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死んでいく。
肉も骨も魂も、心も記憶も死んでいく。
呪いにむしばまれ、自分の中にあったはずの、かけがえのないものが死んでいく。
痛みは既に遠く、しかしすぐ傍に今尚あって。
もうとっくに諦めている自分の心とは裏腹に、体はまだ動き続けていて、自分をまだ生かそうとする。
呪いをとって、新鮮な体に替えて、元の健康な体に戻そうとしている。ああ、でも駄目だ。肉体再生ではこの呪いを排除することはできない。代替した傍から呪いが移っている。体だけでなく魂まで侵されているんだ。魂は、どうしようもないなぁ…。
ぐちゃぐちゃと音がする。体を作り替える音。今まで気にしたことはなかったけど怖いな、怖いな。
ぐちゃぐちゃと音がする。もう自分は自分の力を自由にできない。自分の名前を書くようにすらすらできたことが、今はもう、どうやっていたのかさえ分からない。
ぐちゃぐちゃと音がする。頭の中が潰されて、新しいものが生まれる。きれいですてきなものが、零れ落ちていく。きらきらの汁が舞う。大切でないものも、大切なものも平等に散らばって、もう戻らない。
ぐちゃぐちゃと音がする。隣の自分が消えていた。自分の体は、いっぱい考えて考えて考えて、生かそうとする。でも駄目だ、もう助からない。
もう音はしない。諦めたのか、力尽きたのか、自分にはもう何もわからない。崩れていく、ゆっくりと確実に自分という存在が消えていくのを…ああ、楽しかった、楽しかった? 楽しかったよ。過去も未来も記憶は途切れて千切れて分からないけど、この胸の高鳴りは、そうだね…本当に楽しかったんだ。
もっと生きたかった。でもこれでいいんだ。自分は、これで満足だ。
自分は、もう死んでもいい。
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戦いは続く。
何度も何度も攻撃するたび、ぬらりひょんは再生し戻ってきた。
黒ウサギの金剛杵から何度目かの雷鳴が轟く。揺蕩うペストを狙ったその攻撃は、射線上に出現したぬらりひょんの分身体に阻まれ届かなかった。
雷は怪物を撃ち、消し炭に変えた。黒ウサギにとっては牽制の一撃、しかしぬらりひょんはあっさりと致命傷を与えられ、そしてあっさりと再生した。
サンドラが火龍の炎を眼前の敵めがけてたたき込む、ぬらりひょんはその炎の熱量に言葉もなく消滅する。燃えカスすら残らない完全な焼却。
渾身の一撃を放ったサンドラは、身にまとう華美な衣装で光る汗を拭い魔王のもとに向かおうとする。
サンドラの体に触手が巻き付く。振り返ればそこには倒したはずの怪物がいた。何度も繰り返していること故に、初めほどの驚きはない。冷静に触手を焼き払い、冷静に敵を倒す。
この怪物がどうやって復活しているか、どうすれば倒せるのかは、すでに黒ウサギから聞いている。
最初にあったぬらりひょんの自爆。あれで一帯に散らばった、肉片一個一個からこの分身体は生まれているのだという。再生能力は底が見えず、限界があるのかも不明。倒しても倒しても、元になる体の一部が残っているならいくらでも復活・増殖する。どうにかするには肉片の散らばった範囲をまとめて焼き尽くすしかない。
「「どうすれば…! 」」
黒ウサギとサンドラはいまだ魔王に挑むことさえできずにいた。どういう訳か魔王に与した元“ノーネーム”の奴良九朗ことぬらりひょん、一体一体は大したことはなく、簡単に倒すことはできる。
だが、倒しきれない。倒せたとしても『同士討ち禁止』のルールがある以上は殺せない。拘束しようにも生中な拘束術では持っている変身能力で脱出してしまうだろう。
「(奴良さんは私たちを本気で殺すつもりがない。私たちへの攻撃は今まで触手を使った拘束のみ…時間稼ぎでしかない)」
黒ウサギはウサ耳を揺らしながら考える。
「(黒ウサギの素敵耳が教えてくれたゲームの状況から察するに、飛鳥さんと十六夜さんの決着は近い…)」
