デート・ア・ライブ Assassino's Bizzare Adventure 作:キミと永久にただ堕ちていく
プロシュートと呼ばれていた男が視線を可憐な少女に向けたことで、男たちの注意が一斉に自分たちの方に向いたことを士道は感じ取った。そして同時に、それが警戒、または殺気に近いものを帯びているということが、体全身をねめつけられるような不快な感覚からも容易に理解できた。
しかし、彼自身も不思議なことにそんな状況下においても士道は彼らよりもこの目の前で剣を突き付ける少女のほうが気になっていた。
「———君、は」
呆然と、声を発していた。
「……名、か」
少女はゆっくりと視線を下ろし、アルプスのハープを弾くお姫様の如き清らかな声音を震わせた。
しかし。
「—————そんなものは、ない」
「—————っ」
士道は、この時初めて少女と目が合った。
彼女は泣いていた。
いや、涙を流してはいなかったが、士道には彼女が泣いているように見えた。
まるで全てを諦めてしまったかのような、物憂げな表情。
その表情は何かを言うために開きかけた士道の口を噤ませてしまった。
「————おい、女」
そんな沈黙を打ち破ったのはプロシュートのドスの利いた声だった。
少女は士道に剣を向けたまま体をプロシュートに向けた。
「……」
プロシュートは隣にいたパイナップル頭の、確かペッシとかいう名前の男に何かを耳打ちする。するとどうだろう、ペッシはそれにうなずき、先程までのおろおろした表情がさっぱりと消え、十数年の修羅場をくぐってきたかのような冷酷な顔で何処からともなく
「いまから二つの質問をする。二秒以内に答えないとテメーの心臓を
「……」
有無を言わせないプロシュートの言葉に慄いたのは士道の方だった。
「……あ、あの」
士道は意を決して声を発するが、
「ガキ、テメーは黙ってろ。それ以上喋ったらテメーも同じ目に遭うことになるぞ」
と一睨みされて一蹴されてしまう。
「————っ」
間違いない。ハッタリなんかではなくこの男の言うことに答えないと
「一つ、ここはどこだ。二つ、テメーはスタンド使いなのか」
少女の沈黙を肯定と受け取ったのか、プロシュートは質問を開始した。
「……」
少女は答えない。
士道は歯がゆい気持ちで見守るしかなかった。二つ目の質問に関しては一体何を言っているのかがわからない。
一つ目の質問には答えられるのだが、次に口を開けたら少女の前に自分が殺されてしまうだろう。
「
カウントが始まった。
(まずい……!)
士道の精神はもう限界だった。このままだと、わけもわからぬままこの少女はあの男たちに殺されてしまう。あるいは、彼女が抵抗して、戦いが始まってしまうかもしれない。
(頼む……何でもいいから答えてくれ)
「……」
「
士道は、目の前のプロシュートという男が急に愛嬌のある顔になり、「嘘だよォォぉおおん、ジョーダンだよジョーダン!!」といって後ろの男たちと笑うかもしれないという一分の期待を抱いて、
「じゃあ死ね。覚悟はできてるんだろう」
それは無慈悲に打ち砕かれた。
瞬間、ペッシの釣り竿が動いた。
「ビーチ・ボーイ!!」
士道はぞっとした
驚いたことに、釣り竿は物理法則を無視し、まっすぐ少女の方へと襲い掛かってきたのだ。
少女の左胸、心臓の所に向けて。
「あ、危ない……ッ!」
だがその時ッ!!
ドゴォォォオオオオオンン
少女と男たちの間に割り込むように何かが落ちてきて、突如爆発した。
「んな……ッ!!」
「……」
「うおッ……!」
士道と男たちは爆風で数メートル後ろに吹き飛んだ。
「ぐ……」
士道は地面に思いっきり激突し、苦悶の声が漏れる。
そして起き上がると、少女だけは吹き飛ばされずにそこに立っていた。
「な、なんだぁ~~今の爆発はよォ~~!!」
眼鏡をかけた男が叫ぶ。
「お、おい、見ろッ! 上だッ!」
坊主頭の男がそう言って頭上を指さした。
士道たちもつられて上を見上げ———
「んな……ッ!?」
目を見開いて息を詰まらせた。
空には奇妙な格好をした人間が数名飛んでいたのだ、見ただけでも凄まじいとわかる大きさの武器をその手に携えて。
そして、そこからミサイルらしきものをいくつも発射してきたのだ……ッ!!
