デート・ア・ライブ Assassino's Bizzare Adventure 作:キミと永久にただ堕ちていく
その日、五河 士道は朝から妹に最悪な起こされ方をしていた。
「なあ、琴里。俺の可愛い妹よ」
布団に包まりながら、寝ている士道の体の上でサンバをしている妹に向かって呼びかける。
「おー。何だ? 私の可愛いお兄ちゃんよ」
「いや降りろよ!! 重いよ!」
だが、その叫びもむなしく、彼の妹である五河 琴里はぴょーんと大きく飛び跳ねた、……可愛らしい縞々が丸見えになるくらいに。そして、こともあろうことか士道の腹に気を失いそうなドロップキックを叩き込んできたのだ。
「ぐふっ」
体の中の空気を全て吐き出させられるような感覚。
「あははは、ぐふだって! 陸戦用だー! あはははは!」
士道は俯き、そして無言で布団をかぶりなおした。
「あー! こらー! なんでまた寝るだァーッ!」
琴里は、何故か遠州弁で声を張り上げ、士道を揺すってくる。
「に、逃げろ……」
突然士道が、苦しそうにうめく。
「え?」
「……実は俺は『とりあえずあと10分寝ていないと妹をくすぐり地獄の刑に処してしまうウイルス』、略してT-ウイルスに感染しているんだッ……」
「な、なんだってェェエエエ!」
琴里が、宇宙人の隠されたメッセージを知った人のように驚く。
「ウイルスは空中に巻き散らかされ、呼吸か、皮膚接触で体内に侵入する。そして獰猛に増殖。約三十秒で相手を発病させる。しかも一旦発病すれば、そばにいる者は仲間だろうと敵だろうとお構いなし。あらゆる技法を駆使し、相手の腰が抜けるまでくすぐりつづけるのだ」
「で、でも、おにーちゃんはどーなるのだ!?」
「ウイルスは室内ライト程度の光に数十秒程度当たると完全に死滅する。だから、お前さえ助かってくれれば……」
「そんな……」
「獰猛ッ! それは、爆発するかのように襲い…そして消えるときは嵐のように立ち去る」
「そんな! おにーちゃん!」
琴里は布団に籠った士道を揺すりながら切なく叫ぶ。
すると、士道は布団の中により深く籠ったかと思うと……、
「ウバッシャアアアアアアア!!」
士道は布団を吹き飛ばし、両手をワキワキさせながら琴里に飛び掛かったッ!
「ギャ—————ッ!!」
琴里はすさまじい悲鳴を上げて逃げていった。
「……ったく」
息を吐き、士道は再び布団をかぶる。
「なんて時間に起こしやがる」
いかに今日が四月一〇日で登校日であったとしても、今は六時前だ。
そこで士道ははたと思い出す。
昨日から父と母が仕事の関係で出張に行ってしまっていること。
そのためしばらくの間士道が料理含む家事全般を任されていること。
そして、寝起きの悪い士道が自ら琴里に目覚ましを依頼していたこと。
「あーー……」
少し悪いことをしてしまったなぁ、と士道はばつが悪そうに頭を掻いた。
「やれやれ、しょーがない。起きるか」
うっすらとした朝日が差し込む窓の外を見て、あー今日は晴れてんなー、等と呑気なことを思いつつのたのたと部屋から出て、階段を下りリビングに入った。
そして、テーブルの陰でブルブルと震える可愛い妹を見て苦笑をこぼし、
「ウバッシャアアアアア」
と奇声を上げ、ばっ、と両肩をつかんだ。
「ギャー! ギャァァァァッ!」
「落ち着け落ち着け、いつものにーちゃんだ」
こんな小柄な体の何処にそれだけ叫ぶ力があるのかわからないほど大きく叫び暴れる琴里を、士道は優しくなだめる。
「あ? お、おにーちゃん?」
「そうそう」
「こ、怖くない?」
「怖くない怖くない。オレ、コトリトモダーチ」
片言で言ってやると、琴里はようやく力を抜いた。
「悪い悪い。すぐ朝飯準備するから」
琴里の手を取って立ち上がらせ、大きく動いたテーブルをもとの位置に戻した士道は肩をすくめてそう言い台所に足を向けた。
先に申し上げておきますが、暗殺チームは自ら精霊を攻略するわけではありません。
あくまで五河 士道が精霊を封印する手助けをするだけですのであしからず……。
……だって、もしそうだったら十香を攻略するのがアイツになっちゃうので……。