レミリア様がネギま世界へ行かれたようです   作:メル

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魔法少女レミま!  1話 紫襲来

「お姉さま、いってきまーす!」

 

 7色に光るクリスタルのような翼をはためかせ、大きな傘を揺らしながら、薄い黄色の髪をもつ少女が空を飛んで行く。

 

「ああ、いってらっしゃい。」

 

 お姉さまと呼ばれた少女は椅子に腰かけ紅茶を飲んでいたが、自らが持っていたカップをテーブル上のソーサーに戻し、妹の姿を眩しそうに一瞥する。

 そうして再び紅茶のカップに手をのばし口元に持ってこようとするが、突然何かを思い出したかのように動作が止まった。

 はてさて昨日の夜は何を食べたかしら、いや今日の朝はなんだったかな? などという雰囲気では当然ない。

 カップを持つ手はプルプル震えて今にも紅茶を零しそうで、軽く目を瞑りすまし顔を維持しようにも、額には汗が光り、まるで信じられないような物を見た顔、若しくは信じたくない物をみたのだけれど確認するのは怖い。そんな顔だ。

 いやだけど立場的に確認しなくてはならない、放置するにはイヤな予感がする……そう思ったか、恐る恐る目を開ける。

 そして数秒その状態のまま固まっていたが、先ほど見た物は結構な速さで遠ざかっているだろうことを思い出す。

 仕方なく固まった姿勢のまま――少々前かがみでカップを口元へと持って来ようという状態である――まるで数十年放置されたブリキの人形のようなぎこちなさで、ギギギギ……と最近よく読む漫画なら描かれるであろう効果音を幻視しながら、首だけを左へ回していく。

 ああ美鈴、あの漫画の最新巻を買ってきてくれないかな、などと少々現実逃避しながら、しかしとうとう窓の外という名の現実が視界に入ってくる。

 外は未だ日の光が燦々と降り注ぎ、彼女は光を遮る傘と、傘の影の下でもなおキラキラと光り輝くだろうクリスタルの翼を探す。

 ……ほど無くしてそれは見つかる、愛しい愛しい我が妹の姿を。

 既にかなり遠くを飛んでいる姿を、よく見ようと目を凝らし……

 

「咲夜! 今すぐ連れ戻しなさい!」

 

 傘持つ少女は……キャミソール姿だった。

 

 

 

レミリア様がネギま世界に行かれたようです

第1話 紫襲来

 

「はぁ……先に貴族の嗜みを教えるべきか。」

 

 お姉さまと呼ばれた少女は自らの従者に指示をとばした後、そう独りごつ。

 背中にある大きなコウモリの翼をシナシナと垂らし、帽子を押さえながらため息を吐く彼女は、この紅魔館の主、レミリア・スカーレットだ。

 透き通るような水色の髪の毛に、こちらも透き通るような白い肌。しかしながら不健康そうな印象は一切感じず、少女らしい可愛らしさとどこか艶美な雰囲気を併せ持つ少女である。

 指示を飛ばした従者は既に消え、この部屋にいるのはレミリアただ独り。

 フラン――妹のこと――が癇癪を起こさないだろうか? と少し従者のことを気にするも、さすがに下着姿で外を歩かせるわけにはいかない。まぁどうにかするだろうと結論付ける。

 以前起こした異変以来、色々あって妹を地下深くに閉じ込めることが無くなったのは嬉しいことではあるのだけど、 紅魔館の外を自由にさせるにはまだまだ教育が必要ね――なんて事を思いながら、妹の教育計画に思いをはせる。

 

「でもあんまり厳しくして嫌われたくないし。美鈴に任せようかな?」

 

 パチェでもいいわね、厳しそう。怒られてるところで私が入れば好感度上がるかしら。

 なんて計画を呟きながら、先ほどテーブルの上に戻したカップに再度手を伸ばす。

 しかし、その手が再びカップをつかむ事は無かった。

 

「門番にあの子の教育がつとまるとは思わないわね。あら、O型?」

 

 カップが無い事を訝しみ顔をあげると、そこには『萃』と書かれた服をきた胡散臭い金髪の女性がいた。

 

「八雲紫、あんたどこから入って……はぁ、愚問だったね。」

「愚問ですわ。」

「自分でいわないでよ。」

 

 そういうとレミリアは再びため息をつく。うろんげな奴がきた、はやく帰れ。そんな感情を込めて招かざる客人を睨むが、紫は帰る素振りは見せない。

 気付いていないのか、そう一瞬思うが、即座にその考えを自ら否定する。気付いているが無視する……そういう奴なのだということを思い出す。

 

「あなたの好みはB型じゃなかったかしら。」

「飽きるでしょう? 違うのを飲みたい気分にもなる。」

「あら、大人になったのね。」

「弾幕ごっこなら受けて立つよ?」

 

