僕らのことを考えてくれていた光君には申し訳ないけど、僕も正直、剛君と同じ意見だった。やっと腹を括ったのに、これ以上、余計なことを口にされてしまうと、決心が鈍ってしまう。

剛君の手元で、小さな火が灯る。いよいよ、この時がきたんだ。心なしか、剛君も動きが固い。

僕が固唾をのんで見守っていたそのとき、僕らを隠していた茂みが大きく揺れて左右に開かれた。あまりにも突然すぎる事態に、僕らは揃って声も出せずに、ただただ息をのむ。

 

「そこ、代わって!」

 

聞こえたのは、女性の鋭い声だった。

勢いに負けて、最初に飛び出た光君に続き、僕と剛君も順にベンチへ向かう。そのすれ違いの途中、女性が僕らに言った。

 

「誰かが来ても、ここには君達以外に居ないって言って!分かった?必ずだからね!」

 

ただの首振り人形と化した僕らを確認して、女性は夏場だというのに黒のロングコートを頭まで被り、茂みの奥で体を縮めた。完全に夜に溶け込んでいて、注意深く探りでもしなければ見つからないだろう。

いや、そんなことより、気にしなくてはいけないことがある。さっき、彼女は、ここには誰も居ないと言え、そう伝えてきた。

それはつまり……

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