英雄達の夏休み   作:宇宙人と呼んで

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第15話

僕は、剛君や白木、大場が驚愕の声をあげている最中にも、匂いの正体を探っていた。やがて、小学生の頃、工作の授業でペンキを使ったことを思いだし、匂いの謎が解けた。そして、僕の視線は自然と空き缶に向かっていく。

 

「あぁ!?一毅よぉ、見たことあるって言ってんだろがぁ!」

 

ガクガクと髪が揺らされる度に、痛みで新山の表情が歪んでいく。すいません、すいません、と鬼山に謝っているが、僕らには理由が分からなかった。見たことがある、それが怒りの原因だとすれば、新山自身もなにがどうなっているのか、理解できていないだろう。

単純に鬼山は、シンナーを吸い、いわゆる、ラリっているんだ。缶の中身、あれはラベルの通りじゃない。

 

「すいませんでした鬼山さん!僕ら、もう出ていきますから!出ていきますから勘弁して下さい!お願いします!」

 

大場が鬼山の腕に飛び付くも、新山ともども軽く振り払われた。トイレに転がった二人は、恐々と鬼山を仰ぐ。

 

「あ?本当に悪かったと思うなら、どうすれば良いか教えたよなぁ?一毅ィ……」

 

新山は、ピクリ、と震えた後で、白木と大場、僕達のことすらも視認して唇を噛み、膝を立てて正座する。そして、腰を曲げると頭をトイレの床につけた。

これがなんていう態勢か知っている。土下座ってやつだ。新山は鬼山達に旋毛を晒した直後、拳を握った。

 

「自分のツレが迷惑をかけて申し訳ありませんでした……今後は、このようなことがないようにします……」

 

新山の声は、どんどんと曇っていった。その悔しさを圧し殺すために、拳を握ったのだろう。

 

「そうそう、分かってきたじゃねえの一毅」

 

僕らには新山の顔が見えないけど、きっと泣いているのだと思った。

僕らだって、学校だけじゃなく、さっきだって泣きたいときは山程あった。けど、どうしてか、新山の背中に対して、ざまあみろって気持ちがもてない。

機嫌を戻したらしい鬼山が、白木と大場に目を配る。

 

「おう、お前ら一毅に感謝しろよ。もう行って良いぞ」

 

「はい……」

 

返事のあと、大場が新山の肩を叩いて立ち上がらせようとしたけど、二人の間に鬼山の怒号が飛んだ。

 

「おい!一毅まで連れていって良いなんて誰も言ってねえだろうが!殺すぞボケ!」

 

白木が短く悲鳴をあげる。大場はびくつきながら新山から手を離した。

 

「なあ……頼むから、行ってくれよ……これ以上、鬼山さんの機嫌悪くしないでくれ……お前ら、邪魔なんだよ」

 

新山は、また頭を鬼山に下げて言った。

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