「なら、早速、取りかかろう」
渋面する剛君の脇を強引にすり抜けて玄関に入った真美さんは、お邪魔しまーーす、なんて明るく言いながら居間へと進んでいく。
影像の中では、小柄な体型も手伝って抜群にしおらしい真美さんだけど、こうも強引なところを見てしまうと、僕が抱いていた夢を否定されている気分になってしまう。
「なあ、豊……俺、あの人のイメージが崩れそうなんだけど……」
それは、剛君も同じみたいで、諦めたように息を吐いて居間へ振り返る。
真夏のお掃除大作戦、真美さんは後日、楽しそうにそんなことを言っていた。
※※※ ※※※
時刻は十五時五十五分、僕ら三人の掃除に一段落がついた。畳の居間に散らばったお酒の空き缶や、おつまみにしていたであろう食べカスを一通り剛君が集め、真美さんが雑巾で拭き掃除を終えたところから、僕が掃除機をかけていく。
まあ、真美さんには「雑巾と一緒で掃除機も木目に添って使わなきゃ」って怒られながらだったけれど、そこまで広くもない居間は、比較的早く終えられた。その後、僕がトイレ、真美さんが風呂場、剛君が寝室と分担する。そうすることで、かなり作業の効率があがった。提案したのは、真美さんだ。
風呂場から戻ってきた真美さんは、足をタオルで拭きながら居間に入ってくる。先に担当場所のトイレを終えていた僕は、またしても、ハーフパンツから伸びた真美さんの両足に目が向かってしまう。
水を弾きそうな白くて柔らかそうな肌と太股、そこに頬を挟まれたらどれだけ気持ち良いことだろうなぁ……
六畳ほどの居間の中央に置かれたテーブルには、剛君がいれてくた麦茶がある。僕は、真美さんにコップを渡す。
「剛君も、もうすぐ終わるみたいです」
座らずにコップを受け取った真美さんは、隣の部屋を仕切る襖に目線だけ向ける。
「剛君、だっけ?手伝わなくても良いの?」
「一応、僕も聞いてみたんですけど、ここは一人でやるって」
「ふーーん、まあ、寝室とか見られたくないものもあるだろうしね。男二人なら尚更か」
僕は、少しだけ驚いて訊いた。
「おじさんと二人暮らしだって言いましたかね?」
真美さんは床に座りながら返す。
「だって、お風呂場にシャンプーしかないし、櫛もなかったよ?それに、歯ブラシも二本しかなかったし、なによりさ、居間の掃除したけど、化粧品だって家の中に見当たらないでしょ?だから、いないのかなってね」
確かにそうだ。僕は、自分の家との環境の違いについて見回してみると、指摘された点が繋がった。