ぬらーり ひょーん(G)な異世界旅行記   作:しゃしゃしゃ

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第十話(残り話数は3話、作中時間は1週間)

―――翌日、“創造主の決闘”の決勝 舞台区画

 

『長らくお待たせいたしました! これより、火龍誕生祭のメインギフトゲーム“創造主の決闘”の決勝を始めたいと思います! 進行及び審判は“サウザンドアイズ”の専属ジャッジでお馴染み、黒ウサギが勤めさせていただきます♪ 』

 

 決勝の舞台に歓声が轟く。会場の熱量が増し、自分たちのいる一段上の運営側の特別席からでも興奮が見て取れる。

 これがスタジアム生観覧ってやつなのか。『自分』の中の記憶にはサッカーとか野球とかそういう試合に見に行った者のは少なく、実感が薄いけど確かにこんな風だった。いいな、これ。ここにいるだけで楽しいしとてもわくわくする。

 

「そういや白夜叉。黒ウサギのミニスカート、見えそうで見えないってのはどういう了見だ? チラリズムなんて趣味が悪すぎだぜ」

 うん?

「なになに何の話? 」

「ああ、実はな―――」

 ふむふむ。昨日の追いかけっこで黒ウサギのスカートの中がどうしても見えないので不審に思って尋ねたら、「白夜叉さまから鉄壁スカートのギフトを与えられている」ので絶対にパンチラしないと言われたと。

 ふむ。

 

「確かにそれはなぁ。見えそうで見えないのはそれはそれで興奮するけど…」

「だろ? で、お前はどんな考えがあって黒ウサギにあんなギフトを贈ったんだ? 」

 

 白夜叉は目を閉じ「ふん…」と落胆したように

「奴良はともかく、十六夜よ。おんしほどの男が真の芸術を解せんとは…」

「なに…? 」

 あ、さり気にサゲられた。………覗き魔ですしね。仕方ないね。

 

 

「―――芸術とはすなわち、未知なるものへの己が想像力。神秘なるものへの飽くなき探求心。そう! 何物にも勝る芸術とは()()()()()()()()()ッ! 」

 あたまわるーい!

 

「己が宇宙の中…だと…? 」

 なんで衝撃を受けてるん?

「そしてそれは乙女のスカートの中も同じこと。見えてしまえばただの下品な下着たちも、見えなければ芸術だ…ァ! 」

「見えなければ…芸術か! 」

「今こそともに確かめようぞ…ともに奇跡の起こる瞬間をな…」

「白夜叉…」

 

 

 インターセプトッ!

 

 

「ちょっと待った! 」

 なんだ? とこっちに目を向ける二人。

 

「自分の意見も聞いてもらおうか…っ! 」

「ほう? 」

 あ、昨日のトラウマが…。

 

 持ち直す!

「っ! 確かに白夜叉の言った通り、真の芸術は見る者の心の中にあるんだろうさ…でもな! 人間の想像力を越えるのはいつだって現実だ! 未知のままでは、想像は現実を越えられない! 『黒ウサギのスカートの中』という未知も、その片鱗すらつかめないなら、究極の芸術には至らない! 」

 白夜叉の表情が変わる。

 

「言うではないか。だがそれは探求の途中で挫折する意思弱き者の話ではないか? 」

 くっ!

「だったら! 十六夜さん! 」

「なんだ? 」

()()()()()()()! 」

 黒ウサギに変身する。当然ギフトなんて持ってない形だけの変身だから、高所の風にあおられミニスカートはふわりふわりと捲れそうになる。

 自分はあえて、スカートを押さえない。

「どうでございますか! 十六夜さん! 」

 ぶわりとめくれ、パンツ(黒ウサギの今日のぱんちゅ)が露わになる。

 

「………いや、本物の黒ウサギの方がいいに決まってるだろ」

 ぐっはぁ!

