必死になって絞り出したのは、反論でも弁明でもなく、自分をどうにか保つだけのものだった。今、思い返しただけでも情けなくなる。
「分かるよ。すごく似てるからね、私がよく知っている人に……」
そんな意味のない僕の声に、真美さんは寂しそうに目を細めて言った。
僕は、真美さんが僕らによく似た知人という人に少しだけ興味を抱いたけれど、追求する気になれず、黙って俯いてしまい、僕の部屋に重苦しい沈黙が落ちる。
胸焼けでも起こしそうな気持ちの悪さが、身体中を循環しては足先から抜けて、また頭から入ってくる、そんな感覚だった。頭の奥が痺れてしまって、立っているのか、座っているのかも分からない。これが、落ち込むってことなんだろう。
誰も動こうとしない時間が、三十分ほど過ぎたとき、真美さんが吐息をついて、僕の返答の窓から出ていこうとした。
「真美さん?どこに?」
僕は真美さんの背中を見て、思わず引き留めてしまった。
「ここにいても、なにも進まないでしょ。だから、私は私で動こうと思っただけだよ。安心して、もう、戻らないからさ」
剛君と光君が、本日、何度目かにお互いを見合った。けど、なにを言うでもなく、黙って四つの視線を僕に投げる。任せるってことなんだろう。
僕は、頷くでもなく言った。
「戻らないって、もう、僕らには関わらないってことですか?」
「そう。ごめんね、迷惑かけちゃって……」
ふっ、と振り向いた真美さんの顔は、ぎこちのない笑顔だった。小さな輪郭の中で整ったパーツの一つ一つをなんとか柔らかくして作られた精一杯の笑顔、ただし、画面のなかで見ていた真美さんの線を引いたような綺麗な眉毛は、力なく垂れている。
このままで良いのか、と僕は思った。
このまま、真美さんを見送るのは、簡単なことだ。だけど、本当にそれで良いだろうか。僕は、僕らは、変わりたいと思ったから、こうなったんじゃないのか。そうだ、そうだった筈だ。
僕は、割子川の欄干で、これまでを取り戻す為に変わるって決めたじゃないか。ここで、なにもせずに、真美さんを見送るのなら、ただイジメを享受してきた僕らと同じじゃないか。
英雄になるには、前に進まなきゃいけない。
「待ってください!」
真美さんだけでなく、剛君と光君も驚いたように目を見開いてた。
怯えるな、前だけを見て進むんだ。
「真美さんがなにをやりたいのか、まだ僕には分からないです……だけど……」
口の中にある唾が緊張で乾いていく。それでも、僕は力を込めて言った。
「ここで何もしなかったら、これまでと同じだから、僕は変わりたい!だから!僕に手伝わせて下さい!」
短編……