ゲームが始まる前、黒ウサギには魔王を打倒するための作戦があった。敵を撃破し主力が集結し、時が満ちれば実行可能だったはずの作戦は、ぬらりひょんが寝返っていたせいで成功するかどうかわからなくなっていた。
黒ウサギは正面から伸びる触手を金剛杵で撃墜する。
「(てっきり、ラッテンに支配されて操り人形となっていると思っていたのですが…)」
こちらの呼びかけに一切答えないぬらりひょんを見て、黒ウサギは初めそう思っていた。しかしそうではないと黒ウサギは感じ取った。戦闘が消極的なのに対応が速すぎるのだ。操り手が傍にいるわけではないのに。支配を受けているのであれば、『○○をしろ』『○○の指示に従え』と言われ動くはずだ。しかしその様子はない。ゲームが再開してからペストは何一つ言葉を口にせず浮かんでいる。
なぜ、という気持ちもある。だが今は、魔王を倒すため余計な干渉は捨て去る。
一際大きな衝撃が響く。ぬらりひょんが止まり、黒ウサギとサンドラが合流する。
「今の揺れは…」
「YES! 十六夜さん達の決着がつきました! 」
二人の表情が明るくなり、反対にペストは沈痛な面持ちで遠くを見つめる。
「二人とも、倒されてしまったみたいね………」
24時間のタイムリミットに目がくらんで、時間稼ぎを指示したのはペストだ。ラッテンとヴェーザーと共に時間稼ぎなんて考えず攻めていれば、
「(破壊されていないステンドグラスは………残り58枚)」
ラッテンとヴェーザーに黙祷する。
このままステンドグラスが破壊されればペストは死神としての霊格を失い主催者権限も失うだろう。そうなれば再起は望めない。
「………」
ペストは時間稼ぎを止めて参加者を皆殺しにしようとして、
「待ってください」
止められた。
「自分が何とかします。タイムリミットまでの時間稼ぎ、自分が成し遂げます。だから、待ってください」
ペストの耳に飾られたイヤーカフ。そこから声がした。ぬらりひょん、奴良九朗の声。
黒ウサギの聴覚はその声を聞き逃さなかった。
「(奴良さん?! )」
ゲーム中断後、息絶える直前のぬらりひょんの分身体は、オリジナルと分身では一人称が違うということを明かしていた。自分のことを『自分』と呼ぶぬらりひょんが今まで仲間だった奴良九朗であると。
そんな思考を他所に状況は動く。
「………ッ! 」
突然ぬらりひょんの分身体が口を開け音もなく叫んだ。
「うっ……! 」
音もなく、ではない。超音波だ。人には聞こえない周波数の音を大音量で放った。
何のために?
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「うっ……?! 」
ステンドグラスを捜索していた参加者たち、その中の何人かが耳を押さえてうずくまる。
「何が…」
ジンは何事かと周囲を見渡す。
「うわぁッ! 」
真実の伝承のステンドグラスを確保した参加者が声をあげる。
振り返って見ると、
「なっ?! 」
ステンドグラスを中心に何かがうごめき脈動していた。そしてそれは膨れ上がり形を成した。
「な、なんだ…なんなんだよ?! 」
気づけば異常が発生したステンドグラスはそれだけではなかった。
他の真実の伝承も、偽りか真実か指示を仰ぐため持ってこられたステンドグラスも、その全てが赤い肉の塊に覆われていた。
混乱している間に肉塊はステンドグラスを覆い尽くし足を生やしていた。
「(まずい! )」
焦ったときには既に遅く、ステンドグラスを飲み込んだ肉塊は跳躍し町中に散らばっていってしまった。
「なんだ?! 何がどうなったんだ? 」
「せっかく見つけたのに…! 」
唐突に怒った異常事態に混乱する参加者たち。
ジンは混乱し、呆然としそうな思考を引き戻し考える。
「(何が…いやまずはそれよりも指示を、何を言えばいいんだ…? )」
「ジン…」
リリが心配そうに目を向けてくる。
レティシアはいない。他の捜索隊のところにシュトロムが現れたから助けに向かってもらって、まだ戻っていない。
