僕らは、もう既に巻き込まれているんだ。理由はいくつかある。一つ目は、顔が割れていること、二つ目は、新山君の存在、三つ目は、真美さんと関わりをもってしまっていることだ。この三つ目の理由がもっとも厄介で、もしも、真美さんがブラック・ガーデンの連中に捕まってしまった場合……考えたくもない。
「ね?私は別に何も言ってないよ。ただ、流れでこうなっちゃっただけ……豊君は、もう気付いてるみたいだけど、正直、もう逃げられないよ」
納得がいかないとばかりに、剛君は剣幕を強めて口を開こうとしていたけど、僕がそれより早く、事情を説明する。次第に、顔が青ざめていく様子は、他人事じゃないとはいえ、気の毒に思えた。そして、それは、光君にも思うことになるんだろう。
なら、せめて、僕には確認をしておきたいことがあった。
「あの…… 真美さんは、どうしてあの人達に追いかけられてたんですか?僕らを一方的に巻き込むのなら、その理由くらいは聞かせて下さい……」
「……話せば長くなるって昨夜も言ったよね?それでも良い?それに、もう一人にも聞かせてあげたほうが良いんじゃない?」
「そうですね。なら……」
そこまで僕が言ったとき、剛君が勢い良く右手を高々と挙げた。呆然とした僕と真美さんが、互いに顔を見合わせていると、強張った表情とは不釣り合いの声を出す。
「あの……えっと……あの……あのですね……」
剛君が大きな唾を数回飲む込んだ音は、きっと、僕だけにしか聞こえていなかった。証拠に真美さんは、まだ、キョトンとしている。
やがて、閉じかけた声紋を無理矢理に広げたであろう剛君が早口で言った。
「もし!もしも!もしもっすよ!もしも!あの!もし良かったらなんですけどね!その、もしも上手くやれたら、ご褒美が欲しいんですけど、どうっすかね!?」
後半、身体を乗り出していた剛君に、僕は何を必死になっているのやらと呆れていたけど、すぐに思い至った。これまた昨夜、次のステップの話しをしている。そこまでいかないにしても、が目の前に垂れ下がってきていたんだ。だから、手綱を握られていないまま、人参を追いかける馬みたいな勢いなんだろう。
あれ……それって、届かないんじゃないのかな?
真美さんは顎に指を当てると、じっ、と僕らを見詰めながら言った。
「ご褒美って何が良いの?」
剛君の息遣いが荒くなる。多分だけど、興奮なんかじゃなく、緊張のあまりに過呼吸になりかけているんだろう。だからといって、真美さんへ「セックスさせて下さい!」なんて、とてもじゃないけど口にできない。
今日の事件……胸糞悪すぎてもうね……