「豊、お前、なに言って……」
「剛君は……!」
声を鋭く遮ると、剛君は声を呑み込むように顎を引く。その行動を終える前に、僕は言った。
「剛君は悔しくないのかよ!僕らは、同い年の誰もやったことがないことをやって、あの地獄から抜け出そうとしてた!けど!結局はこうなってしまっているんだ!僕らがやったことなんて、新山君……新山や大場や白木だって、きっと、とうの昔に体験してるんだ!なら、僕らは……」
息を切らせながら叫んでいたけれど、僕は急に悲しくなって自然と声が落ちた。
「僕らは……僕らがやってきたことって、一体なんだったんだろう……」
気づけば、僕は両手を股の位置で強く握り、涙を流さないように唇を噛んでいた。この数日間、僕らがやってきたのは、遊びの延長に他ならない。詰まるところ、僕らは大人の力がなければ何も出来ない子供だったってことだ。
真美さんに指摘された通り、自分の卑怯な面を見ないようにして、ただ流されていただけだった。その証拠に、僕ら三人が一致団結した場面は一度だってなかったじゃないか。一人一人がそれぞれの方向を向いて、ずっと、足の引っ張りあいをしていた。 こんなことで、なにが変わるっていうんだよ。大人がいなきゃ、僕らはいつまでもこのままだ。英雄になんかなれるはずもないんだ。
それを気付かせてくれたのですら、朝倉真美という大人の女性だ。
いつまでも、いつまでも、付いて回る大人の影を振り払える子供、それが子供の僕らにとっての英雄なんだろう。
途端に弱々しくなった僕を心配してか、光君がオズオズと伸ばしてきた右手を両手で包んで力を込めた。
「光君……剛君……僕の初めて夜中に出歩いたとき、僕ら以外には誰もいない世界なんだって思ってたんだ……けどね、あの世界には、もう沢山の人がいたんだよ……だったら……」
僕は二人の目を見ながら息を吸い込んだ。
「今度こそ……今度こそ!誰もやったことがないことをやろう!そして、あの地獄を抜け出そう!今回こそ、誰のせいにもできない自分達の意思で!」
一気に吐き出した僕は、知らぬ間に手を強く握りしめていたみたいで、光君の顔付きが酷く歪んでいた。慌てて謝ってから手を放すと、光君は俯いてしまう。この状態じゃ、とても話すことはできない。
そこで、僕は、剛君に声を掛けた。
「剛君はどう思う?」
眉間に皺を寄せたまま、剛君は天井を見上げる。やがて、顔を元の位置に戻すと、真剣な声音が聞こえた。
「豊はさ……俺達がいなくても一人でやる?」
短編のゾンビ書こうとして失敗したわけだ……