同級生の誰もがしていないことをして英雄になる。
僕らの目的はこれだけ……
それがどうして、こんな姿になっているんだろうか。二人して涙を流して、二人して謝りあう。
これが本当に英雄になろうとしている人間のあるべき姿かな……
僕らは、一体、なにをしようとしているの?
僕らは、一体、どうしたらいいの?
こんなに傷付けられてまで、本当にやる意味があるの?
僕は、結局、口だけだったのかもしれない。変わらなきゃいけないなんて思いながら、やられたことは、やったことは今までと同じだったじゃないか。それなら、いっそのこと、初めからなにもしなければ良かった。
歩行者デッキを往き来する大人は、通りすぎながら好奇の目を向けてくる。そこに、学校の教師が重なった。ああ、またこの視線だ。なにかあったのかと察しているくせに、余計な責任をできるだけ負わないように白々と気にかけてくる素振りを両目だけで現してくる。そんな目付きが大嫌いだ。
僕らのような最下層に位置する奴等にとって、とにかく活きづらい世の中だよ。学校でも街中でも人の顔色ばかり窺っているんだから……
バスターミナルから離れたい一心で、剛君と一緒に、歩行者デッキの簡易型エレベーターに乗って、少しだけ遠回りをしつつ駐輪場に戻る。幸い、お金は取られずに済んだ。精算を終えて自転車に跨がる。
「なあ、豊……」
覇気のない剛君が、後ろを走る僕に聞こえるくらいの声量で続けた。
「真美さんになんて言ったら良いのかな」
国道を走る車の音が、やけに耳に響く。
ホテル前を抜け、交差点の信号で横に並んでから言った。
「正直に話すしかないと思う……僕らがお金を盗んでないって証拠も持っていかれてるから……それしかないよ……」
信号が青になり、僕らはペダルを漕ぎだす。炎天下に晒された身体の火照りは最高潮、なにがあっても自然だけは変わらない。容赦のない陽射しを見上げて、僕は青空とは真逆な心境をありありと痛感した。どんより雲った胸の内は、誰かに覗かれなくたって、雨曇になっていく。
辛いことや悲しいこと、負のイメージを取り除く方法なんて、僕らは持っていなかった。
英雄になんてなれるはずがなかったんだ。
※※※ ※※※
自室に戻った僕を出迎えてくれた真美さんは、開口一番、なにがあったのかを聞いてきた。それから細かくはないけど、あったことを一通り話すと、一瞬だけ深刻そうに目尻を下げ、僕と剛君にシャワーを薦めてきた。なんでも、気分を一新するには、最適なのだそうだ。
お金を真美さんに返し、僕らは部屋を出て風呂場に向かう。