主だった不安要素を矢継早に口から出した光君の姿を僕らは初めて見たものだから、圧倒されてしまった。いつも、二人がやるなら、を口癖みたいに言うのに、このときばかりは、映画のスクリーン中に、必死な形相でマシンガンを撃ち放つアメリカのアクション俳優以上の迫力だ。よっぽど、嫌だったんだろう。
それに、例にあげられた要素は、どれも的を射ている。特に、最初に出された、僕ら三人が揃ったところで、の部分に関して、ぐうの音もない。
いつの間にか椅子から立ちあがり、肩で息を繰り返す光君に、何も返せない僕と剛君が黙っていると、押し入れから出てきた真美さんが軽く背筋を伸ばす。自然、強調された双丘に僕ら三人の目線が向く。もしかしたら、真美さんは僕らに自分を意識させる為にやっていたのかもしれない。口火を切るように言った。
「光君、君って失敗した場合の話ししか出来ないの?」
急に話しを振られ、慌てて目線を逸らした光君は、もう一度、真美さんへ顔を向ける。
「物事には、失敗も偶然もないんだよ。起きる出来事は、全部、何かを学ぶ機会を貰えたって思えば、いろんなことが楽になるよ」
小首を傾げた真美さんに、光君が返す。
「だって、どうなるか、を考えるのは当たり前のことじゃないですか……学校でも言われてまし、お父さんとお母さんだって……」
光君の黒目は揺れっぱなしだ。そもそも、真美さんの顔を見れてすらいない。僕らのなかでも一際、気弱な光君だけど、これでも勇気を振り絞っているのだろう。その証拠に、声が上擦っている。
「学校で?なら、光君は、学校の先生が言ったことを全部、全部、ぜーーんぶ、鵜呑みにしちゃうのかな?」
光君は、すぐさま、首を横に振ったけど、お構い無しに真美さんが続ける。
「なら、お父さんとお母さんのほうなのかな?でも、光君は、豊君や剛君と一緒に夜中の公園にいたよね?あれは、どうなの?夜中に出歩いちゃいけないって言われてないのかな?」
「それは、二人がやるって言ってたから……」
光君の一番卑怯な面が垣間見えた瞬間、真美さんがすっぱりと切り落とすように鋭く言った。
「じゃあ、今回はどうして駄目なの?自分が傷つかなきゃ、他人はどうなっても良いってこと?」
夜中に出歩くこと。
それ事態は、単純に親にバレさえしなければ大丈夫、そんな側面がある。けれど、今回ばかりは違うんだ。さっき、光君自身が言った内容と、先日の夜遊び、比べるまでもない。
光君の額から汗が吹き出ているのは、きっと室内の気温のせいだけじゃない。