なにか、なにか良い言葉はないか。この場を切り抜けつつ、口当たりの良い言い回しはないか。これでも、僕なりに考えてはいる。
ちょめちょめさせて下さい……馬鹿!
あなたと合体したい……無い無い無い!
子供を作る儀式……お前何歳だ!
コウノトリが運んでくるものってなんですかね……?やばい、ズレ始めてきた……
「俺達を男にして下さい!」
突然、僕の耳に最適解に感じられる切り返しが飛び込んできた。ていうか、剛君はどこでそんな言葉を学んだんだろう。
「男って……そういう意味で?」
真美さんの目付きが据わった。
僕もそうだけど、一番、血の気が引いていたのは剛君だったはずだ。このときの真美さんは、とても怖かった。例えるなら、小学校低学年のときにテレビでみたナマハゲみたいだった。
伝わりにくいかもしれないけど、小さい頃に味わった恐怖って、なかなか忘れられないよね。きっと、それは、多分、大人になってもそうなんだろう。そんな感じなもんだから、剛君は明らかに雰囲気の一変した真美さんに吃りつくしていた。
振り返れば、誰だって怒ると思う。とくに、そういう人が相手なら尚更だ。簡単に……なんて思っちゃっていた当時、僕らは他人への忖度なんてものを微塵も考えていなかった。自分だけのことで頭が一杯になっている。だけど、学生の内なんてそれで良い。そうじゃないといけない。
ゆっくりとした動きで立ち上がった真美さんが、僕らを見下ろして数秒、耐えにくい沈黙を破るように軽く溜め息をつく。
「そうね……まあ、リスクは高いんだし、それなりのことじゃなきゃ釣り合わないし……分かった。けど、こっちも一つ追加させてもらうけど、それで良い?」
僕と剛君は、またお互いに顔を見合った。いま以上のリスクを負うとなると、やっぱり物怖じしてしまう。
けどね、このときの僕らは、やっぱり中学生だったんだ。眼前にいる真美さんの身体に、下から上へと視線を流していく。スラリと伸びた脚が細いからか、太股は程よい質感を秘めているように見え、DVDで男の人が掴んでいた括れた腰は、まるでピーターパンのみたいに僕らを夢へと吸い込み、膨らんだ双丘の柔らかさを想像すると堪らない。なにより、あの線を引いたような眉と艶のある吐息を間近で感じられるとなると、断る理由が次々と潰されていく。
中学生の好奇心ってものは、本当に恐ろしいね。リスクよりも先に来てしまうんだから。
「……やります!」
光君のことを考えもせず、僕と剛君は、揃ってそう口にしていた。
次回より、7月25日にはいります
UA数700突破ありがとうございます!
短編書きたくて次回まで少し期間を開けるかもしれません