そう話しを振ると、剛君は食いぎみに言った。
「俺は豊に賛成だ。それに、決行はいつでも良い。うちの親父は、いつも酒呑んでるから、寝るのも早いし、お前らみたいに二人親じゃない。夜中に出ていってもバレないだろうしな」
なら、決まりだ。僕と剛君は、ニヤリと笑って頷きあった。あとは、光君だけだ。僕らは揃って光君に目線を流す。
「ぼ……僕は……やっぱり……」
「光、この中で一番、危ないのは、何度も三人が揃うまで夜中に出なきゃいけない俺なんだぞ。お前と豊はやり取りできるからな。それに、集合は豊の家で、一番安全なお前が、いつまで尻込みしてんだよ」
「け……けど……」
いつまでも煮え切らない光君が、唇を尖らせれば、我慢の限界を迎えた剛君が机を掌で叩いた。
「わかったよ。なら、俺と豊だけでやるから、お前はずっと、なにもしないで、夏休みを終わらせればいいじゃん!」
光君が今にも泣き出しそうだ。
きっと、いろんなことが頭の中を駆け巡っているんだろう。お父さんやお母さんに怒られる、もしも、警察に見付かれば学校にも、家にも連絡がいく。光君は、いつも両親に怒鳴られるか、怒鳴られないか、どちらかで行動を決めているみたいな部分がある。だから、学校ではマザコン野郎と馬鹿にされてる。ケガレ、ヨゴレ、マザコン、中学生の三種の神器みたいな言葉だ。
声を震わせた光君が、剛君に言った。
「ふ……二人がやるなら……僕もやるよ……」
剛君の勢いに負けた光君が、遂に諦めた。仲間外れは嫌だ、これも僕らにとっては見えない魔の手のようなものだ。込められた魔力は、頭に浮かんでいた両親の顔すらも霞ませる。それでも、やっぱり、僕らがやるなら、の一言はズルいと思う。自分一人の決断にしないで、もしものときは、僕らを巻き込もうとしている。
それでも、ようやく意見が一致したことに僕は安堵した。この時点で、集まってから既に五時間が過ぎていて、日が傾き始めていた。貴重な夏休みの初日が無駄にならなくて本当に良かった。と、落ち着いたところで、僕は疑問を抱く。
「て、あれ?ねえ、剛君、集合場所って僕の家なの?」
剛君は、さも当たり前とばかりに返した。
「そりゃそうだろ。言い出しっぺはお前なんだからな。うーー、ワクワクしてきた!なあ、どこにいく?やっぱ、最初は近くのほうが良いよな!なあ、光!」
……もしかしたら、今回の件で、一番、危ない役割は僕なのかもしれない。
一人、テンションをあげて、苦笑する光君に絡む剛君の背中を、僕は静かに睨みつけてやった。
そして、今日、下したこの決断により、僕らはとある騒動に巻き込まれることとなる。
このときの僕らは、そんな事態を想像することもなく、ただただ、いつもの日常を過ごしていた。
次回から章を進めます。の前に、ちょっと短編をあげます