「おい!お前ら!」
「うわあああ!」
悲鳴をあげたのは、光君だった。その場にへたりこみそうですらある。まあ、それは僕らも同じだったけれど。声の方へ振り返れば、黒のTシャツとジーンズ、そして、バンダナを顔に巻いた六人組が公園の入口で手招きをしている。
ここにいるのは、僕らと、夜に同化したかのようなコートを着込んだ女性だけだ。間違いなく、呼ばれているのは、僕達三人だろう。
六人全員の髪色は実に鮮やかだった。茶色が二人に、黒も二人、金髪と赤が一人ずついる。背丈はバラバラだけど、体つきから、五人は高校生ほどだと思う。あと、体型が近い一人は、恐らく僕らと同い年くらいだ。いや、その一人には、なんだか見覚えがある。
「来いってんだろうが!さっさと来いや!」
ツンツンの黒髪が声を荒げると、僕らの足が自然と駆け出す。情けない話しだけど、恐怖っていうものは、竦んだ身体すら強制的に動かすんだ。近付くにつれ、徐々に六人組の輪郭が、はっきりしてくる。それと同時に、人生最悪の瞬間を迎えたのは、僕だけじゃないだろう。
見覚えがあるところじゃなかった。夏休みに入って見ていなかったけれど、茶髪の男は、いま、僕らがもっとも会いたくない少年の一人、新山一毅だ。学校では二年生の不良グループの中心的存在で、剛君や光君、そして、僕にとっての最大の敵だ。新山一毅も僕らに気付いたのか、口を丸く開けている。
気不味い雰囲気の中、僕らを呼んだ黒髪の前で並ぶと、黒の髪をオールバックで纏めた男が剛君、僕、光君の順で見た。
「自分等、中学生?」
短い眉毛に迫られた光君は、何度も首を縦に振った。次いで、整髪料の匂いを漂わせながら、僕に訊く。
「ここに、女が一人来なかった?」
ドキリ、と心臓が跳ね上がった。予想は外れていなかったけど、まさか、こんな不良グループに追われていたなんて、ツイてないにもほどがある。
僕が、本当のことを言うべきか逡巡していると、オールバックの男は泳いだ視線を辿って、彼女が隠れている茂みを一瞥する。
「なに?あそこに、なんかあんの?」
「えっ……あ、いや……その……」
「え?はっきり喋ってくんねえと、わかんねえんだけど?」
まるで喉に蓋でもされたみたいに言葉が出てこない。
漫画やアニメでこんな場面が流れては想像して、頭の中にカッコ良い台詞がいくらでも湧いてくるのに、いざ、この状況に直面すると、目を合わせることもままならない。僕らは英雄になるための一歩を踏み出そうとしているのにだ。このままでは、これまでと変わらない、けど、先に進むことができない。