それだけで、なんとなく察してしまう。自分でお金を稼ぐことができない僕の持ち物は、すべて両親から買い与えてもらったものだ。ゲームやスマートフォン、漫画だってそうだ。きっと、お母さんは目線だけで僕に教えてくれたんだろう。
夜中に二人が僕について話し合って、僕の夜更かしの原因になっているものはなにか、そして、それを取り上げるとしたら何が有効なのか、多分、そんな会話をしていたのだと思う。実際は、これからについて真美さんと話し合っていたのだけど、そんなことを素直に言えるはずもない僕は、心に広がった暗い影を残すことになった。後ろめたいって気持ちは、罪悪感とよく似ている。
だけど、僕にだって言いたいことは沢山あるんだ。
夜中に僕が起きてることには気付くのに、どうして、学校での出来事に気付いてくれないんだ。僕の様子がおかしいことだって、一杯、あったはずなのに、どうして、僕だけがこんな思いをしなきゃいけないんだ。昨日だって、あんなことがあったのに!
僕は、膝の上で両手を握って顎が痛むほど食い縛った歯を割った。
「ごめんなさい。ちょっと休みが続いてるからって気が抜けてたのかもしれないや……」
魔法の言葉に、反省を足す。真美さんに指摘されて以来、自然と口にするようになった。自分を鑑みて、なにがどう悪かったのかを理解すること。だけど、これは遺骸と難しいことで、だからこそ、説得力を生み出す。勿論、こんなことよりも先に言ってやりたい言葉はある。どうしても喉から出てこないけどね。
「そうだな。 まあ、お父さんも中学生のころは似たようなものだったけどな、やはり、いまになって後悔しているよ。お前には、そうなってほしくないんだ」
お父さんが茶碗を持ってから、僕はようやく箸を持った。食器と箸が当たる音とテレビから流れるニュースを読み上げる声、それ以外は静かな食事風景、よその家庭はどうなのか知らないけど、これが僕の家では日常的な朝だ。良いのか悪いのか、そんなこと僕は分からない。
僕は、さっき浮かんだ思いを、ご飯と一緒に飲み込んだ。
朝食を食べ終えたお父さんは、いつものように茶碗を鞄に持ちかえて仕事へ向かった。お母さんが食器を洗っている内に、僕は自分からすすんでお風呂場の掃除をし、ゴミ出しをしてからお母さんに宿題をするからと声を掛けて、真美さんが待つ部屋に戻った。こうしておけば、お母さんが部屋に入ってくることはないはずだ。
押し入れの扉の前で、わざとらしく欠伸と伸びをする。これが前日に真美さんと決めた合図だった。