英雄達の夏休み   作:宇宙人と呼んで

47 / 72
第11話

その理由は、光君を巻き込むことになるかもしれないってことだろう。当の本人は、まだ自分で決めかねているみたいだ。ここで光君を外すのは、簡単なことだけど、光君が戻ってこれる場所を残しておきたくて、僕は頷いた。

ほんの少し残年そうに眉間を狭めた真美さんは、一度嘆息してからベッドに座る。

 

「分かった。なら、光君も聞いてね」

 

僕らは、ベッドとテーブルを挟んで床に座る。

そうして、数分、真美さんは僕らを眺めてから口を開いた。

 

「あのね、ブラック・ガーデンの鬼山って奴は、私の元カレだったの」

 

いきなり、とんでもないことをぶちこんできた。目を剥くなんてものじゃない、目が飛び出してしまうかと思った。

そうなると、いろんな想像ができるのだけれど、予想だけで判断する訳にもいかず、僕はなにか言い出しそうな二人の太股を、真美さんから見えないようテーブルの下で抑え、先を促す為に、唇だけを動かす。

 

「続けるね。昔の私は、今の君達と似たような状況で、追い詰められてたの。学校にいかなきゃ家に来られて、家にいなければ、街を探されて、本当に逃げ場のない毎日だったんだよね」

 

たはは、と明るく笑った。その姿と説明の内容が不自然なほど一致しない。どうして、照れたような仕草をとれるのだろう。僕なら、昔のことだから、と切り捨てられない。

 

「今にして思えば、よっぽどやることなかったんだろうなぁって思うし、ただの暇潰しのお遊びだったのかもしれない。それが中一の夏やすみあけから中三年まで続いててね。いやぁ、結構、辛かったよ」

 

神妙な顔で耳を傾けていた剛君が、突然、首を振って改めて向かい合う。

 

「よく耐えられたっすね……」

 

真美さんは、屈託のない様子で頷く。

 

「耐えた訳じゃないよ。誤魔化していただけ。まあ、そのお陰で自分に嘘をつくのは上手になったけどね。そんなときだったなぁ……鬼山と出逢ったのは」

 

目を細めてベッドに座る真美さんが、僕にはなんだか昔を懐かしんでいるように見えた。これからさき、辛いことをそんなふうに捉えることができるだろうか。テーブルの下で、自然と握り拳を作っている内は、無理だろう。

 

「当時から、鬼山は近所で有名な不良だったんだよね。いっつも黒崎や小倉にいて、年上の人と遊んでワルさばっかりでさ。その日も、アイツにとっては、日常だったんだろうけど、私にとってはこれまでを変える日になったんだよ」

 

真美さんが言うには、黒崎まで逃げていたところ、案の定、他の同級生が追い掛けてきて、三角公園で捕まった。そのとき、同じ場所に居合わせた鬼山が、同級生達にイチャモンをつけて事なきを得たとのことだった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。