 

「………く、しょせん偽物は本物には勝てぬ定めか…白夜叉さま、自分の敗北です。

 どうぞ、黒ウサギの今日のパンツです」

 敗者は勝者に戦利品を渡す。悔しいがしょうがない。

 黒ウサギの姿のまま、パンツを脱いで白夜叉さまに差し出す。

 

「いや、いきなり何を言っておるんじゃ…まぁ敗北したからと言うならもらっておこう」

 目立つ席なので、普通に脱ぐところも何人かに見られていた。………ちょっと興奮した。

 スースーする。

 悪乗りしてふざけてみたけど、こういうのも楽しいな。

 

 ………飛鳥さんからの視線が痛いので元の姿に戻る。変身してみて感じたのだけど、巨乳って身体バランスが狂うね。うさ耳も、被り物ではなく実際に肉と骨で繋がってるから不思議な感覚だし。

 

 

 

 

 

『それでは入場していただきましょう! 第一ゲームのプレイヤー・“ノーネーム”の春日部耀! 』

 入場口から耀さんが歩いてくる。

 

「頑張ってー! 春日部さーん! 」

「ふれふれー」

 はぐたん的応援。緊張しているようには思えない。こういう大舞台では普通の人は緊張してしまうものだと思うが、さすがというべきか。

 

『そして、“ウィル・オ・ウィスプ”のアーシャ=イグニファトゥス! 』

 イグニ…炎って意味だっけ? 青い炎がビュン!と来た。

 

「あっははははははは! 見た見たぁ? “ノーネーム”の女が無様に尻もちついてる! さぁ、素敵に不敵に面白おかしく笑ってやろうぜ! ジャック! 」

「ヤッホッホッホッホッホ! 」

 そうそうこんな感じこんな感じ。アーシャさんもなかなか愛らしいな。ゴスロリ? いいね。特に詳しいわけではないから知らないが黒でなくてもゴスロリ服というのだろうか? そもそも定義がわからないのだが。

 自分的にはゴスロリと言うと、繭墨あざか様なのであるが、それはともかく。

 …声が、ジャックさんの声が。うん、後ろから刺されそうな声でしたね。うん。自分はダメ絶対音感もってるから、うん。それ()ともかく。

 

「それって、もしかして…」

「その通り! こいつは我が“ウィル・オ・ウィスプ”の傑作ギフトにして、名物オバケ。『ジャック・オー・ランタン』さ! 」

「YAHO? 」

 かぼちゃ頭に、燃え盛るランプ。中身なんてなさそうな青い服と白手袋。まさにジャックさん。とりあえず善い人だっていうのは『自分』の知識にもある。

 

「ジャックよ、十六夜君、奴良くん! 本物のジャック・オー・ランタンだわ! 」

 キャッキャとはしゃぐ飛鳥さんが可愛い。

 変身してどこぞのランドのマスコットみたいに対応してやりたいが、無理だな。自分浮けないし、炎にはなれないし。パチモンになっちまう。

「こんな形で見ることができるなんて素晴らしいわ!」

「分かったから落ち着けお嬢様」

 

 

 

「ホストマスターの命により、ただいまよりギフトゲームの舞台を用意しよう! 」

 白夜叉さまが運営席の柵に立って宣言した。

 そうして自然な動きで柏手一つ。

―――ぱんっ。

 

 審判の黒ウサギと、プレイヤー二人&ジャックさんが不思議なナニカに飲み込まれ、消えた。

 

 上を見上げると映像としてゲームの舞台となる木の根の中の映像が映し出されていた。すげぇ。転移(でいいんだよな? 今回のは)と内部映像の投射投影。それをたった一挙動で実行しやがった。シンプルに白夜叉すげぇ。

 

「うわー! おっきいですねー! 」

「あの馬鹿デカい樹の中が舞台ってか」

「はてさて、どんなゲームを見せてくれるのかの? 」

 確か負けちゃうんだったっけかなー?

