「なあ、弘人、一つ頼まれたら二つ成果を出せって言ったよな?」
この言葉は、鬼山が新山君に言っていたものだと思い出す。加えて、反論しようとした白木君に新山君が間髪入れずに言った。
「なんだよ、俺に言い訳すんの?おい、弘人よぉ!」
新山君の語尾が一気に強まると、大場君の慌てる声がする。
「おい!やめろよ一毅!やめろって言ってんだろうが!おい!」
音だけの判断だから本当のことはわからないけど、誰かが倒れて、三人に起きた事態は一応、収束したみたいだったけど、息切れに混ざって重い声が飛んだ。
「お前らがそんなんだから、俺がB.Gに入ったんだろうが!俺らが三年に目をつけられたとき、ビビってるだけだったお前らを助けてやる為によぉ!それを今更、なんだよ!俺が変わった?俺と話してる気がしない?そりゃそうだろうな。けど、俺をこうしたのは、お前らだってことも忘れてんじゃねえ!」
一気に捲し立てた新山君に、大場君と白木君は、また口をつぐんだみたいだ。
このとき、僕不思議と胸を細い針で刺されるような痛みが走った。原因を特定することが出来ない奇妙な鋭痛を抱えていると、新山君の携帯に着信が入る。凄く大きな音にしている理由は、すぐに分かった。
「鬼山からだ……くそっ、お前ら絶対に黙ってろよ」
会話の内容なんて聞こえないけど、新山君の声からして、呼び出しの連絡だったんだろう。
はい、はい、いまからですか、同級生の家の前にいます、十五分以内は厳しいです、いえ頑張ります、たどたどしい敬語で返事をしていた新山君は舌打ちを挟む。
「鬼山から呼び出されたから、今日はここで解散する。お前ら好きにしてろよ」
心なしか、いつものような覇気がないし、大場君と白木君の返事も曖昧としたものだった。
まあ、僕にとっては、幸運な事態にはなったことには違いない。遠ざかる足音に耳をそばだたせて、完全に聞こえなくなってから、僕はベッドから起き上がり、カーテンに隙間を作って外を窺い、やっと安堵の時間を得られたことに、吐息をついた。
「真美さん……もう大丈夫ですよ」
押し入れを開いて、ゆっくりと出てきた真美さんは、膨れた頬で言った。
「また汗かいちゃったじゃん」
僕が、すいません、と詫びれば、真美さんは、溜め息をつき、腕を鼻の位置まであげて自分の匂いを嗅いでいる。
その仕草に、縮んでいた僕の背筋が伸びた。たかが、数時間前に目覚めた性癖に、こんなにも踊らされてしまってるんだから、本当に男って情けないよね。だけど、堪えることが難しいのも確かなんだ。
僕は、多感だから仕方がない、なんて口当たりの良い言い訳を用意して、なんとか自分を取り繕った。
ウォーキングデッド見てたらゾンビ小説を書きたくなる……
遅くなりましたが5月くらいまで更新が遅くなります