「そんなに、不機嫌になるなら、聞いてみたいんだけど、君達は普段とは違うことをした?」
「したに決まってるじゃないっすか!真美さんが飛び込んでこなければ……」
「つまり、してないってことだよね?」
「いや、だから……!」
「私は、したのか、していないのか、それだけを聞いてるだけだよ?それじゃ、私が来たから出来なかったのなら、結局はしてないってことだよね」
僕と剛君は、そのまま押し黙った。なにを言っても、重石みたいに真美さんの声が乗っかってくる。それも、戦争映画のワンシーンみたいにマシンガンを放ちながらだ。重たい弾丸は、僕らの肺を貫いて言葉を奪っていく。
「夜にしか特別なことがないって思ってるなら、それは間違いだよ。むしろ、少ないんだから、やるなら、昼間に遠出でもしたほうがマシ」
言い切った真美さんの目を見れなかった。
僕らが、夜に何を求めていたのかも分からなくなりそうだ。いや、実際は、求めるものなんかなかったんだろう。夜中に出歩き、英雄になる。突き詰めていけば、ただ舌触りが良いだけの口実だ。彼女を作るのであれば、昼間に、それも、どの中学校も夏休みの期間に入っているのだから、よっぽど都合がいい。
僕らが夜に歩いた理由は、ただの好奇心、それだけだと突きつけられた。消沈した僕と剛君が、胸に黒いものを抱えながら話しを訊いていた。すると、不意に真美さんが言った。
「ねえ、私がさせてあげようか?特別なことってものを」
僕と剛君は、どきり、として揃って顔をあげる。テーブルの茶色しか映っていなかった瞳に、真美さんの肌色が優しく溶け込んでくる。あとになって気付いたのだけれど、きっと、甘い誘惑ってこういうことを指していうのだろう。様々な憶測が僕の脳みそに次々と突き刺さってくる。それは、剛君も同じらしく、顔だけは動かさずに、目線が上から下へと落ちていっていた。それを目敏く発見した真美さんが呟く。
「……言っとくけど、君達が期待してるようなことじゃないからね」
「え!?いや、その……」
曇った声音を誤魔化すように、大仰な仕草で両腕を振っていた剛君は、言葉に詰まって天井を仰ぐ。残された僕は、緊張で乾いた喉に、どうにか唾を滑らせて訊いた。
「その特別なことって……なんですか?」
イタズラな笑みってこういうことなんだろう。
真美さんは、唇の両端を僅かにあげて、ナメクジみたいなヌメリをもった目で僕を視界にいれる。
「きっと、君達が目指してる場所よりも、遥かにスリルがあることだよ」
ゾンビ系書きたい気持ちが膨らんでくーーるね