 

 

*********************

 まったく関わらないのでギフトゲーム“アンダーウッドの迷路”はオールカット。

 以下ダイジェスト。

 

「行くぞジャック! 木の根の迷路で名無し狩りだ! 」

(“ウィル・オ・ウィスプ”のリーダーは生と死の境界に現れた悪魔。もしそうなら私じゃ太刀打ちできない。だけど彼女は違う…だったら、いける! )

「あいつ、出口が分かってるのか?! 」

「後は任せるよ! 本気でやっちゃってジャックさん! 」

「分かりました」

「失礼お嬢さん」( ' ^'c彡☆))Д´) パーン

 

「いざ来たれ、己が系統樹を持つ少女よ! 不死の怪物このジャック・オー・ランタンがお相手しましょう! 」

「これが…悪魔…」

「…………降参」

 

*********************

 

『勝者、アーシャ=イグニファトゥス‼ 』

 会場を歓声と拍手が包む。

 いやぁ…なかなか面白かった。うろ覚えだったこともあって楽しめたわ。ジャックさんマジかっけぇな。

 

 何事かを話したのち、舞台袖に消えていくアーシャさんとジャックさん、耀さんと黒ウサギ。

「ふ、あいつめ。ゲームに勝てずとも、得るところはあったようじゃの」

 すっごい優しい声音の白夜叉さま。ぬらりひょんイヤーは地獄耳。独り言も聞き逃しはしないのです。

 

「とても見ごたえのあるゲームだった。よき仲間をお持ちだ」

「ありがとうございますサンドラ様。自慢の同士です、ね」

「ええ。やっぱりすごいわね、春日部さん」

 十六夜さんが、上を見上げている。…そうか()()か。

 

「……おい、ありゃなんだ」

「何? 」

 上を見上げれば天から無数に降ってくる黒い“契約書類(ギアスロール)”。

 

「プレイヤーは現在ここにいる全コミュニティ」

「ホスト指定ゲームマスター:白夜叉」

「ホストマスター側 勝利条件:全プレイヤーの屈服・殺害?! 」

「プレイヤー側 勝利条件:偽りの伝承を砕き、真実の伝承を掲げよ」

 

 ではあえて…言いましょう。

『あら、魔王襲来のお知らせ? 』

 

 

 

 

 

 

 

「魔王だ! 魔王が来るぞー! 」

 観客席は阿鼻叫喚。大混乱。運営席からはその模様がよくわかる。………やっぱり魔王ってすさまじい恐怖の大王的なものなんだなぁと感じる。いや、うん「アジ=ダカーハ」とか尋常じゃなくやばいってのは“知って”るけどもさ。こうして恐怖におののき右往左往している人々を見ると実感がわいてくるね。

 

「なんと大胆な―――何ッ!?」

 唖然としている白夜叉だが、突如黒い風が吹き荒れ、一気に広がった。

「白夜叉様!? 」

 サンドラが手を伸ばすも弾かれ、勢いを増した風に自分たちは全員バルコニーから押し出されてしまった。

「十六夜さん! 自分はリリちゃんを! 」

「ああッ! 」

 マンドラさんがサンドラちゃん庇っているが、隣で飛ばされるリリちゃんは誰もついていない。危険。

 手を伸ばし、巻き付け、体を引き寄せるように縮む。

 

「リリちゃん?! 」

「奴良様! 」

 落下。着地かっこよく決めたいところだが、そうしたら衝撃が伝わってしまう。安全第一!

 変身! <スライム的な衝撃吸収素材マット!

 

―――ぽよん。

 

「大丈夫、リリちゃん」

「はい、ありがとうございます! 」

 よかったよかった。さて、舞台側に降りた十六夜さん達とは逆方向、観客側 舞台の外に降りてしまった。

 どうするべきか…。

 

―――ドォンッ!

