せっかく盛り上がりかけた熱が部屋から出ていき、再び、暗くて冷たい沈黙が降った。けど、ここで有耶無耶にしてしまう訳にはいかない。僕らは、夏休み前に、固く誓いあったんだ。
絶対に彼女を作り、イジメから解放されるんだ!
……今、考えると、とても馬鹿らしいことなのかもしれない。
ギイ、と椅子を軋ませた光君が深い溜め息をついた。
「やっぱり、僕らには無理なんじゃないかな……」
「どうして、そう思うの?」
「だって、顔立ちは良くないし、暗いし、スポーツだって出来ないし、頭も良くない……女の子が好きになるところが一つもないよ……」
光君が項垂れると、また椅子が重い音を鳴らす。まるで、僕らの会話みたいな音だな、なんて思っていたとき、ようやく下半身の熱が冷めてきたらしい剛君が立ち上がった。
「そんなんだから、駄目なんだよ。分かってるのか?俺達はこの夏休みに英雄にならなきゃ今までと何も変わらないんだぞ」
さっきまでズボンの奥を熱くしていた人が、そんなことを言うものだから、笑いだしそうになるのを堪えていると、光君が反撃した。
「なら、僕らは最初に何をしなきゃいけないのか、剛君が決めてよ。彼女を作るのは当然として、どうやって作るのか、その為に何をするのか……」
光君は語尾を弱々しくしながらも、顔をあげた。すると、今度は剛君の顔が下がる。公園のシーソーみたいだ。
けど、光君の言うことはもっともだと思う。ただ一言、彼女を作る、と口にしたところでなんの意味もない。なにかをするのであれば、行動をしなきゃいけない。僕らには、そこがなかったから、話しが進まなかった。けど、だとしたら、一体、どこから手を出せば良いんだろう。
点けたままにしていたテレビは、朝倉真美の扇情的なビキニ姿を映して止まっていた。おもむろにリモコンを取って画面を戻すと、バラエティー型のニュース番組が放送されていた。数人のお笑い芸人が、キャスターやアイドル、果ては政治家にいたるまで、最近、世の中で起きた事件や事故への意見を言い合い、最後にはお笑い芸人の人が笑いに変える、そんな内容だ。
そして、今、番組内でされている討論は、ズバリ、学生間のイジメについて。
僕らは、揃ってテレビに目を向けて身体を固めた。たった三文字から放たれる魔力は、ただでさえ少ない口数を奪っていく。お腹の底にある、どす黒い感情が喉を通って鼻から抜けていく。とてもじゃないけど、匂いには耐えられそうにない。だけど、この番組が切っ掛けとなって、僕らが何をしなければならないのかが決まった。