言っても良いのだろうか。
一応、今回の件は、僕達三人の秘密だということはないけれど、暗黙の了解みたいな側面はある。
真美さんの目付きは相変わらず怖いし、なによりも空気が悪い。言ってしまいそうだった。もう、喉まできている。そんな中、僕の携帯がタイミングよく震えた。
助かった、と思いつつ、真美さんに断りを入れてから画面を確認する。表示されたのは、さっきLINEでのやり取りを打ち切った光君からのメッセージだった。
打ち込まれた文章は
大変だよ、いま、僕の家に新山君と、いつもの二人がきてた!どうしよう!
僕は目眩を起こしそうになる。悪夢の再来、最悪の事態ってやつは、どこまでも僕らに食い付いてくるらしい。
光君の家はオートロックのマンションだから、マンション内に彼等が入ってくることはないだろう。それに、光君の両親は、今日は休みらしいし、多分、インターホンで応対したのは、お父さんかお母さんのどちらかだったから、新山君も諦めたんだ。となると、次に来るとしたら剛君か僕になる。
いやいや、違う。剛君のお父さんのことを忘れていた。いくら、新山君達だとしても、あのお父さんには関わりたくないはずだ。
僕は光君に、それどれくらい前?、と返しながら立ち上がると、まだ若干、眉をあげていそうな真美さんに言った。
「真美さん、ごめんなさい。いまから僕の知り合いが来るかもしれないから、家から出てもらって良い?」
「……知り合い?それって昨日の二人?」
僕は、首を横に振って早口で言う。
「夜に真美さんを追い掛けていた内の一人に、僕らの同級生がいて……そいつがかこに来るかもしれないんだよ!だから、真美さんも早く準備をして……」
そこまで伝えたところで、光君からの返信があった。僕は、反射のように携帯を持ち上げて画面を見た。そこに打っていた言葉は一つだけ。
三十分くらいまえだよ!
目が点になるって、こういうことなんだろうなぁ……
すっかり、新鮮味を失った情報を映したモニターすらが憎らしく思える。大体、光君は、何をするにしても一呼吸、二呼吸は遅れてるんだ。だけど、この時間のない現状において、愚痴っていても仕方がない。
応急措置にもならないだろうけど、カーテンを閉めていれば、新山君達も出掛けてると勘違いして僕の家から離れるかもしれない。
真美さんに一瞥も送らずに、カーテンに手を掛けると一息で閉じ、僕はベッドに潜り込んだ。
「ねえ、なにしてるの?」
真美さんの声に、布団から顔だけを出して、唇に、ぴん、とたてた人差し指を当てれば、首を傾げながらも頷いてくれた。
最近、東方熱が再燃してきた……