剛君の視線が、よく真美さんがいる前で言えるよな、と言っている。やめてくれ、僕だって顔から火が出そうなんだ。
「うん……まあ、あれだよね。あんまり、そういうことは面と向かって言わないほうが良いよ……」
真美さんが唇を引きつかせている。なんだか、最近、そういった事情のガードが緩くなってしまっている気がして、引き締めなきゃいけないな。
「私から振っておいてなんだけど、話しを戻すね。豊君が言った通り、男の子の振りをしていくつもりだよ」
剛君は身を乗り出してテーブルを軋ませた。
「それで、その晒ってやつが必要だとして、どうやって手に入れれば?」
「そうだねぇ……お金は私が出すから買ってきてもらえる?」
二人の会話に僕は疑問を挟んだ。
「あの、インターネットで買うっていうのはどうですかね?そうすれば、外に出ることもないから、リスクは減らせると思うんですけど」
「豊君は、自分のお小遣いとかで注文したことある?」
僕が首を横に振ると、真美さんが頷いて言った。
「なら、駄目だよ。豊君が自分で何かを注文することがあるんなら、宅配便の人が来ても、ご両親に怪しまれないかもしれないけど、経験がないとなると、やっぱり厳しいよね。君達が出掛けてるときとかに届いちゃったりすると詰め寄られるよ?それを誤魔化すことできる?」
そう言われると、途端に不安が強まってきた。それに、勘違いをしてほしくはないけど、僕は別に外に出るのが嫌な訳じゃないんだ。ただ、安全策を提案してみるのも良いんじゃないかと思っただけで、もしも、採用されるのなら言ってみて損はしない。まあ、結果は一蹴されておしまいって感じだけどね。
「でも、それってどこに売ってるもんなんすか?」
剛君の質問には答えずに、真美さんは押し入れの中からピンク色の財布を取り出して、五千円札一枚を摘み出すと、僕に差し出す。
「黒崎の商店街に手芸屋さんがあったはずだから、そこにいってみてくれない?駅から真っ直ぐにカムズ通りを歩いてるとカラオケ屋さんがあって、その近所にあると思うから」
僕はお札を受取りながら訊いた。
「目印ってなにかあります?」
顎先に人差し指を当てて、記憶を辿っているのか、少しだけ天井を見上げていたけど、すぐに顔を戻す。
「確か、すぐ近くに……あ、いや、これ言っても分かんないかな……」
珍しく言い淀んだ真美さんに、剛君が怪訝な顔つきをする。その表情と僕の心境は同じだろう。
剛君は負けじと尋ねる。