レミリア様がネギま世界へ行かれたようです   作:メル

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魔法少女レミま!  6話 吸血鬼

「連合軍に吸血鬼の真祖現る! 失われし秘術を用い少女を真祖化か!?」

 

 先日、我々帝国軍のオスティア回復作戦(以下、回復作戦)が失敗に終わったことは既に国民の皆さんにお伝えした通りだが、昨夜、帝国政府は新たな情報を発表した。

 それは回復作戦において連合軍側の戦線に加わっていた少女が、なんと吸血鬼の真祖だということだ。

 連合のナギ・スプリングフィールド、アルビレオ・イマ、青山詠春らと共に戦っていた少女の存在はその日のうちにお知らせしたが、その正体については政府はいままで調査中としていた。

 だがこの真祖という発表が事実だとするなら、様々な事が見えてくる。

 国民の皆さんは真祖と言われれば何を思い浮かべるだろうか? そう、帝国、連合、その他の国を問わず世界中で指名手配となっている『闇の福音』だろう。

 しかし今回確認された真祖は『闇の福音』ではない。新たな真祖が唐突に現れたのだ。

 この戦時中、今になり唐突に。これの意味を考えて見て欲しい。

 吸血鬼の真祖とは、今は失われたとされる秘術により人間から変化して成るものだ。つまり『術』と『術者』が必要になる。

 そして真祖が現れたのが連合なら、『闇の福音』を最初に指名手配したのも連合だ。

 この二つが意味する事とは何か。それは「連合が真祖化の秘術を保持している」ことに他ならない。

 そうなるとある一つの事柄が推測できる。『闇の福音』は、いや、エヴァンジェリン・A・K・マクダウェルは連合の真祖化の秘術による被害者では無いか? ということだ。

 彼女は成功例だった。だが、成功例であるが故に連合から逃げのびる事に成功した。旧世界出身である彼女にとっては連合も帝国も関係なく、全ての魔法使いを憎んだ。

 彼女に手をつけられなくなった連合は懸賞金をかけ、彼女の抹殺を目指す。国を問わず多くの被害者を出しながらも。

 そして今、この戦争で、我々帝国の進撃に耐え切れなくなった連合は、再度真祖化の秘術に手を伸ばした。今度は洗脳もしっかりと行い、都合の良い最強の兵士が誕生するように、と。

 こう考えると全ての辻褄が合って来る。まるでそれを裏付けるかのように、今朝帝国政府はエヴァンジェリン・A・K・マクダウェルに対する指名手配を解除する宣告を出した。

 更に、回復作戦に同行した従軍記者によると、先日の真祖はカメラに写らなかったという。これも『闇の福音』の時の失敗を考慮し、少しでも情報を漏らしたくないという連合の思いが透けて見えるようだ。

 つまりだ! 今まで被害者面し、政治とは別に『闇の福音』を打倒しようと訴えていた連合が、その実真祖の生みの親だったのだ!

 これは我が帝国だけではなく、何も知らない連合国民、延いては全魔法世界住人に対する深刻な裏切り行為である!

 栄えある帝国国民達よ! このような行為が許せるか!? 否、断じて否だ!!

 今こそ国民一丸となり、連合に正義の鉄槌を下す時である!!!

 

 最後に。今回連合の犠牲となった少女の名前を記す。願わくば、これが彼女の本当の名前であるように。彼女から奪われた物は余りにも多すぎるのだから。

 新たな吸血鬼の真祖『レミリア・スカーレット』

 

(以下レミリア・スカーレットの似顔絵である。コウモリの羽は我々帝国住民に対するあてつけだろうか?)

 

―― ヘラス帝国帝都新聞 第1面

 

 

 

レミリア様がネギま世界に行かれたようです

第6話 吸血鬼

 

「紅き翼に吸血鬼が参加」

 

 先日、紅き翼がヘラス帝国のオスティア侵攻作戦を阻み、これを撤退させた。(詳しくは第1面へ)

 この際紅き翼は、現地で隠れ住んでいた吸血鬼(真祖ではない)レミリア・スカーレットに協力を仰いだ。

 帝国の無法ぶりを良く知っていた彼女は、これを快諾。帝国軍を撃退させる時には大きな戦果を上げた。

 なお彼女は今後も紅き翼に協力姿勢を示し、我々連合の大きな助けとなりそうだ。

 現在では、一般に真祖ではない吸血鬼は、吸血鬼から噛まれるか、噛まれた存在の子供である場合が殆どとされている。

 レミリアがどちらなのかは定かではないが、何れにしても彼女のような被害者を増やさないためにも『闇の福音』の早期討伐が望まれる。

 場合によっては懸賞金の上乗せもありえるだろう。

 さて、次は今日の - フィリウスの家庭で出来る菜園魔法コーナー♪ - で紹介した魔法についてだが……(後略

 

―― メセンブリーナ新聞 第6面より一部抜粋

 

 

 

「ふむ。まぁ予想通りといえば予想通りの流れか?」

 

 ここは紅き翼の拠点の一つ。あの後急いで帰ってきた面々は、その日から2日は思い思いに体を休め、今はナギとアルビレオが街へ買出しへ行っているところだ。

 メインは食材、水、酒、レミリアの傘、レミリアの服、レミリアの紅茶、レミリアのティーカップ、レミリアの漫画である。

 そして傘が無いレミリアと飛攻魔法を持たない詠春は留守番だ。

 詠春は床に座りながら、今朝送られてきた連合と帝国の新聞を見比べて言う。帝国はレミリアを連合の被害者として扱い、エヴァンジェリンに対する国民の感情も含めて連合へ向けようという様子だ。