 レミリアは椅子から立ち上がり、コウモリの翼をピンと広げ、全身から仄かに赤い霧を漂わせる。

 その姿は幼いながらも、まるで一国の王のような威厳があふれ出ていた。

 いや、まるでと言うのは語弊がある。彼女は真実夜の王、夜の支配者、500年以上を生きる誇り高き貴族……

 吸血鬼、『永遠に紅い幼き月』レミリア・スカーレットその人なのだから。

 ちなみにO型やB型とは血液型のことである。血液入りの特製紅茶だ。

 

「あら怖い。怒っちゃイヤよ、カリウムが足りないのね」

「ブランデーなら出ないわよ」

 

 言い合いながら傘を広げ、怪しく笑みを浮かべる紫。

 怖い怖いと言いつつも全く怖がる素振りを見せないその様子に、レミリアからのプレッシャーがますます強くなっていく。

 吸血鬼たる自分が日中に弾幕ごっこをしても実力を十全に出せやしないが、所詮ごっこ遊びである。やり方次第では十分に勝てるだろう。

 そう思いながらレミリアがスペルカード枚数を宣言しようとした時……

 

「まぁ今日は弾幕ごっこをしにきたわけじゃないの。」

 

 突然紫が構えを解いてしまう。構えていない相手に攻撃する趣味は無いレミリアは困惑気だ。

 

「じゃあ何をしにきたの?」

 

 世間話するような話題は最近ない、というかこいつと世間話なんて持っての他だ。

 しかし敢て上げるとするなら霊夢のことか、月のこと、外の人間のことだろうか……そう思っているとき、紫から予想外の言葉が発せられた。

 

「あなた、自分の妹との距離を測りかねているでしょう?」

「なっ……んですって?」

 

 フランとの距離を測りかねている……そんなことは言われずとも百も承知だろう。

 事実、いくら事情があろうともレミリアはフランを500年近く監禁してきたことには変わり無い。

 監禁する必要が無くなったから、即座に仲良く、普通の姉妹のように暮らしましょうと行くわけが無い。

 しかし、他人に、よりによってこいつに指摘されるのは我慢ならない……そんな思いがレミリアの中でたまっていく。

 

「ふん、何を言うのかと思えば。あの子はさっきだって私のことをお姉さまと呼んでくれたのよ?」

 

 そう、あの子だって馬鹿じゃない。監禁の意味にも納得している節があるし、なにより毎日お姉さまといって懐いてくれているんだから!

 そんな思いを糧に毎日フランに謝りたい気持ちを抑えているレミリアにとって、紫が発した言葉は正しく爆弾だった。

 

「ふふ……妬けるわねぇ。じゃああの子があなたの事を『アイツ』呼ばわりして――」

「そんなわけないもん!!」

 

 れみりゃ爆誕の瞬間である。

 

「フラ……フランは私の事をお姉さまって呼んで、慕ってくれてるんだから!」

 

 目の前の存在は意味の無い嘘は言わない、いくら胡散臭くて信じられなくても。

 そのことを良く知っているレミリアだが、さすがに唯一の肉親である妹からアイツ呼ばわりされてるかも……なんてことを信じることは出来なかった。

 

「あら。じゃあ、確かめましょうか。」

 

 そういって紫は何も無い空間にスキマをあける。その向こうには咲夜に着替えさせられているフランの姿があった。

 

「妹様、キャミソール姿で外に出てはいけません。お嬢様が悲しみますよ?」

「えー、どおして? 」

「お嬢様がいうには、貴族たるものいついかなる時でも優雅でなければいけません。キャミソールは下着です。」

「え、お姉さまっていつも優雅?」

「優雅です。」

「お風呂で間違ってシャワー出しちゃってびっくりして転んで頭ぶつけてても?」

「……優雅です」

「美鈴といっしょに門で漫画読んでてマリサが通った事に気が付かなくても?」

「…………優雅です」

「パチュリーの本棚に漫画置こうとして怒られてロイヤルフレアで焼かれても?」

「………………お嬢様……」

「咲夜も『アイツ』のいうこと全部聞かなくてもいいのに。」

 

「フラーーーーーーーーーーーーン!!!」

 

 なんかもう大ダメージである。

 

「フランにアイツって呼ばれた……もう、私生きていけない……」

「姉の心妹知らずね。まず貴女から近づくことが必要じゃないかしら?」

「フラン……わたしのふらん……」

 

 聞いて無いわね……と呟き、呆れたような、どこか優しい笑みを浮かべながら紫はため息を吐く。

 

「あなたには今まで余裕が無かった。余裕が出来た今こそ、少し対人関係を学んで来てはいかがかしら?」

 

 そういい、紫はレミリアの前にスキマを広げる。

 

「ふら……え、な、なに?」

「心配しなくても、1週間くらいの小旅行よ。来週の紅魔館にあなたはいるわ。遊んでらっしゃいな。」

「ちょ、な、な、なんなのよーーー!?」

 

 スキマを閉じたとき、そこにはレミリアの姿は無かった。

 

「更なる強さ、素直さ、仲間……貴女は何を得て帰ってくるかしら?」

 

 そんな呟きを残し、そしてだれもいなくなった。




以前別の名前で「小説家になろう」様の方へ掲載させて頂いてました。
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