「皆さん! 落ち着いてください! あれが何なのかは不明ですが、僕たちのすべきことは変わりません! ステンドグラスが逃げたとしても、また見つけて捕まえればいいだけのことです! 今は落ち着いて、捜索を続行してください! 」
声を張り上げ全体に指示を出すジンだが、そう簡単にはいかないだろう、と彼は感じていた。逃げる相手を捕まえるのは簡単ではない。一瞬で視界から消えたあの跳躍力、発見したとしても果たして捕まえられるのか…。
「(黒ウサギ…飛鳥さん…十六夜さん…サンドラ…)」
ここだけであれが発生していると楽観することはできなかった。レティシアならば、あれらを捕まえられているかもしれない、だが彼女一人では手が足りないだろうとも思っていた。魔王を討ち、真実の伝承を掲げる。そのためには主力たちとの合流が必要だった。
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「………っ。いったい何を…? 」
黒ウサギが耳を押さえながら問いかける。
「プランBだよ、黒ウサギ」
イヤーカフではない、前方にいる分身体のぬらりひょんがゲーム開始以来初めて言葉を発した。
「ステンドグラスを保護するための作戦でね。ステンドグラスに僕の血をくっつけておいた。僕の合図で一斉に起動し、ステンドグラスを抱えて逃げ回るように示し合わせてね」
「そんな! では今まで探させていたのは! 」
サンドラが叫び睨む。
「時間稼ぎ。今までもこれからも。ゲームが終わるまで、ステンドガラスには手を出させない」
「………奴良さん、あなたは今すべてのステンドグラスを確保しているのですか? 」
「ああ、その通りだ」
「では! 偽りの伝承を砕いてください! ハーメルンの笛吹きの魔導書は複数つづりのステンドグラス! それを砕いてしまえば魔王は弱体化するはずです! 奴良さんがどうして魔王に味方しているのかは黒ウサギにはわかりません! でも、ゲームに参加できているということは」
「それ以上は言うな、黒ウサギ」
強く言い切る。
「………たしかに僕はまだ“
「………何故だ! 」
サンドラが怒りといら立ちを込めて咆哮する。それは炎の紋章として表出し動かないままのぬらりひょんの一体を焼いた。
「なぜ、魔王の味方をする! あの魔王の撒いた黒死病によって、どれだけの同士が苦しんだか分かっているのか! 苦しんで苦しんで、それもこれも箱庭の秩序を乱す魔王の悪性ゆえにだ! なのに、何故‼ 」
「―――それは俺も聞きたいな、なんでそっちにいるんだ? 」
「―――私も聞きたいわね」
「十六夜さん、飛鳥さん! 」
黒ウサギが喜色をにじませて名を呼ぶ。
「集まって来たわね、どうするのかしら? 」
ペストが小さく問いかける。フラットのようでいて、その声には極々わずかに負の感情がうかがえる。方角や衝撃などから今来た二人がラッテンとヴェーザーを倒したのだと察しがついているのであろう。
「自分が何とか……時間を稼ぎます」
ぬらりひょんがペストに言う。これは他人のためではない。ペストに動かれて、ペストが打倒されてしまうことを恐れてだ。
今のぬらりひょんは、呪いによって知識を失っている。ノーネームでのなんでもない記憶であったり、原作知識であったり。彼はペストがどうやって倒されたのか覚えていないのだ。だから恐れている。
そしてそれはオリジナルから分裂した分身体も同じ。
「土壇場で味方を裏切って、敵に寝返るとか、面白いと思わない? 」
奴良九朗としての姿に変身した『僕』がうすら笑いを浮かべて軽口を叩く。
「ああ、最高だな。まぁでもそれは冗談としてならだ。本気でやったら笑えねぇよな? 」
十六夜が獰猛な笑みと共に言い、黒ウサギたちが怒気を目に込めて送る。
「冗談だよ。まぁ、ゲームが中断する前に放った分身体たちの様子は見たかな? 結論から言うとそういうことなんだ。
「僕は、『自分たち』は黒死病に蝕まれている。
「死の恩恵ってのはすごいよね………。僕は本当になすすべがなかった。
「分身体たちは死んだでしょ?