 反面、連合はさらっと触れるのみ。通常なら第1面で大々的に、新たな英雄として紹介するところだが、そこはやはり吸血鬼ということが障害となるのだろう。

 それだけ両国エヴァンジェリンに対する畏怖が強い、といえるのだが……

 

「ちょっと。なんで哀れまれたり、妙に扱いが小さかったりするのよ?」

 

 その結果、ここに機嫌を損ねた吸血鬼が一人誕生した。しかもエヴァンジェリン並に強いのだから性質が悪い。

 レミリアは詠春の反対から新聞を覗きこみ、苦々しげに睨みつける。

 予定ならもっと大々的に名前が知れ渡り、畏怖される筈だったのだが。

 いや、帝国の新聞は大々的と言えるが、哀れまれるのはレミリアの望みとは違うのである。

 連合に至っては菜園魔法と同列ってどういうことよ。説明を求める! などと騒いでいる。

 

「仕方ない。ここでは真祖『エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル』の名前が大きすぎるからな。」

 

 まるで仇でも見るかの様相で新聞を見るレミリアに対し、詠春は折角の新聞を破られては堪らないと思ったか、新聞を畳んでテーブルの上に置く。

 睨む対象をポンッと投げられた新聞から詠春に替えたレミリアだが、それもすぐに視線を外し、軽くジャンプしてソファーへと沈み込む。

 視線は窓の外へ。そこはまだまだ明るく、ナギ達が帰ってくるのはもう少し先のようだ。

 レミリアは憎憎しげに窓の外を眺めながら、暇つぶしに帝国の新聞で気になったことを詠春に問う。

 

「だいたいエヴァンジェリンって誰なのよ? なんで秘術とやらで真祖になれるのさ。」

 

 そう、レミリアにとって真祖とは吸血鬼の血族であり、ただの吸血鬼は真祖の眷属のはずなのだが。

 このエヴァンジェリンとかいう奴は、どうやら秘術で真祖になったようだ。いや意味がわからない。

 

「吸血鬼の能力を持ち、弱点を克服した吸血鬼……らしいよ。私も余りしらないが。レミリアは知らないのかい?」

「はぁ? なによそれ。ただ人間が吸血鬼っぽくなって喜んでるってこと?」

 

 そんな出来損ないのせいで私の名声が広がらないのか、と残念そうにソファーへ寝転がるレミリアだった。

 

「結構有名なんだけどね、あっちでも。レミリアはヨーロッパのどこから来たんだ?」

 

 レミリアの生足を極力見ないように視線を背けながら、詠春が問い返す。別にヨーロッパから直接きた訳じゃないが、というか『ヨーロッパ』が同じヨーロッパを指すかも怪しいが。

 別に幻想郷の事を言っても良いが、言う必要も無い。よって……

 

「ルーマニアよ。最近は人を襲うより紅茶飲んでるほうが楽しくってねぇ……」

 

 幻想郷に行く前の地名を答えておいた。

 ちょっと館でノンビリし過ぎたかしらねぇ、などと呟きつつ。

 

「のんびり紅茶が飲めるとは羨ましいの。名前など広まっても面倒なだけとは思わぬか?」

 

 と、そこへ新たな人物が来訪する。

 レミリアは一瞬羽を反応させたが、詠春が警戒していないのを見てゆっくりと起き上がり振り返る。

 こういうのは第一印象が重要だろう。足を組み、手を組み、ピンと翼を広げ、少しだけ霧を出す。そこには既に夜の王たる威厳が取り戻されていて。

 そして視界に入ってきた人物を見て、一言。

 

「……え? 子供?」

「自分も見た目なら子供じゃろうに……」

 

 そこにいたのは見た目10才くらいの白髪の少年だった。レミリアはすっかり霧を止め思わず口に手を当て普通に反応してしまう。

 いけない、何か失敗した気がするけどまだ取り戻せる! ゴホンと咳払いを一つ、気を取り直して少年を見据える。

 

「餓鬼が何の用だ?」

「ああ、レミリア、紹介する。コチラはナギの師匠でもある――」

「ゼクトじゃ。よろしくの。」

「……え? 師匠?」

「ああ、わしはアンチョコなぞ使わんぞ? まったくあやつめ、未だに覚える気がないのかアンチョコに頼りおって。」

 

 はぁ、つまるところ身内なのね。なんて呟きソファーに身を預けるレミリア。もう興味は失せたようだ。

 みるみるうちに翼は萎れ、ソファーへと寝転がり、たれレミリアが復活する。

 

「ふむ。あやつが言っていた吸血鬼か。」

「ええ、頼りになりますよ? 夜の戦闘に限るかもしれませんが。」

 

 明るい外を見ながらウトウトしはじめたレミリアを見て、詠春がレミリアを抱きかかえ寝室へと連れて行く。

 ゼクトはそんな様子を遠巻きに見つめていた。

 

「本当に……旧世界の吸血鬼、かのぅ?」

 

 ゼクトの呟きは、誰の耳にも入る事なく消えて行った。

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