その切っ掛けは、剛君が渋い顔でリモコンへ手を伸ばして、電源のボタンに指を置いたとき、お笑い芸人の人が口にしたコメントだ。
「最近の子供を見ていると思うんですよ。みんな自信がなさそうに俯いている子が多いなぁ、と……なにか一つでも自信を持てるものがあれば、負けない気持ちも育つと思うんですよね。そこからが大事なんじゃないですかね?」
これは、また、ネットが荒れそうだ。けれど、確かにそうかもしれない。
僕は、お笑い芸人の人の言葉に雷で撃たれたような衝撃を受けるとともに、少しだけ考えてみた。昂然と主張できる特技なんか持ってないし、自分に対する自信なんてものもない。それは、多分、剛君と光君も同じだろう。
つまり、足りていないのは、自信だ。学校の同級生達を見ていても、僕らよりも声が大きい、これも、きっと、自信の現れなんだ。
「はぁ……簡単に言ってくれるよな……自信なんてある奴がどうかしてる……」
「確かに……僕なんて……」
剛君と光君の梅雨時のような湿った会話を切ったのは、僕だ。
「ならさ、今までやったことがないことをやってみようよ!きっと、何かが見付かるよ!」
熱をもった僕の声に、光君の目はパチパチと瞬きをして、剛君は、鬱陶しいとばかりに舌打ちする。
「例えばなんだよ。なにか案があるんだろうな?」
剛君は、さっき自分が答えられなかった質問を僕にする。このままでは、堂々巡りだ。
しかし、僕は、はっきりとした解答を用意している。それは、大人だけの特権であり、中学生達にとって、憧れのような行動だ。僕は、両親にバレたら不味いからと、狭い部屋で二人だけに聞こえるように小声で言った。
「光君、剛君、それから僕の三人で……」
そこで区切って二人を見てみると、光君が唾を呑んだ音がしたあと、剛君が先を促すように眉を寄せる。
僕は、この友人二人よりも、ほんの少しの優位に立っていることを感じながら口を開いた。
「真夜中に外へ出掛けよう。勿論、バレたら大変な目に合うけど、僕らには、誰もやっていないことをやったっていう事実が必要なんだよ、きっと」
提案に難色を示した光君が一度だけ唸って僕をみた。
「もしも、警察に捕まって補導されたらどうするの?下手したら、夏休み中、家から出してもらえなくなるよ……」
「捕まらなければ良い。遠出をしなきゃ大丈夫だよ」
負けじと光君が続ける。
「けど、もし、お父さんやお母さんが遅くまで起きてたら……」
「その場合は、実行を先伸ばしにするよ。僕と光君にはLINEだってある。連絡しあえば決められる。剛君は……」