「僕が今生きているのはね? ペストが抑え込んでいるからなのさ。
「僕の体と魂は既に半ば死んでいて、ぎりぎりのところで生きながらえてるだけなんだ。
「さっきのステンドグラスについても、そういうことでね。ペストが弱体化しても打倒されても、蝕まれた僕の肉体と魂は崩壊する。
「僕の力じゃこの呪いを治すことはできない。克服することもね。
「普通の病気なら楽勝で治せるんだけどね~…。
「分身もだめだよ。元になる『自分』が侵されているから逃れられないんだ。
「僕はさ、死にたくないんだ。
「………いや、自分たちは生きたいんだ。死にたくないんじゃなくて、生きたいんだ。生きていたい、だから僕は魔王に協力する。味方する。僕が生きるために」
穏やかに語られる裏切りの
「………命惜しさに、自分の命惜しさに! コミュニティを裏切り! 同志たちを危険に曝し! 魔王に味方したというのかッ! 」
烈火のような怒り。
それに対し、目をつむった『僕』は刹那の沈黙の後、
「…悪いのか? 」
行き場のない感情を吐き出すように叫んだ。
「生きたいって思うのが、そんなに悪いのかよ! 生きるために! 魔王に味方するのが悪いことだっていうのかよ! 」
「生きて、生きて! もっともっときれいなものを見たい。綺麗で素敵で、感動するような何かと出会いたい! 」
「もっと遊びたい! もっと楽しみたい! 」
感情が伝播する。子どもの駄々のような言葉だが、ぬらりひょんの心の叫びが場に伝わる。
涙を流しながらぬらりひょんは訴える。
「世界を旅して、もっと!もっと! 何かしたかった! なんでもいい! なんでもいいんだ! 僕は、僕はまだ何をしたいかもわからないんだ! 」
「生きて! 笑って! 楽しんで! 生きている幸せを感じてみたいんだ! 」
サンドラの怒りは同情に変わりかけていた。黒ウサギも、飛鳥も目を伏せて…。
「足りない! 足りない! こんな人生じゃ満たされない! 満ち足りない! 」
「魔王に協力しても、その先にあるのは破滅だけです。そのことを奴良さんは分かっているのですか……」
苦し気に黒ウサギが問う。
「分かってる、分かっているさ…分かってるよ! こんなのは先送りだってことは! 」
黒ウサギたちは知らないが、ぬらりひょんはあと一日と経たず次の世界に転移させられる。世界を越えれば、ペストの抑えもなくなる。つまり、協力していようが、していなかろうがぬらりひょんは死ぬのだ。
本人もそれをわかっている。
でも、もしかしたら、もしかしたら助かるのかもしれない。
転移するとき、呪いがはがれてくれるかもしれない。
助かるかもしれない。
そんな希望に縋っているのだ。
ペストの見立てでは彼は彼の生まれ故、歪な魂であることから、呪いが固着していると。無理にはがそうとしたら死ぬと言われている。だから、それはありえないことだ。剥がれたら死ぬしかない。
逃げのびられて、世界を渡れたら………なんて、中身がない空っぽの希望、でも縋らずにはいられない。生きたいのだから。
24時間、ゲーム終了までステンドグラスとペストを守って逃げ続けなければならない。
ゲームをクリアされれば死んでしまうから。
ペストが倒されれば死んでしまうから。
自分の中の知識は呪いによって死なされている。どうやってペストが倒されるのかわからない。でも、だから、時間を稼いで、ペストを戦わせず、守る。
―――守って生きる。生きて、生きる。
「僕のために、ペストは倒させない。ステンドグラスは渡さない。ゲームセットまでおとなしくしていてもらう」
「いいな、奴良」
十六夜が真剣な表情でまっすぐに見つめる。
