レミリア様がネギま世界へ行かれたようです   作:メル

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魔法少女レミま!  4話 ワンサイドゲーム

「必殺『ハートブレイク』」

 

 レミリアが左手でカードを持ち、右手を頭上に掲げると、その手の中に一瞬にして巨大な槍が出現する。

 小さな体には不釣合いな、全長3mにも及ぼうかというその槍は、まるで血のように紅く禍々しい魔力を放っている。

 そう、それはレミリアの魔力を圧縮して作られた槍。膨大な魔力を誇るレミリアだからこそ出来る、ある意味力技だった。

 横に居たアルビレオや詠春といった面々は、その無茶苦茶さ、篭められた魔力の膨大さを感じ冷や汗を垂らす。

 

「よく見てなさい。本当の強さというのを教えて上げる。」

 

 そう言うなり、レミリアは槍を振りかぶり、投げた。

 投げられた槍は射線上にいる悪魔達を食いちぎりながら、視認するのがやっとの速さで鬼神兵に到達する。

 悪魔相手に腕を振り上げていた鬼神兵は全く反応することが出来ず、自分の胸元に迫る紅い槍をただみやるのみ。

 紅い槍は何の抵抗も感じさせないまま、鬼神兵の胸へと吸い込まれて行く。

 そして、鬼神兵一体じゃ物足りない……まるで槍自身がそう訴えているかのように、鬼神兵を貫いてなお減速せず。

 レミリアが投てきした槍は、後ろの戦艦をも突き破り、空の彼方へと消えて行った。

 射線上の存在は悉く食い破り、しかし余計な余波は一切生じさせず。

 レミリアのもつ禍々しい魔力に反し、まるで神話の再現のような、無慈悲で、美しく、優雅な攻撃に、敵味方問わず戦場に一瞬の静寂が訪れる。

 皆が見つめる視線の先には、黒いコウモリの翼をはためかせ、優雅に微笑む夜の王。

 いま、この瞬間こそが。後に魔法世界でエヴァンジェリンと並び畏怖される吸血鬼、『永遠に紅い幼き月』レミリア・スカーレット降臨の瞬間だった。

 

「久々に――楽しい夜になりそうね」

 

 

 

レミリア様がネギま世界に行かれたようです

第4話 ワンサイドゲーム

 

「来れ雷精風の精!!  雷を纏いて吹きすさべ 南洋の嵐  雷の暴風!!!」

 

 敵が密集している場所へ、ナギの手から雷を纏った竜巻が放たれる。それは縦横無尽に荒れ狂い、森、海、悪魔、鬼神兵、戦艦と、前方にいる者を全てまとめて吹き飛ばす。

 

「ハッ!」

 

 敵が散在している地点へアルビレオが魔法球を発生させると、複数の鬼神兵や戦艦が制御を失い魔法球の下へと引き寄せられ。

 

「雷光剣!」

 

 そうしてアルビレオが集めた鬼神兵に対し、詠春が剣に溜めた電気を爆発させ吹き飛ばす。

 3人はそれぞれ役割を分担し、順調に敵の数を減らして行った。

 

「アル、何体くらい倒した?」

「そうですね……合計ではこちらが勝っているかと。」

「合計では、か。やはりとんでもないな、あの吸血鬼は。」

 

 紅き翼の3人が言うように、レミリアは現在一人で紅き翼三人の7割に迫る戦果を叩きだしている。

 それも最初のように槍を投げるのではなく、接近戦で一体ずつ倒して、だ。

 高速で近づき爪を振るえば鬼神兵の四肢が飛び。

 コウモリを射出すれば頭を貫き。

 体当たりすれば防御の上から胸を貫く。

 戦艦を炎で焼き上げ落としたかと思えば、

 鎖を出現させ、戦艦に巻きつけそのまま振り回し、他の戦艦や鬼神兵に叩きつける。

 誰もレミリアを止めること叶わず、独壇場といった様子だ。

 レミリアの顔にあるのは愉悦の笑み。多くの敵を落とすというゲームより、己の力を魅せ付けることに楽しみを見出した、そんなところか。

 

「ちっ、やっぱ気にくわねぇ!」

 

