剛君の眉間に、深い皺が出来た。
ここまでで、察しの良い人は、なぜ僕らが学校で酷い目に合っているのか、分かってくれたと思う。そう、ここにいる三人は、どこかしらに卑怯な面を持っている。その上、それぞれが自覚をしていない。いや、多少なりとも気づけている僕は、二人よりは頭が抜けているはずだ。
剛君と僕の会話以降、黙然とした時間が流れ始める。答えは決まっているのに、何時間も途方にくれてしまうのが僕らだ。誰かが意を決っするものだと決めつけて待ち続けてしまう。
不思議な光景だろうけど、どうにも躊躇ってしまう。誰よりも先んじるのは、とてつもない勇気が必要なんだ。
気まずさに耐えきれず、僕はテレビを点けた。今は昼間なだけあって、やっている番組は、ニュース番組が中心で、気分転換には向いていない。チャンネルを回し、母親世代が好きそうなドラマでリモコンを置く。
それは、とてもありふれた恋愛ドラマだった。恋愛の縺れ、壮大でもない人間ドラマ、ここに僕らが目指す形がある。
僕らは中学生、それも多感な14歳、そして、イジメからの脱却を望んでいる。解放されるには、英雄になるしかないのだ。それには、多くの同学年が達成していないことをするしかない。
もう、分かっただろうか。僕らは、この夏休みで彼女を作ろうとしている。
期限は短いけれど、夏の学生はとにかく開放的になる。この時期こそが狙い時、そう昂然と胸を張っていたのは、剛君だったのだけれど、今となっては、尻込みしてドラマに釘付けになってしまっている。
いざという時に踏ん切りがつけない、それは大人も子供も変わらないだろう。
あっという間の一時間は、すぐに僕らを引き戻した。
「......良いよなぁ、ドラマの主人公ってやつは簡単に彼女が出来てさ。あーーあ、俺もカッコよくなれれば、こんなに悩むことないのにな」
「体験できるとも思わないけど、僕はこんな恋愛はごめんだよ」
剛君の感嘆に、光君が遠慮気味に返せば、短い舌打ちが聴こえた。僅かな嫌悪感を当てられる。僕と光君が畏縮してしまうには、それだけで充分だ。バツが悪くなったのか、剛君は黙ってしまう。こんなとき、決まって訪れるのは、僕らに共通した苦手な時間だ。
定まらない視線を泳がせていると、あるDVDが目に留まった。
パッケージは、有名な戦争映画だけれど、中身は全くの別物が入っている。どの中学生でも簡単にできる小さな誤魔化しが施された長方形の箱を手に取り蓋を開く。
学校で人気のセクシー女優、朝倉真美の写真がレーベルとして貼られている至極の一枚だ。僕だけじゃないと思うけど、中学生にとってセクシー女優は大きな切っ掛けになる。初恋、性の目覚め、その他諸々のね。