「お前の願いは間違ってない。でも、ゲームは俺たちが勝つ。敵に回ったなら死ぬ気で抗え、俺たちも、負けるわけにはいかないからな! 」
構える。その言葉で、3人の目にも闘志が戻る。
「………ああ、かっこいいなぁ。………羨ましい。僕もそうなりたかった。なんでこんなことになったんだ、あああ………なんで…僕は」
顔を押さえ、頭を掻き、涙をぬぐい正面を見つめる。ぬらりひょんの目に迷いも恐れもない。
「僕は僕のために勝つ。自分たちを、ぬらりひょんを倒せるものなら倒してみろよ! 」
瞬間、無数のぬらりひょんが出現する。
唾液、血、肉、戦闘によってまき散らされたぬらりひょんの欠片は全て号令を待っていた。分裂し、増殖し、形を成し、怪物となる。
百、千、万、
おびただしい数のぬらりひょんが地を覆い、空を覆う。
「な、なんて数なの…」
「まさか、こんなに…」
飛鳥とサンドラが呆然と呟く。
二人の思考は一致していた。
―――「いくらなんで多すぎだ」、と。
しかし黒ウサギと十六夜には微塵の恐れもない。
ぬらりひょんがそれを不思議に思うよりも先に、黒ウサギが白黒のギフトカードを取り出し微笑む。
まずい! と思い取り押さえに動く、
その動きよりもギフトカードが輝くのが早かった。
周囲の景色は一変し、オリジナルのぬらりひょんは混乱した。
さっきまで、天地を埋め尽くしていた自分たちがいない。
「な………」
イヤーカフの、無機物ゆえの感覚器は自分がいる場所を嫌味なほど正確に伝えてくる。
周囲には白い彫像の散乱する神殿。
頭上には逆さまになっている箱庭の世界。
「ここは…」
ペストが呻くように声を出す。
「“
魔王と私たちだけを、月の世界までご招待させていただきました」
ぬらりひょんは混乱する思考の中で、考える。
これが、そうだ。これが彼らにとっての勝利の道筋で、魔王にとっての敗北の道筋だと。
―――覚えていることは、この世界が物語で、ここで区切りとなること。
―――逆廻十六夜が主人公であるということ。
「(最後にとどめを刺すのは、主人公のはず…! なら! )」
ぬらりひょんは弾けるように飛び出し、十六夜に組み付き引き離す。
「十六夜…! 何もさせない! ペストはやらせない! 」
組み付かれ、遠ざけられるまま、十六夜は笑う。
「そうきたか。だが残念だったな、本命は俺じゃない」
なに?! と思い、後ろに眼球を作り見る。
サンドラがペストに炎を放ち、それに隠れて黒ウサギと飛鳥が何か話している。
「………! 」
まずい! と踵を返し戻ろうとするも、引っ張られ戻れない。
「逃がさねぇよ! 」
はじけ飛び、破片となって戻る。
十六夜には分身体を戦わせ足止めする。
そんなことに構っている余裕はない。
「(失敗した、失敗した! 間違えたああ間に合わない! )」
時間がない、離れすぎた。間に合わない。
ペストの前に黒ウサギが飛び出し、黄金の輝きを放つ。
太陽神の輝き、太陽の光がペストの死の風を消し去り、ぬらりひょんを焼く。
「ッ! がぁああああああああ!! 」
激痛。ペストの力が弱まったためか、痛みが襲う。
「今です飛鳥さん! 」
「撃ちなさい、ディーン! 」
命令を受け、鉄巨人が黄金の鎗を振りかぶる。
それは勝利の鎗、必勝の
鎗は千の雷をもって魔王を焼き、なお衰えることなく力を増し、とめどなく光を放ち続ける。
「やめて、」
ああ、嘆く声は億の轟雷にかき消された。
「そんな………私は、まだ………! 」
「さようなら、“
魔王は討伐された。
呪いを抑える者はいなくなった。
ぬらりひょんの死が確定した。
次回、エピローグ。