 逡巡していると、境界壁(かな? )から轟音が鳴り響いた。

 

「な、なんだ?! 」

 近くに降りていたマンドラさんがびっくりしたように言う。

 

「おそらく、自分の仲間が降りてくる魔王たちに奇襲を行ったのでしょう」

 

「魔王に奇襲、ですか?! 」

「何を考えてるんだ…?! 」

 

「攻撃の規模から十六夜さんかな? 」

「たしかに十六夜様ならやりそうです…」

 リリちゃんが同意する。せやよね。

 

 さて、

「サンドラ様、自分たちは何をすればいいでしょうか? フロアマスターとしてご命令を」

 

 あ、マンドラさんに睨まれた。皮肉っぽく聞こえただろうか。それとも指示待ち感が出てた?

「………私はフロアマスター、秩序の守護者として魔王を討つ使命があります。ですが今は観客の避難も無視できません。マンドラ兄さま、避難指示を任せます」

 

「わかった」

 

「リリと…」

 奴良です。

「奴良も協力してくれ。魔王が観客たちを襲わないとも限らない。その時は頼む」

 おけまるー。

 

「極めて了解。では行きましょう」

「サンドラ………。行くぞ! 遅れるな! 」

 

 

*********************

 

戦闘)十六夜VS ヴェーザー

 

戦闘)レティシアVS シュトロム&ペスト

   →↓

戦闘)レティシア&サンドラVS ペスト

 

ジン&飛鳥&耀…白夜叉のもとへ

*********************

 

