言い澱む僕に、真美さんはなにも言わない。言葉にできるよう整理がつくまで待っていてくれているのが、ちょっとだけ、嬉しかった。もしかしたら、真美さんにも似たような経験があったのかもしれない。
僕は、腰を少しだけ浮かして、椅子に深く座り直した。
「ついこの前、僕の家に来ていた三人組を覚えていますか?」
質問に、真美さんが首を縦に動かす。
「アイツラの内、二人に帰り道でバッタリ出会してしまって……黒崎駅のバスターミナルのトイレに連れていかれました」
思い当たる場所なのか、ああ、と黒目を上にする。あれだけ人も来なかったのだから、前々から鬼山達が集まって悪さをしていたのかもしれない。それが、今回は、良い方向に運んだって訳ではないけれど。
「そこで、なんていうか……白木と大場ってやつらに、その……嫌がらせをされまして……たまたまやって来た鬼山に助けられたというか……とにかく、そのときに白木に持っていかれてしまいました……ごめんなさい……」
嫌がらせの内容は伏せておきたかった。人に話しても気持ちが良いものではないし、なにより、ちっぽけなプライドかもしれないけれど、真美さんには聞かれたくなかった。
言い終えると同時に、僕は椅子に座ったまま、真美さんに頭を下げる。
「そんなに元気のない旋毛を見せられてもなぁ……それに、怒ってないから謝らなくて良いよ」
優しい言葉をかけてくれてはいるものの、僕はなかなか顔をあげられなかった。それは、きっと、僕の中で踏ん切りをつける切っ掛けを真美さんに求めてしまっていたからだ。
僕らは、英雄になんてなれない。たから、真美さんには悪いけど、今回の一件から放れさせてほしい、こんな身勝手な願いを僕は口にしようとしている。もちろん、あれだけのことを見返りに要求していながら、どれだけ勝手な言い草だと言われるであろうことは分かっているし、責められるだろう。耐えるだけの覚悟が持てくて、つくづく、自分の弱さが嫌になる。
ベッドが軋む音がして、僕は、それが合図にでもなったみたいに顔をあげた。ほとんど、反射のような動きだったから、心がまとまっていなかった。けど、目の前にいる真美さんは、柔らかな笑顔で僕の髪の毛を撫で始める。
「大丈夫、そんなに恐がらなくても良いよ。君と剛君がお金を盗んだなんて思ってもないし、持ってこれなかったからって責める訳ないじゃない。恐いことまで思い出して、本当のことを言ってくれてありがとね」
真美さんの細い指が僕の頭を滑っていく。その優しさは、その両目は、僕が知っている大人とは全く違った。
喉が痛い