WITCHER Ⅲ BERSERIA   作:影絵師

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第二話

「化け物汁で酒がまずくなる」

 

 入店した直後に店の中にいた客から罵倒される白髪の二人の剣士――ウィッチャーを見て、ベルベットはかつての自分達を思い出す。自分は喰魔、共に旅をしていた仲間の中には業魔、海賊、自我を得た聖隷、裏切り者とされた対魔士といった人類の敵の集まりだったが、自分から明かすまでは人々に優しく接してくれたことが多かった。

 そう思い出しているベルベットにオーディムが話しかける。

 

オーディム「あれがさっき俺が言ったウィッチャーで、若い方が白狼と呼ばれる“リヴィアのゲラルト”だ。かなり有名だ」

 

ベルベット「あたしが知るわけないでしょ……それで? どうして“ここにはいないはず”のあたしを知ってるわけ?」

 

オーディム「さっき言った通り、ある商人から聞いたんだ。そいつは『トータス、トータス』が印象的な奴だった。災禍の顕主に恨みがあるようだが、お前さん、何かやったか?」

 

 ……その人物に心当たりがあるベルベット。

 

ベルベット「さあね、あんたに関係ないわ。あいつもこの世界に来ていたとはね」

 

 そう答えるベルベット。その直後だった。

 二人のテーブルにある人物が近づいてきた。ウィッチャーのゲラルトだ。

 

ゲラルト「女性を探している」

 

オーディム「みんなそうさ。この子だったらどうだ? 少々噛み付くがな」

 

ベルベット「……冗談でも容赦しないわ」

 

ゲラルト「そんな時間はないし、誰でもいいわけじゃない。特定の女性だ。リラとスグリの香りがして、黒と白の服を着てる」

 

 そう尋ねながらベルベットの隣に座るゲラルトに対し、ベルベットは気にせず少し離れた。

 オーディムは特に答えず女店主に三杯持ってくるよう注文した。

 

オーディム「飲むと元気が出るぞ」

 

ゲラルト「いいだろう。一杯飲むか」

 

ベルベット「あたしは結構よ。まだ19歳だし」

 

 そう言って飲酒を断るベルベット。オーディムは頷き、一杯をミルクに変えるよう注文した。

 飲み物を待つ間、ゲラルトは再び尋ねた。

 

ゲラルト「単刀直入に聞く。その女性を見たか?」

 

オーディム「ヴェンガーバーグのイェネファーをか?」

 

 そう答えた直後、女店主が飲み物を持ってきてテーブルに置いていく。

 探している女性の名前が出たことに、ゲラルトはさらに尋ねる。

 

ゲラルト「どうして名前を知ってる」

 

オーディム「説明が完璧だったからさ。一度聞いたら忘れられない質でね。忘れられないんだ」

 

 そう答え、ベルベットにも言う。

 

オーディム「お嬢さんが何者なのかもいつまで経っても忘れられなくてね」

 

ベルベット「しつこいのは嫌いよ」

 

 ゲラルトは次にオーディムのことを尋ねた。

 

ゲラルト「お前はいったい何者なんだ?」

 

オーディム「ただの商人で放浪者さ。ゴウンター・オーディムとでも呼んでくれ。一応、このお嬢さんは――」

 

ベルベット「ベルベット・クラウよ。ただ一緒にいるだけよ」

 

ゲラルト「そうか。それで、何の商人なんだ?」

 

オーディム「鏡を売ってるさ。鏡の帝王とか、鏡の達人と呼ばれて熱狂的な人気を誇ったものだ」

 

ゲラルト「なぜイェネファーを知ってる?」

 

オーディム「聞くまでもない。ダンディリオンの詩で聞いたのさ。一介の商人が、偉大な世界に触れるにはそれしかない。もちろん、俺のように幸運に恵まれれば別だが」

 

ゲラルト「我慢強いウィッチャーと出会えて幸運だな」

 

オーディム「リヴィアのゲラルト、ブラビケンの殺し屋本人に会えて幸運さ。災禍の顕主にも会えてな」

 

 少々苛立っているゲラルトに対して余裕で返すオーディム。ベルベットもオーディムを信用していない。自分が災禍の顕主と呼ばれていること、それを知るきっかけである商人――かめにんと出会ったことを考え、知りすぎているとしか思えない。

 ゲラルトはベルベットを一瞥してからこう言う。

 

ゲラルト「彼女のことは知らないが、俺のことも、ダンディリオンの詩で聞いたことがあるだろ」

 