「皆、うろたえるな! 我らは誇り高き“サラマンドラ”だぞ‼ 」

 現在、マンドラさんの指示の下避難誘導中。

 自分はマンドラさんの許可を得て“サラマンドラ”の旗を変身能力で作り、掲げている。目印なわけだ、こういう時も(旗印って)便利だよなぁ…と思う。

 

~~~♪

 笛の音が響く。これは…。

 

「? どうした、お前たち」

「「「「ウォォォォォォォォォォォォォォォォォ‼‼ 」」」」

 笛の音に惑わされた“サラマンドラ”の兵たちが武器を手に暴れだした。

 自分には効果はない。標的にして操る相手を選んだものだったらしい。っじゃなくて! 暴れてるのを止めないと!

 

「マンドラさん! 拘束するけど構わないですよね⁈ 」

「~ッ! やれッ! 」

 では早速!

 

―――と思ったら炎がドーン!………んー?

「はぁ…殺さないように手加減するのって難しいんだよなー」

「お怪我はありませんか? 」

 アーシャちゃんとジャックさん! ここで出てくるか!

 話の流れでは~~~………よし!

「アーシャさん、ジャックさん。自分は“ノーネーム”の奴良といいます。自分は仲間が戦っている舞台の方に加勢に行こうと思うんですが、ここを任せても構わないでしょうか?! 」

 

「“ノーネーム”って…耀の仲間? いいよ、私たちに任せておきな! 」

 

「おい! サンドラの命令は避難誘導の護衛! 投げ出すつもりか! 」

 いえいえマンドラさん、どっちもやりますとも。

 

「ジャックさん。『自分』を置いておきます。自分のギフトは変身能力。おとなしくさせた後の拘束にでも使ってください」

「ヤホ? 」

 髪をちぎって、息を吹きかける。

 別にそんなことをしなくてもいいが、雰囲気だ。孫悟空的な、孫悟空といえば最終回の天竺で僧兵たちにボコられながら戦ってたの覚えてるわ。あのドラマ最高に面白かったなぁ…と自分の中の自分が申しております。

 

「増えた?! 」

「分身…いえ、変身のギフトと言いましたかな? 」

 はい、

「そうです。そんでもって、おい自分、やって見せてみろ」

「おうよ」

 分裂した自分は手錠・足枷・拘束服と変身した。

 

「こんな具合に姿形が自由自在なので使ってください。敵の操作に、強制覚醒のような意識がないものでも動かす効果がないとも限りませんし」

 

「確かにそれもあり得ますな」

「リリちゃん、自分は行くけど大丈夫だよな? 」

「はい! 奴良様頑張ってください! 」

 サムズアップ。ジャックさんに目で「リリちゃん頼みます」と送る。

 

「では失礼します! 」

 ジャンプ! 壁面にへばりつき、よじ登る。

 

 

 

 

 到着! 飛鳥さん?! 

 

*********************

 時間は少し巻き戻り、白夜叉の封じられたバルコニー。

 黒ウサギから確認を任された飛鳥、耀、ジンの三人が会いに来たものの、白夜叉は黒い風に包まれ動けないという。

 しびれを切らし飛鳥が白夜叉に向かって叫ぶ。

「白夜叉! 一体どうなっているの?! 」

「…わからん。だが、どうやら“契約書類(ギアスロール)”のルールにより、私は参戦できないらしい」

「“契約書類(ギアスロール)”の…? 」

 

「よいかおんしら。今から言うことを、一字一句違えず黒ウサギに伝えるのだ。

 第一に、このゲームは作成段階で、故意に説明不備を行っている可能性がある。…最悪の場合、このゲームにはクリア方法が存在しない」

 普段の白夜叉からは考えられない、静かで厳かな声色。

「なんですってっ?! 」

 

「―――第二に、この魔王は新興のコミュニティの可能性が高いことを伝えるのだ」

「わかりました」

「第三に、私を封印した方法はおそらく―――」

 

「はぁい、そこまでよ♪」

 

「「「!」」」

 三人が声に驚き、振り返るとバルコニーを挟んだ空中に白装束の“ラッテン”と呼ばれた女が浮かんでいた。

「あらら、最強のフロアマスターもこうなっちゃあお終いねぇ」

 

「貴様ァ! “サラマンドラ”の連中に何をした!? 」

 バルコニー下の舞台には見るからに操られた“サラマンドラ”の兵士たちが。

 

「そんなの秘密に決まってるでしょ? それよりお邪魔よ? あんたたち」

 手に持つ笛を弄ぶと、それを3人に向けた。それを合図に操られた兵士たちが3人に襲い掛かる。

 

「………! 」

 無言のまま耀は鷲獅子のギフトを用いた突風で兵士を薙ぎ払う。

 

「あら、やるじゃない」

 ラッテンは兵士たちが蹴散らされても動揺しない。

 

「行くよ、二人とも」

 耀はその間に二人と手をつなぎ、離脱を試みる。

 

 慌てず、焦らずラッテンは笛に口をつけ、鳴らす。

~~~♪

「うっ…! 」

「あうっ…! 」

「ああっ…! 」

 笛が鳴る。

 

「春日部さん…何…これ…」

「う…くっ…」

「ニャー…ニャー…」

 

(笛吹き…道化…人と、ネズミを、操る…力…)

 飛鳥が考えている間に、耀が崩れ落ちた。

 と、演奏が止まる。

「―――ふぅん? 人並み以上の聴覚が、あだになったって感じね。でも、まぁいいわ。あなた、私の駒になってもらうわよ」

 ラッテンが降りてくる。

「…ジンくん、ごめんなさいね」

 え? とジンは首をかしげる。

「『春日部さんを連れて、黒ウサギのところに行きなさい』! 」

 威光による支配。かかりかけだったラッテンの支配を上書きし、従わせる。

 ジンは耀を俵抱きに抱え、兵士たちを引き連れて走り出した。

 

「はぁん? 逃がすと思ってるの? 」

 ラッテンが急に逃げたジンを注視する。

 

「―――『全員、そこを動くな』‼ 」

 はぁ? という顔をしたラッテン。そして操られジンを追う兵士。その全員の動きが止められる。意識の隙を突いた完璧な拘束。

 

「   はぁああッ! 」

 飛鳥は破邪の白銀十字剣を手に突貫。狙いはラッテンの心臓。

 

「―――! っこの、小娘がッ! 」

 一瞬の差で拘束が弾かれ、突貫は防御され、飛鳥は弾き飛ばされ倒れた。

「飛鳥ッ‼ 」

 白夜叉は叫ぶも、何もできず。

 