 そう、最初の槍を一瞬で生み出した様子を見るに、あれはレミリアにとって単なる技の一つに過ぎず。

 あの槍を連発するか、さらに持っているであろう大技を繰り出せば、このゲームはレミリアの圧勝で終わるはずである。

 しかしそれをせず、まるで遊びまわるかのように楽しげに腕を振るうその姿は、紅き翼のことを歯牙にもかけていないといった様子だ。

 最強を自負するナギにとって、強さを軽く見られるのは非常に不愉快なことである。

 

「ですがあのまま遊んでくれるなら私達の勝ちです。このまま残りの敵を倒しましょう。」

 

 いくらゲームとはいえこれは悪魔の契約。それは絶対で、破る事は出来ない。つまりこのゲームに勝てば彼女は紅き翼に入らざるを得ないのだ。

 絶対に裏切ることのない巨大な戦力、それは世界を変えるためには是非とも欲しいものであった。

 アルビレオにとって、レミリアが遊び呆けてくれるならそれは重畳、といったところだ。

 

「しかし、吸血鬼、か……。」

 

 日本では人に仇なす妖怪を退治してまわっていた詠春は複雑な気持ちである。

 妖怪や人間を善や悪といった括りで別けることなど出来ないのは既にわかっているが、彼女は明らかに悪側の存在に見える。

 楽しげに人を殺し、人を人とも思わない――まぁ彼女は吸血鬼だが――その様子は、まさしくステレオタイプの悪ではないか。

 ここで同じ事をしている自分が言えた義理ではないかもしれないが、少なくとも信念をもって人を殺している。

 では彼女の信念とはなにか? それによっては後で彼女を討伐する必要もあるかと、そう考える。

 

「吸血鬼……」

 

 ――そして。塔から見守るアスナの目には、レミリアの紅がどこまでも鮮烈に残っていた。

 

 

 

「さぁ、そろそろ終わりか?」

 

 散々暴れまわっていたレミリアだが、ふと帝国軍の後方をみれば鬼神兵と戦艦が彼方へと飛び立とうとしているところであった。

 殿役だろうか、レミリアの回りには数体の鬼神兵、頭上には戦艦が1隻浮かんでいる。

 鬼神兵達は腕を掲げ、今にも振り下ろさんとしている。

 戦艦は全砲門を艦下のレミリアにむけ、砲口には今にも弾けんばかりの光が煌々と輝いている。

 もはや同士打ちも辞さず、なりふり構わずレミリアを止めに来ているのは一目瞭然だった。

 レミリアはそんな回りの様子を一瞥し、フッっと笑い、一言。

 

「安心しな、逃げる敵は追わないよ。」

 

 そう言うと、懐から本日最後のスペルカードを取り出した。

 

「紅符『不夜城レッド』」

 

 途端、レミリアの全身から暴力的な量の魔力が噴出する。

 両手から伸びた魔力は周囲の鬼神兵を飲み込み、上下に伸びた魔力は戦艦を一瞬で塵に還す。

 そのままレミリアがくるりと回り、元の位置で佇んだ時。周囲に居た殿役の鬼神兵、戦艦は既に無く、ただ塵だけがレミリアの魔力光を受け紅くキラキラと輝いている。

 その様子はまるで、紅い十字架と降り注ぐ花吹雪のようで。さながら帝国軍に捧げる墓標のようでもあった。

 

「さて……ゲームは私達の勝ち、ということで宜しいですね?」

 

 結局ゲームの行方は、序盤からずっと3人で手分けして戦った紅き翼の勝利となった。

 しかし個人としての撃墜数ではレミリアが圧倒的な強さを見せ、ナギは大いに不機嫌だ。

 そしてレミリアも紅き翼に入るにあたりもう一悶着あるだろう、と誰もが思っていたが、レミリアは意外にもあっさりと負けを認めた。

 

「ええ、仕方ないわね。貴方達の仲間になってあげる。生姜色の翼だったかしら?」

「紅き翼だ!」

 

 そうそう、紅き翼ね。私にぴったりの名前じゃない。なんて言いながら、レミリアはアスナの居る塔へと舞い戻る。

 明日の朝には私の名前が世界中に知れ渡っているかな~? と、実に楽しげな様子だ。

 実際逃げる敵を好きにさせたのは、趣味じゃないということもあるが、名前を広げる伝書鳩程度には価値を見出していたからでもある。

 そんな明日への期待に目を輝かせるレミリアに対し、詠春が待ったをかけた。

 