 その言葉に対し、オーディムは「乾杯」と酒を飲むだけだった。仕方なく、自分が探している女性の場所を聞いてみた。

 

ゲラルト「とにかく……イェネファーを見たのか?」

 

オーディム「ぶしつけだが聞かせてくれ。これは色恋沙汰か?」

 

ゲラルト「俺と彼女との関係を詮索してどうする」

 

オーディム「うむ。一介の商人にその資格はない」

 

ゲラルト「知ってることを教えてくれ」

 

オーディム「あんたが現れるまで、あれがイェネファーだとは思いもしなかった。想像すらしなかったよ」

 

ゲラルト「結論を言え」

 

 オーディムの話し方にゲラルトだけでなくベルベットも苛立っている。例え話を繰り返して結論を言わない人間は好きじゃない。 

 それでもオーディムは余裕を持ちながら答えた。

 

オーディム「駐屯地にいるニルフガードの偵察兵が見たらしい」

 

ゲラルト「どこでだ」

 

オーディム「駐屯地でだ。彼女は馬に乗って現れた。夜の闇の中、黒と白の服で、香りはスグリ……そのままさ。司令官と簡潔な会話を交わして、すぐ去ったそうだ」

 

ゲラルト「どこへ向かった」

 

オーディム「そこまでは知らない。駐屯地で聞くといい」

 

 ゲラルトにそう答えたあと、今度はベルベットに向かって言った。

 

オーディム「ニルフガードの駐屯地と言えば……世界と世界を行き来出来る装置を所有している組織がニルフガードに雇われてそこにいるらしい。元の世界に帰るなら行って頼んだ方がいいぞ」

 

ベルベット「……考えとくわ」

 

 ベルベットがそう返した直後、オーディムは席を立った。

 

オーディム「放浪者同士、助け合わなきゃな。いつか俺が困ってたら、今度はあんたらが助けてくれるかもしれん」

 

 ゲラルトたちの横を通り過ぎる形で立ち去るオーディム。ベルベットとゲラルトは出入り口の方を振り向くが、オーディムの姿はもうなかった。

 その場に残された二人。ゲラルトがベルベットに話しかけた。

 

ゲラルト「ベルベットと言ってたが……君はどうするんだ? あの男と一緒じゃないのか」

 

ベルベット「一緒にいただけよ。戦場で目を覚ましたあたしをここまで連れてきてくれたの」

 

ゲラルト「俺は駐屯地に行くが……君も行くよう勧められたようだが」

 

ベルベット「……怪しいと思うけど、行かない理由なんてないわ」

 

 ゲラルトとベルベットは共に駐屯地に行くことになり、店から出る。

 しかし、外で待っていたのはゲラルトを罵倒していた3人の男性客だ。

 

「楽しんだかい?」

 

ゲラルト「ああ」

 

 男の言葉にベルベットを下がらせながら答えるゲラルト。だが、ベルベットはゲラルトの後ろではなく、真横に留まる。

 男からの嫌味が続く。

 

「じゃあ失せろ」

 

「お前みたいなのはお呼びじゃない。そのよそ者の女もだ」

 

 その様子を店内から見た女店主は口元を両手で隠して心配している。

 怪物や魔法に反応するメタルが震えるのを感じ、ベルベットに視線を向けたあと3人の男に戻し、こう挑発した。

 

ゲラルト「仲間を集めてきた方がいいぞ。お前達3人では、到底勝てん。ひょっとしたら、この子にもだ」

 

「俺一人でぶちのめしてやらあ」

 

ゲラルト「頭から袋をかぶって、手を縛られてるなら負けるか……いや、それでも勝てそうだ」

 

「チェット、レッシュ、手を出すな。この化け物に思い知らせてやる。かかってこい!」

 

 そう言って殴りかかる一人の男。ゲラルトは横に回避し、素早く男の顎に拳を叩き込み、気絶させる。

 それを見た二人の男が驚くも、すぐにゲラルトとベルベットに殴りかかった。

 男の向かってくる拳を何度も受け止めるゲラルトは男の隙を見逃さず、男の頭を掴んで膝に叩きつけた。

 ベルベットはもう一人の男の連撃を躱し続け、がら空きの顎を一気に蹴り上げた。

 地面に倒れ込んだ3人にゲラルトはこう言い残す。

 

ゲラルト「楽しいひと時をありがとう」

 

ベルベット「時間を無駄にしたわ」

 

 村人達の視線が集まる中、二人は駐屯地に向かって行った。

 

To Be Continued




次回から別の作品が参加する予定です。
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