そりゃそうだ、僕の身勝手な自慰なんて、真美さんが自分から薦んで、見たい、と口にするなんて思えない。そうなると、一人で傷ついている僕は、なんて馬鹿なんだろうか。途端に、別の恥ずかしさがこみあげてきたけど、この方向なら余裕で耐えられる。
僕は、魔法の言葉を吐きだした。
「ごめんなさい、僕が勝手にしたことなのに……」
ただ、謝罪を言うのではなく、理由をつける。最高の効果を言葉に付け加える、魔法のような話術の接続だ。こうしておけば、光君のように人から突っ込まれることもない。使い処と使い方を間違えれば諸刃の剣となるけれど、小学六年生の頃から研ぎ続けてきた僕の刃は、相手にしか鋭い鋒が向いていない。特に、大人からの説教は簡単に免れる。分かってるなら、それで良いんだよってね。
けど、真美さんから返ってきたのは、予想外なものだった。
「ふーーん、まあ、いいや」
僕に興味の欠片もないような、声でも言葉でもない、鼻から息を抜くような軽い返答だ。
狼狽える僕は、どうにか誤魔化そうとしたけれど、真美さんは顎から右手を放して椅子に座った。
「あ……あの……朝倉さん……?」
「真美で良いよ。さっきも言ったけど、昨日は助かったよ、ありがとね」
氷みたいに冷たい声が、僕の肌に刺さる。
何か気に触ることでもしてしまったのだろうかと頭を巡らせてみても、さっぱりだ。
「君、いつまでそこにいるつもりなの?」
僕は、はっ、として押し入れから出るとベッドに腰掛けて、遠慮気味に訊いた。
「じゃあ、真美さん……で、良いですか?」
真美さんは、一度だけ頷くと、足を組んで沈黙した。訪れたのは、僕ら三人が苦手とする時間だ。今は、僕しかいないし、また余計なことを言ってしまうんじゃないかと尻込みしてしまう。
しばらくの緘黙は、真美さんの空気を裂く問い掛けによって破られる。
「ねえ、君の名前は?」
そういえば、まだ名前も伝えていなかったと思い至る。こんな空気の中で言うのも気が引けるけど、僕はゆっくりと言った。
「は、羽柴豊……です」
不意打ちな質問に、澱みながら返事をすると、真美さんは口の中で、豊君ね、確認した。
「他の二人の名前は?」
「井上剛君と幸田光君……です」
「剛君と光君、あと、豊君……泊めてもらってるのに聞くことじゃないかもしれないけど、どうして夜中に外にいたの?三人とも、夜遊びなんかするタイプじゃないように見えるんだけど」
その質問に、僕はどう答えたものかと逡巡する。すると、真美さんが怪訝そうに目を細める。