「…驚いた。一瞬でもこの私を拘束するなんて奇妙な力を持ってるのね―――あなた」

「うっ………ぐっ! 」

 諦めず剣に伸ばした飛鳥の左手をラッテンは踏みつける。

(情けない…ッ! せめて春日部さんの半分でも動けたら……! )

 

「ふふっ、さっきの子もいいけどあなたの方が面白そう―――ッね! 」

 ドンッ! と飛鳥の腹を蹴り上げる。

「………っ! …………」

 衝撃に飛鳥は気を失った。

 

「貴様………! 」

 やおら白く輝き怒りをあらわにする白夜叉。だが、それを前にしてもラッテンの余裕は小動もしない。

「貴女の怪物ぶりはよく耳にしたわ。でもその力今後は我々のために使っていただきましょう。さて―――」

 ラッテンが振り返ろうとした瞬間、弾かれるように跳び退いた。

 次の瞬間、ラッテンのいた空間を無数の牙を生やす触手が切り裂いた。

 

「何? 」

 

「知っていた、分かっていたはずだが…実際に見ると、少し不快だ」

 触手は蠢き、人の形をとった。

 

「奴良! 飛鳥を連れ、黒ウサギのもとへ行け! そやつは笛で人を操る! 笛を吹かれる前に早くッ! 」

 白夜叉が助言する。

 それを聞きながら、奴良は冷静に飛鳥の様子を確認する。

(大丈夫、気絶しているだけ…多分、きっと。

 自分は、どうするべきだ? ここで飛鳥さんをを連れて行ったら、ディーンを手に入れられないかもしれない。ラッテンを倒す? どちらにしても原作から外れてしまう。自分はどうするべきなんだ…? )

 

「肉体変化系のギフト? まぁどうでもいいわ。邪魔者にはご退場願いましょう」

 ラッテンが宙に浮き、笛を口に当てる。

「まずい! 早く行け、奴良ッ! 」

 白夜叉が叫ぶ。奴良九朗はいまだに迷っていた。

 

(どうする、どうする。笛、多分逆らえない。逃げなければ。飛鳥さん? 連れて行かないのは不審? ツキヌキ銀だこ、爆発ビーム、消滅ビーム…だめだ、まだ倒しちゃ…頭が痛い

 

 

………………………………………………………………………………………………………………………………………………………頭が、痛い? )

 

「―――ッ! ガハッ! うぅっ…!………っ」

 突然、奴良九朗は苦しみ悶えだし、倒れ込んだ。

 

「なんじゃ? どうした、奴良! 」

 白夜叉の声にも答えられない。ぬらりひょんは「なにがなんだかわからない」という表情で震えている。

 記憶の中にはあったが、実際に体験したことのない感覚にパニックを起こしている。今生で、生れて初めて感じる“痛み”・“苦痛”。

 

 朦朧とする思考。

 

 

 激しく響く頭痛。

 

 

 止まらない震えと絶え間のない悪寒。

 

 

 全身で主張する痛みを伴った腫れ。

 

 再生能力が肉体を治療し、患部を排除しようと働く。常ならば痛みなど感じなかったその肉体変化も今は激痛となって襲い来る。そして、それが終わらない。

 治らない。

 

 治せるはずなのに治らない。

 

 治らないから痛みは終わらない。

 悲鳴を上げることもできない。腫れで喉はもう塞がっている。

 

 

 ぬらりひょん、『黒死病』発症。死亡まであと―――

 

 

 

 

 

 





やめて!“黒死斑の魔王(ブラック・パーチャー)”のギフトで、死の恩恵を与えられたら、生後二か月で霊格の低いぬらりひょんの魂まで殺されちゃう!
お願い、死なないで奴良!

あんたが今ここで倒れたら、この物語はどうなっちゃうの?
話数はまだ残ってる。ここを耐えれば、次の世界に行けるんだから!

次回「ぬらりひょん死す」
 デュエルスタンバイ!


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