卑怯な言い方じゃないか、そう告げようと声を出そうとする。そこに大型トラックのヘッドライトが女性の顔をハッキリと照らす。
切れ長の睫毛に、大きくて、くりっ、としているけど垂れ目、そんなアンバランスを纏めている小顔、幼さの残る輪郭を際立たせる黒い髪は肩で揃えられていて、とても似合っている。こんなに可愛い女性と、僕はどこかで会っている気がした。いや、確実だ、確実にどこかで会っている。
逡巡する僕の肩を叩いたのは、剛君だった。
「おい……豊、この人って……」
「剛君も会ったことがあるの?」
剛君は首を横に振って言った。
「会ったことはない……けど、見たことはある」
歯切れの悪い剛君に首を傾げていると、今度は光君が僕に言った。
「豊君……本当に気付いてないの?」
「えっ?どこかで見たことあるなぁっとは思ってたけど……」
「それはそうだろうね……だってその人には、僕らみんなお世話になってるもの」
女性に対して、世話になっている、なんて僕みたいな中学生にとって、一人で、という暗喩と同じだ。僕の脳裏に戦争映画のパッケージにそぐわない、杜撰な隠蔽工作を施されたDVDのラベルが浮かんだ。
頭を鉄棒にぶつけたような強い衝撃に襲われ、立ち眩みをしそうになりながらも、僕は女性の顔を思い出す。
「も……もしかして……朝倉真美……さん?」
「あ、やっぱり知ってた?」
あっけらかんとした返事のあと、困ったように頬を掻く仕草、それだけで僕は堪らなくなった。映像の中でだけだけど、黒いコートの奥に隠されたグラマーな肉体を知っている。
下半身に熱が集ってきているのを自覚してしまった僕は、ズボンのポケットに手をいれて布の上から抑えつけた。想像力だけは逞しいのが嫌になる。
「ねえ、話しを戻しすけどさ。どうなの?泊めてくれないの?」
突然、朝倉真美に本題を引き出され、口ごもっていると、剛君が僕の代わりとばかりに手を挙げた。
「泊まってってくれよ!なんなら、俺達三人の家を回ってくれても……」
「ちょっ!剛君!?」
「なにを言ってんの?」
非難じみた声をあげた光君と僕の首に剛君の腕が回されて、強引に真美さんに背中を向けさせられると、耳元で囁く。
「お前ら、これはチャンスなんだって気づかないのか?」
「チャ……ンス?」
光君が怪訝そうに言うと、剛君は僕らだけに聞こえるように声を低くする。
「俺達は、何のためにここにいる?彼女を作る為の自信をつけるためだろ?けど、さっき新山と会った。その意味が分かるか?」