「ぅ、わあぁぁぁぁぁぁぁぁッ———!?」
思わす叫び声をあげる。
しかし、数秒たっても爆発はやってこなかった。
「え……?」
空から飛んできたミサイルは、少女の数メートル上空で
「な、なぁあああぁあんだってええええええ!?」
おさげ髪の男が叫ぶ。
「……こんなものは無駄と、なぜ学習しない」
気だるげにつぶやく少女は剣を握っていないもう一方の手を挙げてグッと握った。
すると、
バグォォオオオオオオオン
「何ィ!? ミ、ミサイルが……まるで握りつぶされたかのように爆発したァ——————!!」
おさげ髪の男がミサイルだったものを指さしてそう言った。
見てみると爆発は先程と比べてとても小さく、内側に圧縮されているかのようだった。
頭上で飛んでいる人間たちはそれを見ても攻撃をやめようとはせず、次々とミサイルを撃ち込んでくる。
少女は小さく息を吐く。
泣き出してしまいそうな顔だ。
———先程士道に剣を向けた時と同じ顔。
「————っ」
その表情は、まるで脳天に三発も弾丸をぶち込まれたかのような衝撃を士道に与えた。
士道はこの少女が何者なのかも、あの男たちが何者なのかも、空から攻撃してくる者たちが何者なのかも知らない。
だが、この少女が圧倒的な強者だということはよく理解できた。先程のパイナップルの男の攻撃でさえ、かすり傷一つつくことなく完封してしまうだろう。
なのに、それなのに。
—————なんで、こんな顔を、するのだろう。
「……消えろ、消えろ。一切、合切……消えてしまえ……ッ!」
そう言い、不思議な輝きを放つ剣を空に向けた少女は、
疲れたように、悲しむように無造作にそれを振るった。
「……っ、うわッ!!」
すさまじいほどの衝撃波が士道を、男たちを、空の者たちを襲った。
太刀筋の延長線上に斬撃が飛ぶ。
上空の者たちがそれを慌てて回避し、離脱していく。
だがそれと同時に、別の方向から少女めがけて凄まじい威力の光線が放たれた。
「……ッ!!」
思わず目を覆う。
しかし、その光線もやはり少女の目の前にある『見えない壁』によってかき消されてしまった。
士道は自分の背後に何者かが舞い降りたのを感じた。
「な、なんなんだよォ~~~~さっきからよォ~~~」
泣きそうになりながら叫び、後ろを振り返って、
「————は?」
思考が停止した。
「なん、で———お前が、」
後ろにいたのは、見覚えのある人物だったのだ。
その人物は怪訝そうに士道に目を向けた。
機械を着ているとでも表現しようか。全身を見慣れない無骨なボディスーツで覆っている少女がいた。
それは————
「鳶一————折紙……?」
「五河 士道……?」
それは、クラスメイトの鳶一 折紙だったのだ。
↓から茶番です。ネタバレ、メタ等がありますので苦手な方はブラウザバック推奨。
(士道)
「いやプロシュートさん怖えええええええええ」
(ジョルノ)
「彼は筋金入りのギャングですからね、こういったことにも慣れているんでしょう。質問の仕方と言い、脅しのかけ方と言い、文句なしですね。ミスタとブチャラティが苦戦した理由もわかります」
(士道)
「いやだめだろ!? 初対面の女の子拷問する奴があるか!?」
(ジョルノ)
「まあまあ士道君。落ち着いてください」
(士道)
「これが落ち着いていられるか!! 十香は女の子なんだぞ!?」
(ジョルノ)
「士道君、考えてみてください」
(士道)
「な、なんだよ」
(ジョルノ)
「死んだと思ったのに目が覚めたら、そこが建物がめちゃくちゃになった場所も時代もまったく違った所にいて、目の前に大剣を構えた少女がいたとしたならば、貴方はどうしますか?」
(士道)
「え、えーと、その子にここはどこだか聞いてみる、けど」
(ジョルノ)
「丸腰でですか? その子は武器を持っているんですよ? もしかしたら攻撃されるかもしれない」
(士道)
「そ、その方が無害だってことが相手に伝わるかもしれないじゃないか」
(ジョルノ)
「邂逅一番に有無を言わさず体をぶった切ろうとする程相手を警戒している子に?」
(士道)
「う……、た、タマちゃん先生もなんか言ってくださいよ~ォ」
(タマちゃん)
「プロシュートさんって独身なのかな……いやでもあんなかっこいい人だしきっと恋人の一人や二人……で、でももしかしたら……いけるかも……」
(士道)
「タマちゃぁぁぁあああああん!」