そこで、よくお父さんやお母さんが時間が早いなんて言ってるのは、こういうことなのかと思った。知らないことが増えていくの子供の内は、時間が遅いんだ。けど、大人になるにつれて知っている事柄のほうが増えてきて新鮮味が無くなり、なんらかに興味を抱く回数が減ってしまう。深い感動にしか興味を惹かれていないのであれば、それはそれで寂しいものだな、と思った。
と、まあ、ここまで長くなってしまったけど、女性の手を繋いだだけで、ここまで考えてしまう僕は、多分だけど異端なんだろう。
もしかしたら、こんなところに原因があるのかもしれない。
錯綜する思考を断ちきるように、僕は真美さんの手を放すと玄関に靴を取りに行った。
※※※ ※※※
時刻は昼時の十一時四十分、僕と真美さんは近くの駄菓子屋で飲み物を買ったあと、光君の家に行ってしまうと大場君や白木君が道中にいるかもしれないから、なんて本音を隠しつつ、まずは、剛君の自宅に歩いた。
気温は最高に達しているみたいで、真美さんに奢ってもらったジュースが、二時間もせずに温くなりそうだし、照りつける日射しも先日より遥かに強い。やっぱり、自転車を使えば良かったかな。ただ、二人乗りに自信がない僕がペダルを漕がなきゃいけない訳で……
懊悩していた僕の隣にいる真美さんは、物珍しそうに頻りに顔を動かしていて、気にかかって声を掛ける。
「やっぱり、都会に比べると田舎って感じですか?」
真美さんは、意外そうな顔をしたあとに、うーーん、と唸って首を傾げた。
「何て言うか……私がいた頃とは、随分、変わったなぁってね」
僕は、驚いて真美さんに聞き返す。
「え?真美さんって、このあたりにいたんですか?」
「そうだよ。十八までだけどね。たった四年でこうも変わるとは思ってなかったなぁ……」
感慨深そうに目線を細めた横顔を眺めながら、僕は、記憶を探り始めた。真美さんほど、可愛らしい女性なら、多少、周囲が色目き立っていてもおかしくない。けれど、どれだけ堀っても、そんな噂話を聞いたことがない。
真美さんが、飲んでいたジュースの缶をゴミ箱に捨てて立ちあがり、背筋を伸ばすように伸びをした。強調された脹らみが僕の思考を途切れさせ、自然と見上げてしまう。
「でも、そんなものなのかもね。人も街も、時間が経てば変わっちゃう。置いていかれるのは、辛いけどね」
「えっと……どういう意味ですか?」
そう尋ねると、真美さんは微笑んだだけで先を続けてくれなかった。その表情はどこか寂しそうだと感じる。