僕と光君は眉を八の字にして答えられなかった。
新山君と僕らに共通することはなんだろうか。それに、不随するらしい意味とはなんだろう。出来の良いナゾナゾの解答を待ってる人みたいな顔をしていた剛君は、我慢が利かなくなったみたいだ。
「新山は、俺達がしていなかったことを既にしていたんだ。つまりさ、アイツには彼女がいる可能性がある。なら、俺達は次のステップに進まなきゃいけないんだよ。そして、そのチャンスは、今、そこにある」
両手の親指が、ぐっ、と外側に曲がる。そこにいるのは、朝倉真美だ。
光君が不安を強めた瞳を剛君に向けた。
「その、次のステップって……なに?」
間髪入れず、自信満々に剛君が言った。
「セックスに決まってんだろ」
僕と光君の頬が紅くなる。そして、言った本人の頬も紅潮していた。ちらり、と朝倉真美を一瞥すると、暑さの限界を迎えたのか、コートのジッパーがお臍まで下がっていて、蒸れた女の子の匂いが漂ってくる。
甘いチョコレートが少しだけ饐えた臭いって感じだ。このときから、僕は少しだけ変わった性癖を持つようになった。
「DVDに出演してるような人なら、そこまではいかないにしても、お返しには期待できるだろ?」
剛君の言葉はどうかと思うけど、期待が膨らんでいたから強く否定は出来なかった。下半身でしか語れないのか、と一蹴されるだろうけど、悪い方に流れる気がしない。性癖というものが、どれだけ精神を支配しているのか分かったけれど、大人になれば強まるのだとすれば、ちょっとだけ恐くなる。
生唾を呑む音が光君から聞こえた。
「も……もしも、何もなかったら?」
「何か起こるように努力すれば良いだけだろ。豊、そうだよな?」
急に話題を振られても困る。それに、朝倉真美を泊めるのは僕の役目になるはずだ。
気楽な提案を安易に受けるのは、中学生には気が重くて、心の中にある天秤が大きく左右に揺れている。
すると、僕の背中に、ずしり、となにかがのし掛かり、柔らかな山が二つ押し付けられた。弾むように縮んでいる。
「ねえ、結局、どうするの?泊めてくれるの?」
「はい……泊まっていってください」
自分の口を咄嗟に塞ぐも、手遅れだ。
光君は目を丸くして、剛君は握り拳になっている。
「本当?ありがとう!よろしくね!」
朝倉真美の喜色に満ちた声音が聞こえ、僕は溜め息を一つついた。
たった二つの山に理性を失ってしまいながらも、その感触を思い出してしまう。
やっぱり、大人になるのが少し恐いや……
次回より章を変えます