僕は、無意識の内に、真美さんから頼まれた晒が入った袋を背中に回してしまい、剛君が小声で、馬鹿、と言った。それもそうだ、もう見付かってしまっているのだから、そんな目立つ仕草をしてしまえば、二人が気にしないで訳がない。
「よお、こんなとこで何してんの?」
最初に僕らへ声を掛けた白木のほうだった。案の定、目線は僕の背中に合わせられている。
これ以上、僕にボロを出させない為か、剛君が答えた。
「いや……なんでもないよ……ただ、気分でも入れ換えようって散歩してただけで……」
「それなに?」
剛君の言葉を遮った白木は、僕へ目線を流す。最初から質問に答えなんか求めていなかったんだ。彼らの目的は、僕が隠している物、それだけだ。
緩んだ白木の唇を引きちぎってやりたい、こんな衝動をもつ勇気が持てずに、僕は同級生二人に苦笑いを向けた。
「これは、なんでもないよ……ちょっと買い物をしていただけで、二人が気にするものでも……」
「あ?興味があるかないか、決めるのは俺だろ?なんで、お前が俺のことを決めてる訳?」
「あっ……」
白木が僕の肩を強く押す。倒れこそしなかったけど、残った感触は学校での仕打ちを思い出させる。僕は、いまにも口から飛び出してきそうな心臓を生唾と一緒に飲み込むだけて精一杯だった。この汗は、日射しのせいだけじゃない。寄せられた顔から目を逸らし、これからくる痛みへの対応として全身に力を入れる。
「貰い!」
白木の早口と僕の背中に手が回されたのは、ろとんど同時だった。
呆気ないほど、真美さんからの頼まれものを奪われた僕が咄嗟に右手を伸ばすも、白木は僕に背中を向けて中身を確認し首を傾げた。
「なんだこれ?お前ら、こんなもんで何をするつもりだったん?」
袋から取り出した晒を訝しそうに眺めていた白木は、大場に話しを振った。
「直人君、これ、なんてやつか知ってる?」
大場は、眉を寄せて晒を見ると、少しだけ唸って言った。
「なんか……見たことはあるけど……とこでだっけ……」
思い出そうとして、自然と目玉が上にいっている。このまま、興味を無くしてくれれば、ちょっと叩かれるだけで済むけど、もしも、晒だとバレてしまえば、新山に報告されかねない。そうなれば、きっと、B.Gの鬼山にも話しが届いてしまうだろう。それだけは、なんとしても避けなければならない。
僕は、いまだに頭を悩ませている二人に、声を張った。
「それ、夏休みの宿題に使うんだよ!ナップサックにしようかなって!」
不自然な大声に、黒崎駅からエスカレーターを使って商店街に入ろうとしていた大人も数人が振り返った。