そのすぐあと、数人の話し声が聴こえてきた。この声は間違いなく、新山君と、剛君が金魚のふんなんて呼んでる取り巻き二人、大場直人と白木弘人のものだ。白木君のほうは格好だけは一丁前って風体で、一番、腹が立つタイプで、大場君は新山君と幼馴染らしい。
僕は、カーテンだけでは、光の関係で人がいると分かってしまうかもしれないと、真美さんに押し入れに戻るよう視線を送る。これで完璧、外からは僕らが中にいるとは思われないだろうと、安堵の吐息をついていた最中、新山君が怒声を発した。
「豊ーー!いるんだろうが!出てこいコラァ!」
油断していた僕は、くるまっていた布団を大きく跳ね上げてしまった。けど、声だけは出していない。その後も続く怒鳴り声に、僕は両手で口元を塞いで対抗していた。
やがて、控えめな声が聴こえた。
「一毅君、あんまりデカイ声出さない方が良いんじゃね?周りに家もあるし」
かろうじて聞き取れる弱々しい様子は、白木君だろう。普段は、もっと張っている声も、新山君といるときは低くなる。
「あ?なんだよ弘人、もしかして、ビビってんの?」
「そんな訳ねえじゃん……けどさ、こんな怒鳴ってたら誰か来ちまうし」
「関係ねえよ!誰が来ても殴っちまえば、それで終わりだろうが!弘人よぉ、お前、それでも男かよ?あぁ?」
それっきり、白木君は黙ってしまったみたいで、新山君から僕の自転車があるか見てこいと言われたみたいで、足音が聞こえた。
「なあ、一毅さぁ、アイツらが夜中に公園にいたってマジか?俺、信じられないんだよなぁ」
新山君が不満そうに返す。
「は?俺を疑ってんの?」
「そうは言ってないだろ。ただ……」
「お前がそうでも、俺がそう感じたんだからそうなんだよ!」
大場君に被せた新山君の声は、また熱を帯始めている。少しだけ間を空けて聴こえたのは、大場君の溜息混じりの声だった。
「一毅、B.Gに入ってから、なんか変わったよな?なんつうか……お前と話してる気がしないんだよ。誰かにそう言わされてるみてえな……」
B.G?ビージーってなんなんだろう。
僕がそんな疑問を浮かべていると、足音が玄関へと向かっていった。白木君が戻ってきたみたいだ。
「弘人、どうだった?」
「あ、あったよ一毅君……チャリはそのままだった……」
白木君の報告を受けた新山君は、返す刀で言った。
「で、車はどうだったん?停まってたか?」
「い……いや、そっちは見てきてないけど……」
軽く、パチン、と響いた直後に、なにか重たいものが壁に当たったみたいな、そんな鈍い音がした。そして、新山君が、どこかで耳にした言葉を口にする。