これも何に対しての謝罪なんだろうか。いいや、これは、光君が安心したいだけだ。誠心誠意、君に謝ったよ、という保険を作ることこそが光君には重要なんだろう。
今度は短文で、わかった、と送り返してから、僕は携帯を机に置いて吐息をついた。
「随分、嫌味な返信するんだね」
突然、耳元で聞こえた声に、僕は目を剥いて振り返った。
甘い匂いを残したまま、背中で手を組んだ中腰の態勢で真美さんが携帯の画面を覗きこんでいたようだ。僕は慌てて、スマートフォンに手を伸ばし、電源を押して画面を暗転させる。その動作を目で追っていた真美さんが欠伸を挟んで言った。
「昨夜はありがとね。お陰様で助かったよ」
「あ……まあ……はい……」
僕の口先を濁した返事を聞いた真美さんに、厚かましいついでにと、シャワーを浴びて良いか尋ねられた僕は、すぐさま了承し、風呂場へ案内して、バスタオルを手渡すや、急いで部屋に戻ってクーラーの電源を落とし、押し入れに飛び込むと、扇風機を止め、今度は、水音に耳を立てながら深呼吸をした。
昨夜嗅いだ女の子の香りが胸一杯に満たされ、それでも漏れだした熱と匂いが全身を巡っていき、下半身に集まっていく。ズボンの上から触ってみると、魚みたいに腰が跳ねた。
そこから先は、水音への注意も薄れ、これまでにない刺激への興味に、ただ夢中になった。捏ねたり、握ったり、顔を毛布へ押し付けたり、いろんな事を試す。
今にして思えば、相当に異様な光景だっただろうな。だって、戻ってきた真美さんの顔は、とてもひきつっていたのだから。
※※※ ※※※
気まずい。いや、気まずいなんてもんじゃない。できることなら、全力で走り去ってしまいたい。
あれから、三十分以上が経っているけど、僕は押し入れから出られずにいる。
「おーーい、いい加減出てきなよーー、気にしてないって言ってんだからさーー、ねーーったらーー聞いてるーー?」
真美さんは、椅子に座ったまま、間延びした声を僕に掛け続けている。
「男の子だもん、しょうがないよーー、女の子が家にいたらそうなるもんだよーー、慣れてるからさーー」
僕がこんな場面に慣れてないんだよ、なんて怒鳴れる訳もなく、体操座りの膝に顔を乗せ、押し寄せる後悔を喉の奥で呻きに変えて拳を握り、奥歯を噛み締めた。
あ、ヤバイ、泣いてしまいそうだ。
「もーー、そんなに落ち込まれたら、私だって傷ついちゃうじゃん。ねえ、そこにいつまでもいたって変わらないんだから、こっちでお話しでもしよ?ね?」