「レミリア、ちょっといいですか?」

「何よ? 淫魔を呼んで欲しいの?」

「ち、ちがいます!」

 

 先ほどの光景を思い出したのか、詠春は顔を真っ赤にしつつ反論する。

 

「これだけ答えていただきたい。貴方にとって人を殺す、とはどういう事ですか?」

 

 その問いを聞いたレミリアは思わず眉をひそめた。

 人を殺す……何故殺すのかという事なら、敵だから、邪魔だから、など何かと理由はつくが。

 殺すとはどういうことか? など考えたこともない。

 ただ、答えるとするなら……

 

「人も虫も、神も吸血鬼も。違いなんて案外無いものよ。全ては所詮個の集まりなんだから。」

 

 まぁ、だからこそ私は最強なんだけどね。なんて締めくくり、今度こそ塔へ向かって飛んで行った。

 

「全ては所詮個の集まり、か……。種族として確固たる強さを持つ吸血鬼だからこそ言える言葉だが。」

「ですね。けどまぁ、真理の一側面でもあります。貴方の望む答えでしたか?」

「これといった何かを望んでいたわけじゃないが。まぁ意味無く何かを殺す、という訳ではなさそうだ。」

「ふふ、それは良かった。」

「そう気張るなよ詠春。いざとなったら俺がなんとかしてやるぜ?」

「なんとか……出来るのか?」

「んな!? ぜってー俺のほうが強え! 何なら今すぐはっきりさせてやるぜ!」

 

 ナギはレミリアを追いかけて塔へと飛んで行く。

 アルビレオと詠春は塔へと向かうレミリアの後姿をしばし見つめる。

 新しい仲間に対しての不安は多々あるが、まぁ暫くは様子を見るだけに留めても良さそうだ。

 はたして彼女の加入が切欠になったかは不明だが、この先の紅き翼にはまるで坂道を転がり落ちるような波乱の運命が待ち構えている。

 だがそれも、二人には知る由も無いことであった。

 

「良い方向に転がってくれると良いのですが。」

 

 アルビレオの呟きは、風となって消えて行った。

 

 

 

「紅き翼……指名手配、迷宮、日本?」

 

 レミリアは、塔に向かいつつ3人の中に垣間見た運命を思い出していた。

 どうやら指名手配されて……迷宮に隠れつつ日本に行くんだろうか?

 でもまぁ、能力を使って運命を大きく変える気もないし、いつものように成り行きに任せればよさそうではある。

 というか、そもそも、だ。

 

「紫のやつ、来週戻すって言ってたくせに、かなり先の運命まで見えるのはどういうことなのよ?」

 

 少なくとも1年くらいは帰れる気配がない。

 再度紫への怒りを募らせながら、レミリアは塔へと降り立った。

 と、そこでレミリアをじっと見つめる視線に気がつく。

 

「レミリア……すごい」

「あら、人間にしては見る目があるじゃない。」

 

 先ほどの怒りなんて何処吹く風。従者にしてあげても良いわよ? なんて言いながらアスナに近づくレミリア。

 

「やっぱり貴族たるもの従者の一人や二人、従えて無いとね。私といっしょに来る?」

「私は……王族。でも……従者、いない」

「あら、王族だったの?」

 

 じゃあ従者の経験なんて無いねー。などと言いつつ、レミリアはアスナの頭に手を載せる。

 

「ま、従者がやりたくなったら言いなさい。私が教えて上げるから。まずは紅茶の入れ方からね。」

「紅茶?」

「あー、飲み物よ、飲み物。」

「おいしい?」

「変な材料使わなければね。」

「従者になったら飲めるの?」

「最高級の紅茶を飲めるわ。」

「じゃあ、やる」

「ふふ、今からでも良いのよ。」

 

「おいレミリア! 俺と勝負――……」

 

 力の優劣を決めようと勇んで飛んできたナギがみたのは、アスナと長閑に談笑するレミリアの姿だった。

 

「ちっ……気がそがれるぜ。」

「まぁ、あの様子だと心配も杞憂だったようですがね。」

「まったく、外は惨状だというのに……。」

 

 レミリアの魔法世界での物語はまだ今日始まったばかり。

 この先どんな運命が待ち構えているのか、それはまだレミリアにさえも解らない。

 ただ一つ。はっきりしている事と言えば――

 

「レミリアは強いね」

「当たり前よ。私は最強の吸血鬼なんだから。」

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